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第305話「羊みたい」*奏斗

 な。なに。照れるって。  めちゃくちゃ色んなことしてくるくせに。  あと、オレの髪は、平気で洗ってたくせに、何でオレがお前の髪洗うのは「照れる」なわけ。  しかも、本気で照れてるみたいな顔、されると……。 「……っ」  ムッとしたまま見上げていたのに、なんだか急に恥ずかしくなって、顔に熱が集まってきた。思わず顔を逸らしたのに、何やら察知したらしい四ノ宮に顎を捕らえられて、上向かされた。 「……何その顔」  困ったみたいな、苦笑いをされる。 「何で奏斗まで赤くなんの? もうほんと、そういう反応さぁ……」 「――――……」 「ズルいよね……」  クスクス笑われて、そのまま。  屈んで近づいてきた四ノ宮に、キスされる。唇が触れてすぐ離れて、ふ、と笑われる。 「なんで真っ赤……? かわいーよね、ほんと……」  知るか、もう!   ……何で真っ赤なの、オレ。 「……っ……ん」  またキスされて、舌が絡んできて、優しく噛まれる。舌を吸われて、ぞくっとして声が漏れた。  ……お前が、照れる、とか。似合わないこと言うから。  一緒にお風呂入って、向かい合って髪の毛を洗い合うなんて、普通はしないことだってこと。四ノ宮に照れるって言われたら急に思い知ってしまって。  普通に、オレも洗おうかみたいなこと言った自分が、めちゃくちゃ恥ずかしくなった、んだ。オレは。  お前は何なの、何で照れんだよ。もっと恥ずかしいこと、めちゃくちゃ色々してんじゃんか。  心の中でいっぱい言っているのだけれど、キスされてて、動けないし、話せない。 「奏斗……」  しばらくして、舌をゆっくりと離されて、ふ、と笑われて名を呼ばれる。 「……体は、自分で洗う? オレ洗ったら、やばいことしまくりそうなんだけど、いい?」  なんだか熱っぽい声で囁かれて、ますます恥ずかしくなって、ボディスポンジをガシッと掴んだ。 「じっ……自分で洗う!」 「……はいはい。そーしてください」  少し間を置いてから、クスクス笑う四ノ宮は、シャンプーを手に取って、自分の髪を洗い始めた。 「ここで始めたら長くなってのぼせそうだから、やめとく」 「…………っっ!」  もう、何なんだ、四ノ宮の、馬鹿宮……っ……!  オレはむちゃくちゃ泡立てて、モコモコになりながら、体を洗った。   見えないように。と思ったんだけど。  そしたら、手早く頭を洗い終えて目を開けた四ノ宮に、「ヒツジみたいだね」とクスクス笑われることになって、余計恥ずかしい気分に陥った。

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