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第357話「誰にも」*大翔

 ホットミルクを飲み終わって片付けて、先に歯を磨いた。いつ眠くなってもいいように準備してから、ソファに一緒に並んで本を読み始めた。  奏斗は二号を抱いてその上に本をのせてる。オレはそのすぐ隣で背もたれに寄りかかって本を読む。  全部読むことはないと思ってパラパラとめくりながら読みたいところだけを読んでいると、隣で奏斗が欠伸をかみ殺してる感じがする。そのまま特に何も言わず、しばらくは文字を追ってるみたいだったけど、その内、ぽろ、と本が奏斗の手から滑った。  背を起こして、二号に乗ってる本を取りながら奏斗を覗き込むと、案の定、すやすや眠っている。  ……は。かわい。  なんとなくだけど、ここで安心してくれてるから、寝るのかなあ、とか思うと、余計に可愛く思えてしまう。……まあ、疲れてるだけって可能性もあるけど。でも多分、この人、なんだかんだ警戒心はあるから、安心しない他人とは寝れない人な気がするし。  スヤスヤ寝息。可愛い。  良かった、歯、磨いといて。さっきトイレも行ってたし。そのまま寝かせよ。  二号から奏斗を離して、腕をオレの肩にのせさせてそのまま抱き上げる。  軽いとは言っても、女子とはやっぱり違う。女の子特有の、ふにゃっと柔らかい感じとかは、無い。  それでもやっぱり、可愛いと、思ってしまう。 「……?」  揺れるから起きてしまったのか、奏斗が体を起こす。 「わ、何……」  びっくりしてるみたいなので、そのまま下に足をつかせて、降ろした。 「寝ちゃったから、布団に運ぼうと思っただけ」 「つか、起こせよ。重いじゃん」 「別に。なんか気持ち良さそうだったから、そのまま運べれば良かったけど」 「良いってば。子供じゃないんだし……」  奏斗は困ったみたいにオレを見上げる。 「このまま寝る?」  そう聞くと、「ん。……もう本は読めなそう」言いながらあくびをはわはわ、浮かべている。オレは、少し戻ってリビングの電気を消して、奏斗に近づくと、その手を引いた。 「早く寝よ」  特に何も言わず、後ろをついてくる。  寝室について、小さな明かりにする。あー、どうしよ。すげえ触りたい。  眠そうな、トロトロした顔。可愛いけど……なんか、乱したい。 「ね、奏斗」 「んー……?」  触ってもいい?と聞こうと思ったけど。  はふ、とまた欠伸したのを見て、断念。 「なんでもない。……おやすみ」 「ん? ……何か言おうとした?」 「んん、別になんでもなかった。早く寝よ」 「……ん、おやすみ」  オレの隣で、向こうを向いて横になった奏斗を、ぐい、と引き寄せて後ろから抱き締める。 「……寝辛くないの?」 「全然……つか、奏斗、寝辛い?」 「…………」  少し無言のまま動かない奏斗を待っていると、奏斗は首を少しだけ振った。  じゃあいいのか、このままで。  ……素直なの、珍しい。ていうか、 可愛い。 「おやすみ」  ふ、と笑ってしまいながらそう言うと、「ん」と言って頷く。  そのまま、少しの間、動かない。 「――――……」  手をする、と動かして、ウエスト周りに触れる。 「……何……」 「ん?」 「……変な触り方すんな」  奏斗の手が、オレの指を掴んで離させる。 「……ちょっと触ってるだけじゃん」 「やだって、離して」 「……今の位で反応しちゃう?」 「バカ。くすぐったいから、触んなって」  振り返ってくる奏斗に、きっと睨まれる。 「……離せって……」  そう言う奏斗の顎を捕らえて、キスで塞いだ。  だめだ、なんかすごく、可愛い。 「……かなと」  唇の間で唱えると、ぴく、と手が動いて……でも、抵抗はしない。 「……さわっていい?」 「やだ。眠い……」  そう言うけど、触れると、びくついて。  ただ、ひたすら、可愛い。  ちゅ、と、首筋にキスする。 「や……」  悪戯に軽くキスして、上半身、感じやすいところに緩く触れていると。  息、上がってくる。 「……やめ」  制止の言葉を言いかけた唇をキスで、塞いだ。  ……もーむり。可愛い。  オレのに。  したい。な。マジで。  誰にも、触れさせたくない。

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