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第347話「申し訳ない」*奏斗
「たこ焼きってさ、自分で焼くとこんなに美味しいんだね、熱々だからかな?」
「さっきのやけど、平気?」
「んー、ちょっとひりひりするけど。氷なめてたから、マシかも」
「ならいいけど」
「……なんかさー」
「ん?」
落ち着いてくると、色々思い出してくる。
「二号のこと、四ノ宮のお父さんにも葛城さんにも聞かれたし。ジェットコースターの写真もだしさ。……なんか違和感なかったかな……」
そう言うと、四ノ宮は少し黙った後、ぷ、と笑う。
「二号は違和感ありまくりだよね……だってオレの部屋だもん」
「……だよね」
「まあオレも、あーあーとは思ったけど、片付ける暇もなかったし。そういえば、奏斗を迎えにいってる時に葛城が電話くれてたんだよね。多分、親父が行くからまずいもんあるなら隠せってことだったと思うんだけど」
「……気づかなかった? 歩いてたから?」
「そう。んで、たこ焼きの粉を用意してる時も電話来たんだけど、混ぜてて出なくてさ。……まあでも、それは出ても、もう親父すぐ近くに居たけど」
そこまで聞いて、オレは、ふっと気づいた。
「葛城さんは、どこまで知ってる? まずいもの隠せって、思うような何か知ってるってこと?」
「奏斗とのことは、なんとなくは、知ってる。細かいことは言ってないけど」
「……あの……オレ達が……」
その後何と言ったらいいか分からなくて、口ごもっていると、四ノ宮はオレを見つめながら「関係持ってるのは知ってる」とさらっと言う。
「……言ったの?」
「見合い断りたいし。葛城にバレても別に問題無いから」
……あるだろ問題。
多分とってもとっても、大事に育ててる、四ノ宮が。ゲイのオレにそんな道に引き込まれてるとか。絶対、問題あるし。絶対、嫌だと思うし。
さっき隣でたこ焼き楽しんでるように見えたけど。さすが大人なんだろうな、全然嫌そうにしないって、すごい。……絶対嫌だと思うのに。
「なんか無言、長すぎ……」
すごく嫌そうに眉を寄せて、四ノ宮が俯いてたオレの顔を覗き込むように見つめて苦笑する。
「……だって、絶対葛城さん的には反対だと思うし。そりゃそうだと思うし……なんか申し訳なくて」
「何で奏斗が申し訳ないんだよ。オレからそうなってるって言ってるし、葛城が何か言うとしたら、オレにだよ。奏斗には何も言わないし、何も思ってないと思うよ」
「そんな訳ないじゃん……」
確かに、オレが無理無理その道に引きずり込んだかと言うと、そんなわけではない、とは思うのだけど。
でも、一番最初のきっかけになったのは、あの、薬を飲まされたことが原因な訳だし。やっぱりあれはオレが悪いし。
しかも全然意味は分かんないけど、四ノ宮は、他の奴のところに行くならオレがって言ってた訳だから、やっぱりオレを心配して、だったんだろうし。
色んな意味で、やっぱりオレのせいな気がする……。
オレがちゃんとしてれば、四ノ宮とこんなことになることは無かったわけだし……。
「とにかく葛城は話して大丈夫。むしろ話しとかないで色々後からバレる方がヤバいから。細かいことまで言う必要はないけど、どうなってるか位は言っといた方が、良い」
「信頼してるんだね……」
……まあ分かるけど。数回しか会ってないけど、葛城さんは、めちゃくちゃ頼りになる人な気はする。四ノ宮がすごく信頼してるのも、納得してしまう、けど。
「……パーティーで顔合わすの、やだなぁ……」
「何で。もう今日、さんざん一緒にたこ焼き食ってたじゃん。気にしなくていいって」
「……っそんな割り切れる訳ないじゃん! もう、やだよー」
「ほらほら、言ってももうしょうがないよ。たこ焼きくるくるしていーよ」
四ノ宮はクスクス笑いながらオレを見る。
「さっきの必死なクルクル、すげー可愛かったんですけど」
「可愛い言うな」
「もっかい見たいから、早くやって」
「あれは、あの空気感だったからなってたんだよ! もう!」
「いーから、早く早く」
クスクス笑って楽しそうな四ノ宮に、もう、苦笑しか浮かばない。
さっきみたいな高速のくるくるじゃなく、普通にたこ焼きを回転させていると。
「あ、そういえば奏斗、椿先生からの昨日のメール見た?」
「見た」
「一応合宿までに緩くてもいいから、考えまとめてこいって。まとめた?」
「ううん。とりあえず、ゼミの日までに図書館行って、本漁ろうかなって」
「一緒に行く?」
「小太郎と行こって話してたんだけど」
「一緒に行っていい?」
「……一年と行けば?」
「絶対言うと思った」
軽く睨まれるような笑われるような、変な顔で見られる。
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