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第315話「変?」*大翔
「ユキくん、ネイビーでストライプにして、ベストとかも可愛いんじゃないかな」
姉貴が言うと、そうですか?と奏斗が笑ってる。……めちゃくちゃ笑ってるのは、潤が奏斗のほっぺに触れてるからってのもあると思うけど。
「オレ、スーツ、全然分からないので……四ノ宮、どう?」
姉貴に言った後、オレを見て、聞いてくる。
「……似合うと思う。成人式に着るなら余計ベストあった方が良いかも」
「そっか」
ふうん、と言いながら、奏斗は色見本や、周りに飾ってあるスーツを見回している。
「お肌が綺麗なので、ダークネイビーで細かいストライプはいかがですか? そうですね……このあたりでしょうか」
スタイリストが色見本を奏斗に見せて、奏斗はそれを見ながら、うんうん頷いてる。
「生地、合わせてみたら。ほら、潤、こっち来い」
「えー」
さっきまで喜んでオレの腕に居たくせに、なんだか不満げな潤を奏斗から引き取って抱き上げる。
「ユキくんが似合うか見たいだろ」
そう言うと、「見たい!」とウキウキする三歳児。
どーなの、こいつ。何、奏斗の顔、好みとか? ……まあさっき、よろしく、て言った時の奏斗、可愛かったもんなー……。
とか、かなりアホなことを考えてる自分に少しうんざりしてる間に、実際の生地を肩にあてられて、鏡の前に立った奏斗を見つめる。
「ん、似合うと思う」
オレが言うと、なぜか潤も似合うーとすごく喜んでるし、姉貴と葛城も同意。色はそれで決まって、生地や裏地、ボタンやファスナーなどを選んでいく。ある程度の素材を一緒に決めて、奏斗が採寸に入った横で、オレも色を選び始めた。
「……黒が良いかな。オレのも細いストライプ入れて……あと、奏斗と一緒にスリーピースにする。潤もそうする?」
「なに?」
「オレ達とお揃いにするか?」
言い直すと、潤はうんうん、と笑顔で頷く。
「ユキくんとおそろい?」
「……お前、ちゃんと聞いてた? オレともお揃いだって」
「ユキくんは?」
潤の言葉に、奏斗は面白そうに笑ってるし、皆、クスクス笑う。
「ユキくんがめちゃくちゃ気に入ったみたいねー。まあ、分かる。イケてる子見る目は確かね、潤」
なんて姉貴が言うと、奏斗はちょっと苦笑いしながらオレを見た。
「四ノ宮は黒なの?」
「うん。ちょっと光沢あるやつがいいけど」
「ふーん、そうなんだ」
「何? 黒じゃない方がいい?」
「ううん、そういうんじゃなくて」
「黒でしたら、こんな感じでいかがですか?」
スタイリストが色見本の生地を持ってくる。鏡の前に立って、潤を左腕に移すと、右肩に生地をあてられる。
「奏斗、色、どう?」
「――――……」
腕の長さを採寸してもらいながら、奏斗がオレに視線を投げてくる。
「これ、似合う?」
「うん。似合うと思う。……あ、でも、オレ、よく分かんないけど」
「似合う」のところで喜んでたら、最後の言葉を苦笑しながら言われて、オレも苦笑い。
「似合うか似合わないか、奏斗が思うのでいいんだけど」
「四ノ宮、よく黒着てるから、似合うと思うけど……スーツってなると分かんないんだってば」
その言葉で「もう黒にする」と言って、笑ってると。
姉貴が、不思議そうな顔で近づいてきた。
「ねぇ、どーして、大翔が奏斗って名前呼び捨てで、ユキくんは、四ノ宮、なの?」
「……どーういう意味?」
「ユキくんが先輩なんでしょ? 大翔が雪谷先輩って呼んで、ユキくんが、大翔、なら分かるんだけど」
「――――……」
ちょっと無言。何て答えようかなー……と考えてると。
ほら、やっぱ変じゃん。と。
奏斗の視線が言ってる気がする。
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