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第379話「いい仕事…」*大翔
◇ ◇ ◇ ◇
その後、五人で風呂にやってきた。
先に洗おうよ、と奏斗だけに言って、ん? 何で?という視線を受けながらも、とっとと先に洗い場に向かい、さっさと洗わせて温泉に浸かった。
だって、あとから洗わせたら、洗い場は丸見えだし。
……つか、マジで、男湯でそんなことを考える日が来るとは、思いもしなかったが。
先に洗ってますねとオレが言ったから、佑と相川先輩と冴島さんは少しゆっくり入ってきた。三人も体を洗い始め、シャワーを使ってるので、オレは奏斗に少し寄った。
「……?」
怪訝そうな奏斗。
「出たら、ささっと拭いて、服着てね?」
「……もー。馬鹿宮」
ため息交じりのセリフが返ってきた。
奏斗はオレから離れると、窓の方に移動していって、暗い空を見上げた。何となく、隣には行かず、後ろの方の壁に寄りかかった。
ほんとオレ、何やってんだか。と思うけど。
……もうしょうがない。心配だし見せたくないし。
なんとなく上を向いて、はーと息をつく。
ふと視線を感じて、奏斗の方を見ると、ぱち、と視線が合う。
「ん?」
首をかしげて見せると、むー、と口が尖る。
……可愛いんですけど。何だろ。
クスクス笑ってしまうけど、奏斗は何も言わない。
またぷい、と顔を背けて、外を見上げてる。
上を見てる、奏斗の首とか、顎のラインとか。
――――……なんか綺麗っつーか。可愛いなあ。
今度、絶対奏斗と温泉に行く大作戦を決行しよう。
浴衣とか似合いそうだし……。浴衣着て、温泉街散歩とかもいいな。
川とか。あー神社も、奏斗と行きたかったな。明日帰りの前に行くってのもあり? 十六時解散だったよな……行けるかな。
温泉に沈みながら、なんとなくボーっとしていると、後から洗ってた三人が中に入ってきた。
別に誰も体を隠さないので、自然と目に入ってきたけど。
「――――……」
やっぱりオレ、絶対男が好きな訳じゃねえな……。
一瞬、可能性を考えかけてみて、げんなり。
「どした? のぼせた?」
知らず変な顔をしてたのか、少し離れたところに座った佑に、首を傾げられてしまった。
……奏斗じゃなかったら、無いな。
つか。奏斗だとあり。ありというか、奏斗しか見てないとか。ほんと、自分の気持ちの変化がすごすぎて、なんだかなーと少し考えてしまう。
ほんの少し前までは、なんだか鋭くて近づきたくない、ただの先輩だったのに。オレ、男に興味なかったし。
「のぼせたなら一旦出たら?」
「……いや、のぼせてはないけど」
オレが佑にそう答えていたら、相川先輩が奏斗を見て、苦笑しながら言った。
「ユキ、顔、真っ赤」
「え、そう?」
「なんかユキって、白いから余計かなあ。大丈夫?」
「え、全然大丈夫だよ。赤い?」
「うん、赤い」
相川先輩に言われて、奏斗がクスクス笑ってる。
「ていうか、肌白すぎじゃね?」
相川先輩が言ってても腹が立たないのに、冴島さんが言うと、何だかムカつくのはなぜだろうか。
「そうですか?……てか、確かにオレ、冴島さんと色、全然ちがいますね」
「オレ、もともと黒いかも。にしても……日に当たってる?」
「うーん、オレ部活もバスケだったので、ずっと白いかも。サッカー部とか、真っ黒でしたね」
「なーユキ、オレと比べてみる?」
相川先輩が腕を伸ばして、それに合わせて、奏斗も伸ばしてる。
「……うーん、確かにオレ、白いかも。夏、焼こうかな~」
のんきに奏斗は言ってるけど。
……出たい。奏斗を連れて。
腕とか出してると、上半身も出るから、胸とか丸見えだし。
……って男、だけど。
はー。何であんな可愛いのかな、くそ。
ざ、と、立ち上がる。
「先シャワー使うから出てる」
「ああ、うん。どーぞ」
佑が頷いて、壁に寄りかかるのを見てから、奏斗の方は見ずに、シャワーの前。すると、案の定。奏斗も出て、隣に来た。
今の言い方すれば、きっと、先にシャワー使わなきゃと、奏斗なら思うかなと思って。しかも、これで目を合わせたら、一緒には来ないだろうなと思ったので、視線を向けなかったんだけど。
正解、かな。今のは。
とりあえず、とっとと、ここ出よう。
「流しましたか?」
「うん」
「出ましょ?」
「……ん」
ちょっと、間があったけど、頷いてくれたので。
もちろん奏斗を前に歩かせて、後ろから視線をガード。さっさと脱衣所に連れ出すことに成功。
いい仕事したのでは、と。とりあえず自画自賛しつつ。
前を歩いてる奏斗。
普段は、ベッドとバスルーム以外で奏斗の裸は見ないので、こんなに明るいところで見ると、なんだか綺麗すぎな気がして、目をそらしてしまう。
あっちの三人の裸には、勝手に見といて悪いが、心底げんなりしてたのに。
と自分に呆れる。
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