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第329話「いまさら」*奏斗※

※  ぎゅう、と抱きついてしまったら、少しして、四ノ宮が笑った気配。  何笑ってんの。オレ、今、すごく、つらいのに。  ムカつく……。 「……そんなホールドされたら、動けないよ」  そんなセリフにハッと気づくと、腕だけじゃなくて、脚でもしがみついていた。あれ、いつのまに、と、少し緩める。 「……気持ちよすぎた?」  少し離れて、オレの顔を見つめて、そんな風に言うから、またムカついて、ぶんぶん首を横に振った。それでも四ノ宮は瞳を緩めて笑うと、オレの太腿に手を置いて、ぐい、と開かせた。 「や……っ」  一度抜かれて、深く突きあげられる。 「あ、ぁっ……っ……ん……」  触られてないのに、前の快感につながる。突かれると、前から精が零れて、自分の腹を汚すのが、体勢的に見えてしまう。 「……や、だっ……」  四ノ宮の方に手を置いて、ぐい、と押しのけようと思ったのに、手を取られて、指を絡められた状態でベッドに括られた。 「やだじゃなくて、ちゃんと言ってみなよ」 「――――……っ……あ……っ」  手をつながれるみたいなそれを、なんとなく目に映しながら、中を抉られる。だめだ、もう――――……ゾクゾクして……。  「……っん、ふ……ッ……」 「……気持ちいいよね?」  四ノ宮の濡れたみたいな声が、耳元で囁いて。かと思ったら、ぢゅ、と耳に舌が入ってくる。悲鳴みたいな声が咄嗟に上がって、同時に突かれてのけぞった唇をまた塞がれる。 「……っン……ッ……ふ、あ……」 「ほんと。……かわいい」  唇の間で囁かれて、そのまま重なってくる。長いキスをされて、頭ん中溶けそうな中で四ノ宮が、オレを見下ろす。 「……オレとするのが、一番気持ちよくなれば良いのに」  は、と荒い息を抑えながら、四ノ宮がそんなことを呟いた。 「……っ……?」  ……こんなに訳が分からなくなること。今まで無かった、けど。  …………いまさら。 「……抱かれたくなったら、オレが良いってなって」 「――――……っあ……っ……」  激しく動かれて、ぎゅ、と瞳を閉じる。 「オレにずっと、抱かれてて」  いつの間にか解かれていたみたいで、頬に熱い手が触れてくる。促されるように瞳を開けると、じっと見つめられる。  きゅ、と下を締め付けてしまうと、四ノ宮は、は、と息をついた。 「……すっげぇ、気持ちいいんだけど。オレは」 「――――……っ」  オレは、って。……何。  そう思って、何か言いたくて、四ノ宮を見上げると。  いつものさわやかスマイルなんか消し飛んだ、男っぽくて熱っぽい、表情。少し寄せられた眉と、息を抑えたみたいな話し方に。  なんだかすごくゾクゾクして。それを意識した瞬間、ぶる、と体が震えた。 「…………ッ ……」  あ、なんか……中。ヤバい。 「……ッ……あ……っ」 「奏斗?」  呼ばれたけど、そのまま抱き付いて。  ……なんか、急激に真っ白になって、四ノ宮のを、ぎゅと締め付けた。 「……っ……奏斗?」 「……っは、……んん……」  オレの、勝手にビクビク震える体を支えるように抱き締めながら、四ノ宮がオレを呼ぶ。 「……今、中でイった?」 「…………っっ……っ」  もう、絶対分かってるくせに。  なんか悔しくて、涙が零れるまま、半分睨みつけて、「抜いて」と言ったけれど、そのまま、また深く突かれた。 「……やっ……ばか、待っ…………ん、ぅ……ッ……」  奥まで突いたまま、中でぐり、と動かれる。 「……やぁ……っ……ぁ、ンっ……!」 「あーもう……――――……エロい、奏斗」 「……っ!」  頭を掻き抱かれるみたいに引き寄せられて、キスされる。 「……っふ……んん、ン……ッ……」  舌を奪われて、噛まれて。  気持ちよすぎて、少しの余裕もなくて、背に手をまわす。 「可愛い」  何度も何度も、そう囁かれて。  すごく長い間。四ノ宮と、シてた。……ような気がする。  ……後のほう、よく覚えて、ない。

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