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第331話「ダメージ」*大翔

 今日は珍しく、なかなか寝付けないみたいだったけど、やっぱり疲れてたのか、その内寝息が聞こえてきた。  こっちは全く、眠くない。  セフレ。  何やらもう思い切り、どーん、と叩きつけられた感が、あった。  セフレなんかじゃない。と、思い切り説得したかったけれど。   でも何だか、言った奏斗の方が、すごく困った顔をしていたから、最小限の言葉で返してやめた。  ……大事にしてるつもり。  セックスだけなんかしてるつもりはないし。ていうか、むしろそれ以外の一緒に居る時間の方がずっと長いと思うし。  …………セフレ。か。  そういえば。奏斗は、一度だけの相手を、セフレとは言わない気がする。  一度だけで、続かないからだろうな。  ……てことは、それよりは続いてるってことで、立場は、上……? いやいや、そうじゃねえよ。馬鹿か。  つか。  …………セフレとか思ってた訳? オレとの関係。  途中で止まったところを見ると、言ったことに後悔はしてるっぽかったけど。でも、それが出てきたってことは、多少は思ってた訳で。  大事。  ……一生居てもいい。  …………一生奏斗だけでいい。  奏斗がオレを本気で嫌がらない限り、離れる気は、無い。  ……奏斗に、誰か一人が、出来るまで、離れない。オレが抱く。  …………思ってきたのは、こんなとこか。奏斗にも結構言ってる気もする。  今思い起こしてて、違うなと思うのは。  奏斗に誰か一人ができるとか……絶対、無理。  その一人は、オレが良い。  ……でも和希の件は、きっと、まだ終わってない。  和希は絶対に奏斗に会おうとするだろうし、和希が会いたがってるのを知ってる奏斗が、今のままずっと放置するとか、そんなことはきっと無い。  ……全部片付いて、奏斗が、ちゃんと話せてトラウマをなくせたら。それで、和希を選ばなかったら。そしたらオレは。  奏斗のことが誰よりも大事で。  ずっとそばに居たいこととか、誰にも渡したくないこととか、伝えたいけど。  まだ、和希と会っただけであんな風になる奏斗に、これ以上迫るなんて出来ない。奏斗は誰とも付き合わないって決めてるし、うまくいくはずがない。それにきっと、考えることいっぱい過ぎて、パンクする。オレとも一緒に居ないって決めるに違いないし。  オレに今できるのは、優しくして、大事にして、何かあった時には、支える。普段も居るけど、特に奏斗に何かあった時に、オレと居たいって思ってもらえるようにする。それくらい。  ……つか、和希を選ばなかったらって、本当はそんな待つようなのも、ごめんだ。選ばせたくなんかないし、何なら、もう二度と会わせたくないし、話もさせたくないって思う気持ちはすごく強い。  けど多分。  ……そこ、通らないと。奏斗が、ふっきれない、気がする……。 「――――……」   腕の中の奏斗を、見つめる。  ……こんな無邪気な寝顔してんのに。  そのまま、なんも余計なこと考えず、楽しそうな笑顔で居てほしいのに。  奏斗のこと。  ……誰より、大事にしたいと、思ってるっつーのに。  なんか、すげー、中途半端。  とは、まあ、思ってたけど。  ……セフレ、かぁ……。  なんだか思っているよりダメージを受けてる自分に、でも咄嗟に大丈夫と奏斗には言えてよかったか、と思ったりしながら。  なかなか寝付けなかった。

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