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第338話「突然の」*大翔

「シャワー浴びてきて。何分位で来れそう?」 「十五分位、かな」 「分かった。鍵、開けて入ってきて? オレ色々してると思うから」  オレがそう言うと、少し考えるようにしながらも、ん、と頷いた奏斗と別れて、部屋に入った。  手を洗ってから、色々準備を始める。  あー……たこ焼き、終わってからシャワーの方が良かったかな。匂いそう。  あとで一緒に入ってもいっか。……嫌がるかな。  めちゃくちゃ嫌がられそうで、そんな奏斗を思い浮かべると、苦笑いが浮かぶ。  とりあえず、換気扇は回しとくか……。  ホットプレートの電源を入れて、温め始める。  たこ焼きの粉を計って、水を入れて混ぜているところで、スマホが鳴った。ボールを持ったままスマホを見ると、葛城からだった。  さっきの話の続きか、無理無理切ったから小言か。とにかく今出なくてもいいかなと判断。しばらくして鳴りやんだが、表示を何気なく見ると、着信が二件、となっていた。  ……あれ。さっき、歩いてる時にでも鳴ってたのか? 気づかなかった。  二回目か……。仕方ねーな、掛けなおすか。  粉も混ぜ終わったし、あとは流し込んで焼くだけだから、奏斗が来てから一緒にやればいいしと思い、スマホを持った瞬間。  インターホンが鳴った。しかも、一階のエントランスのとこじゃなく、部屋の前についてる方の音。 「早いな……」  時計を見て、首を傾げる。鍵を使って良いって言ったのにな。そう思いながら、スマホを持ったまま、玄関に向かった。サンダルをひっかけて、鍵を開けると同時にドアを開けた。 「勝手に入っていいよって――――……」  いいよって言ったのに。  言いかけた言葉は、相手の顔を見た瞬間消え失せて、硬直。 「……は?」 「大翔、元気か?」  スーツ姿。仕事帰りっぽい、父親の突然の来訪に、言葉が出てこない。 「おや、じ? は? なんで?」 「まあ話は中でする」  言いながら、靴を脱いで部屋に上がると、洗面所で手を洗い、ネクタイを少し緩めながら、当然のようにリビングに向かう親父に。 「ちょっと待って。何しにきたんだよ? こんな突然」  なんとなく止めてしまったのは、中にたこ焼きの準備がされているから。  ……絶対、オレっぽくねーって思うに違いない。そう思って止めはしたけれど、なんかすげー気まずい。 「……何か見られたくないものでもあるのか?」 「いや、別に……」 「一人暮らしを始めたのに、様子も見に来てなかったからな。仕事がこっちの方だったから、様子見がてら寄った。見合いの件も話しにきたぞ」 「だからそっちはしないって葛城に……って、葛城は?」 「車で待たせてる。すぐ戻るからと言ってきた」  親子水入らずで話したいと思ってな、とか言いながらリビングに足を踏みいれた親父は、数歩先で、固まっている。 「――――……変わってるな、大翔」 「……は?」 「一人でたこ焼きパーティか?」  ちょっと呆れたように言われて、はー、と脱力。 「んなことするか……」 「じゃあ誰か隠れてるとか?」 「……今は居ないけど」 「これから来るのか? じゃあ早めに話をするか。葛城も待ってるしな」  ……奏斗に連絡しよう、連絡するまで来んなって。

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