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第364話「恋愛対象?」*大翔
帰って、一緒に食事の準備。
サラダとパスタだけなので、すぐ作り終えて食事を終えた。それから、奏斗はいったん部屋に帰った。合宿の準備とシャワーを終えたら、コーヒーを淹れてくる、と言ってた。
オレも、小さめのボストンバッグに必要なものを最小限で詰め込んで、ノートと筆記用具。資料などは向こうで配られるので特に必要なし。一泊なのでそんなに荷物もない。
手早くシャワーを浴びて、髪の雫をふき取る。
ふ、と自分の顔を、鏡でじっと見つめる。
そういえば奏斗って、オレの顔って、好きかな?
なんか見た目がお得って言われた、変な記憶はすごくあるけど……。
葛城のことをカッコいいとか言ってたよな。なんかそれもよく覚えてる。
オレは、奏斗には、宇宙人とか詐欺師とか、お母さんとかまで言われてて、全然王子じゃないって言われてるしな。ああ、馬鹿宮とかもか。思えば、結構あれこれ言われてる。
一応オレ、カッコいいと言われ続けて生きてきたのだが。
……つか、奏斗に好かれないなら、意味なくねぇかな。むしろ面倒なだけな気がする。
どうなんだ? 好きか、な?
江川と話していたら唐突に、奏斗がオレを好きになればいいのにと思って。多分そのせいで、こんな妙なこと気にしてる自分に気づいて、ふー、と息をついた。
奏斗に、オレを好きになってもらえばいいんだよな。
和希よりも。オレのことを。そしたら和希と話さなくても、吹っ切れるか?
……まあでも難しいだろうけど。
奏斗は、吹っ切らない限り、恋愛モードにならないようにって思ってるだろうし。
……ま、そこ置いておいても、好きになってもらう努力をするのは、いいことかもしれない。
……さて。どうすべきか?
思えば、好きになってもらいたいとか、思ったことがない。
そこにいるだけでモテた、とか公言したら全員に引かれるだろうが、でも結構それが事実で。特に何もしなくても、好かれてきた。軽く優しくするだけで良かったから、実際、オレのこの営業スマイル的なのが効かない奏斗みたいな相手に好かれるには……どうしたらいいんだ??
しかも、やることだけ、やっちまってるし。
体から好きになってもらうとか、そんなんじゃ絶対ダメなのは分かってるけど、この状況で、いったい、ここから、どう持っていけばいいのやら。
そういえば今更だけど。
奏斗にとって、オレって、そういう対象になり得んのかな。リアルに近い場所ではセフレがありえない、みたいなことは言われた気がするけど……。恋愛対象としてはどうなんだ?
生理的に無理、とかは、さすがに無いと思うんだけど……。
聞いてみたいけど多分、「考えたこともなかった」みたいな顔で固まられる図しか、思い浮かばない。
モヤモヤ考えながらキッチンに移動して、水を飲んでいると、チャイムが鳴った。
ドアを開けると、奏斗。
「おかえり」
「ただいま……っておかしい。オレんちは、あっち」
そんなこと言って苦笑しながらも、入ってきてくれる。手にちゃんとコーヒー持っててくれてるし。
やっぱり、こんなことも、ほんとに嬉しいと感じる。
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