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第353話「安心」*奏斗

 小太郎たちとの明日の予定が決まったら、四ノ宮は、もう寝ようと言い出した。歯磨きに連れていかれ、一緒に並んで歯を磨く。磨き終えて、口を漱いで、タオルで口を拭いた。  四ノ宮も同じようにしてから、オレの手首を掴んだ。引かれて、振り解くこともできず。四ノ宮について寝室まで歩く。 「……四ノ宮ー」 「ん?」 「……オレいつまで、ここで寝るの?」 「どういう意味?」 「オレ、言ったじゃん。クラブとかも行かないと思うって」 「うん。言ってたね」  振り返って頷きながら、でも寝室のドアを開けて、オレを中に誘いこむと、ドアを閉めた。 「……見張ってなくても、大丈夫だよ?」  そう言ったオレの手を引いて、四ノ宮はそのままベッドに腰かけて、オレのことも隣に座らせる。 「……んー。奏斗はさぁ」 「うん」 「オレが見張るために一緒に寝てると思ってんの?」  苦笑いの四ノ宮。  その質問に、うん、というのはちょっとためらわれる。  見張るためっていう言い方はちょっと違うよな……。    黙ってると、ふ、と静かに笑う気配。それが気になって、四ノ宮の方を見つめると、何だかやたら穏やかな顔と向かい合った。 「そう思ってるの?」  その言葉に、合わせた視線を少し落とした。 「思ってないでしょ?」  四ノ宮の手が伸びてきて、オレの頬を挟んだ。  唇が突き出るみたいな感じにされて、眉を寄せると、四ノ宮は、ぷ、と笑う。 「……今日はしないって、奏斗言ってたし。ていうか、さっきすげー眠そうだったし、寝よ?」  言いながら、四ノ宮は布団に足を入れる。  見張るためだけだと思ってるわけじゃないけど。でも……。  なんとなく何も言えないまま、四ノ宮の隣に並ぶ。 「電気消すよ?」 「ん」  頷くと、明かりが消えて、優しいオレンジの光だけになる。  布団に横になろうとした時。腕を掴まれて、引き寄せられてしまった。 「……広く寝たいって言ったのに」  抱き締められて、そう言うと、四ノ宮はクスクス笑う。 「何もしないから、許して?」 「――――……せまい」 「うん……」  ふ、と笑うけど、全然離そうって気配はない。何だかすごく、あったかい気がして、こっちもあっという間に、ウトウトし始めてしまう。  はわ、とあくびが漏れる。ふーと息をついたら、さら、と頭を撫でられた。 「最近の奏斗さぁ……眠くなるの早いよね」 「……うん。そ、かも……」 「……オレの隣で安心できてるなら、超嬉しいんだけど」  クスクス笑いながらそう言って、四ノ宮はオレを柔らかく、抱き締める。  目がもう開かない。 「おやすみ」  そんな声がして、唇に、柔らかい何かが触れた。  ――――……キス、した……?  何もしないって言ったじゃん。そんなこと、思うのだけど。  なんだか本当に、あったかくて。  そのまま、眠りについてしまった。    

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