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第356話「可愛い」*大翔

 親父と葛城とたこ焼き食べるなんてことに奏斗を巻き込んでしまった。  でもなんか。  ……ちょっと可愛かったな。たこ焼き、すげークルクルしてたし。  ……ていうか。  奏斗が最近、すごく可愛い。気がする。  オレがずっと居るって言ってるのを信じてないのは、分かるけど。まあそれは良いとして。……いや良くねえけど。  髪ずっと乾かすって言ったら、はげたらどーするとか言うし。  二号要らなくなったらちょうだいとか言うし。  図書館一緒に行こうって言っても、別で良いじゃんって言うし。  いつまで一緒に寝るの、とかなんかそういうのをよく聞いてくる。  居るって何度言っても、意味が分からないって奏斗は言うけど。  一緒に居るっていうのを信じてはいないくせに、一緒に居るっていうのを聞きたいのかなと感じるというか。  ……まあ、聞きたいと思ってるとは、本人は絶対認めないと思うけど。  自分でも気づかないような心の奥の方で。  居るよ、って言って欲しいって思ってるのかな。と勝手に想像すると。  ……なんだろうな、すげー可愛いと思ってしまう。  もともと、自分のこと、好きじゃないからな、奏斗。  人は好きだけど、人が自分をずっと好きだとは信じてない。  ……一人で生きてく、て。思ってるもんな。  ふー、とため息をつきながら、牛乳があったまった鍋の火を止めた。  シャワーも浴びて食事も終えて片付けてから、奏斗は結局オレの部屋で読書タイムを始めた。絶対本持ってきてとオレが騒いでたからだけど。  ソファで二号に沈み込んだまま、静かに本を読んでる。  疲れたって言ってたし、なんとなくよく眠れるように、今日は甘いホットミルクにした。奏斗のは特に甘い。 「はい」 「……あ。ありがと」  集中してた奏斗は、マグカップを受け取って、中を覗いた。「ホットミルク?」と聞いてくる。 「よく眠れるようにね」 「……ありがと」  本を置いて、そのままマグカップを両手で抱えてる。  二号は抱いてる感じのままなので。  なんかものすごい可愛い光景なんだけど。言わない方がいいな。ずっとやってて欲しい。 「あま……」 「甘すぎた?」  小さく首を振って、ふ、と笑う。 「おいしいよ」 「――――……ん、良かった」  ああ、なんか。ほんとに、ずっとこんな風に、ほんわか笑ってて欲しいな。  隣に座って奏斗を眺めてると、そう思う。 「奏斗」 「……ん?」 「一冊読む?」 「んー? うん。眠くなるまで読もうかな」 「そっか」 「四ノ宮は?」 「オレも読む」 「ん」  ――――……なんか。  ……こくこく飲んでる首元に、キスしたいなーとか。  そのまま押し倒して、オレしか見えないようにしたいなとか。  唐突に浮かんだ感情に、ちょっと困る。    眠くなるまで読むってことは、それからは寝るってことだよな。   なんか、疲れてるって言ってたし。  ……寝かせてあげようとは、思ってるんだけど。  奏斗を見てるとなんだかまずい気分なので仕方なく、奏斗に潰されてる二号に視線をうつした。  なんかいいよなーこいつ。気付くといっつも奏斗の腕の中にいるけど。なんな訳。    背中を丸めて膝抱えなくて良かったけど、なんだかな。  少し面白くない。思いながら、ホットミルクを飲む。     (2023/7/2) ブログにこのお話の書き直しと転載についても書いてます♡ https://fujossy.jp/notes/33932

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