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第337話「お互い様」*大翔
学校が終わって、駅前の店をまわって買ってきた物を広げる。
一番重かった大きな箱を開けて取り出したのは、タコ焼き用のプレートがついたホットプレート。
うちでこれを使おうなんて思う日が来るとは思わなかった。
小さいタコ焼き機だけもあって、そっちにしようかとも思ったけれど、焼肉が好きとかいう話も聞いたので、結局こっちに決めた。
一度水で流したり、コンセントを繋げたりして、テーブルの上にセット。
それから、タコやネギを切って下準備は完了。
あとは奏斗が帰ってきたら、粉溶けばいいか。
ひとまず準備を完了して、先にシャワーを浴びてしまうことにした。
――――……そういや、葛城、うまく断ったかな……。
お湯を浴びながら昼間の電話を思い出すが、まあうまくやってくれてるはず、とすぐ切り替えた。バスルームから出ると、十九時前。意外と買い物と準備に時間かかったなと思いながらスマホを見ると、十分前に奏斗からのメッセージが入っていた。
「二十分くらいでつくと思う。途中で買ってくものとか、無い?」と入っていた。まだ誰かと居るかもしれないので、とりあえず返信。「必要なものないから、気を付けて」そう入れると、奏斗から「過保護。よくわかんない」と入ってくる。
……まあ確かに。大学二年の男に、大学一年の男が入れるメッセージじゃない気はするけど、仕方ないじゃん、心配だし。
――――……。
部屋着と言っても、別に出られないカッコじゃない。迎えに行こうかなと思い立ったら、すぐに体が動いた。
鍵とスマホだけ持って、サンダルをひっかける。駅から帰るならこの道、という道を辿って進んでいると、その先で奏斗が見えた。
奏斗も同時にオレに気づいて、あ、と口を開けてる。
「奏斗、お帰り」
「……迎え来たの?」
「そう。暇だったし」
「――――……オレ、女の子じゃないけど」
「……前から少し思ってたんだけどさ」
「なに?」
「別に、女の子じゃないとか、男だからとか、そんなのどーでもいいけど。奏斗だから、来てんだよ」
「――――……」
なんか「女の子じゃないし」とたまに言うから気になっていて、本当にそれどうでもいいけど、と思ったからそう言った。
あれ、返事ないなと思って、奏斗を見ると、奏斗はなんだか不思議なものを見る顔をして、オレを見上げていて、目が合うと、ふいと視線を逸らされてしまった。
「……どうかした? オレ、変なこと言った?」
「……変、だよね。オレだから来たとか、普通に言われても……」
「何が変? 奏斗じゃなきゃ来てないけど。ていうかもう色々準備終わったし、奏斗がシャワー浴びてる間に仕上げるから、やること無かったんだよね」
「だからって、別に、出て来なくてもいいのに。すぐ着くし」
「まあそうだけど。良いじゃん、別に」
「――――……ほんと、意味分かんねーんだけど……」
「……お互い様だけどね」
あまりにしみじみ言われるので、言い返してみたら、奏斗が、は?と眉を寄せた。
「オレ、四ノ宮ほど、意味わかんなくないし」
「……まあ、確かに分かりやすいけど。……って、オレも別に、分かりにくくないでしょ、思ってること、奏斗には全部言ってるし」
「それが、意味わかんないことばっかりなんですけど」
「何が分かんないの。分かりやすいでしょ、オレ」
「……全然分かんないし」
はー、とため息をついてる奏斗に、なんだかムッとしてしまうが。
「……まあその内、分かるようになればいーけど」
オレがそう言うと、むむ、とした形の口のまま、オレを見上げて。
「一生分かる気、しないんですけど」
とか言うから、なんだかもう道のり遠いなと息をつきながらも。
「何で奏斗の方がたまに敬語になんの?」
「……そういえば。何でだろ」
なんか気になったことを聞いてみたら、奏斗が、ふ、とオレをまた見上げて、それから、クスクス笑い出した。
「なんかもう、意味わかんなくて怖いから、敬語で距離置いてるのかも」
「……ひどくない?」
すぐに、あは、と笑われて、やっぱり笑顔は可愛くて。
自分も顔が綻ぶ。
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