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第386話「ドア一枚」*大翔 ※

 ……めちゃくちゃ涙目、可愛いけど。もうイかせてあげよう。  ぺろ、とその涙を舐めたその時。がたっと、ドアから音。  ドアを開けようとして、鍵に阻まれたらしい。 「あれ、鍵かかってますね」 「マジ? ユキ、居るのかな?」  ――佑と相川先輩の声だ。  奏斗は、ドアが音を立てた時に大きく震えたきり、口元抑えたまま、目を見開いている。 「ユキ、いる?」  奏斗は、赤い顔。息、あがって、涙目のまま、オレをじっと見つめて、小さく首を振ってる。 「あ、四ノ宮います」  オレがそう言うと、「あ、大翔居た。そこに雪谷先輩も居る?」と佑の声がする。 「そろそろ部屋に戻ろうってなってさ。帰ってこないから」  続けて、相川先輩の声も。 「今、先輩が個室に入ってて。腹痛いって」  奏斗に睨まれるが、それしかないと思うんだけど。  触れたままの、もうすぐイきそうなそれは、手の中で震えてる。  奏斗もビクビクしてるし。息をめちゃくちゃ抑えて、涙目のままで。  あー。やば。……めちゃくちゃそそる。 「……っ……!」  奏斗のを少しだけ握ると、びく!と震えて、眉を寄せてオレを睨む。 「先輩が出てきたら、連れて帰るんで。先、戻っててもらっていいですか?」 「りょーかい、ユキ、平気そう?」 「多分」 「大翔がテーブルに置いてったスマホ、オレ持ってるからなー」 「ああ、サンキュー」  二人は、多分何も疑わず、離れていった。  良かった、開けてって言われなくて。  固まったまま、静かになるのを待ってたオレ達は、少しして、はー、と息をついた。 「ちょっとびっくりしたね」 「も……っば、かみ、や、いいかげんに、し、ろよ!!」  顰めた声で言って、めちゃくちゃ睨んでくる。  ……でも、もう、なんかほんとに可愛く見えてしまう。 「ごめん。なんか我慢してるの、可愛くて」 「……っバレたら……どうす、だよ」 「今のじゃバレないよ」 「……友達とドア一枚のとこで……こんなことする趣味、ないからな……!」 「ん。今、終わらせるから」  ぐい、と抱き寄せてキスしようと顔を傾けると、奏斗が顔を引く。 「……っ離せば落ち着くから、もう離し……ぅ、ん……っ」  抱き寄せて口づけて、奏斗のを愛撫して抵抗を奪う。 「……っん、ん……っ」  すぐに感じるところ、刺激すると、は、と息を抑えて、ひく、と喉が反る。快感に弱いとこ、可愛い。  ちゅ、と首筋に口づけると、びくん、と震える。 「……っぁ……っ……ッ……」  少しの刺激で、オレの手の中で達した奏斗は、は、と背を壁についた。  手で口元を抑えて、オレを睨む。 「……ッ……馬鹿」 「ん。ごめん。……ちょっと待ってて」  奏斗から離れて、水道で手を流す。手を拭いてから、奏斗の側に戻って、ぎゅ、と抱き締めた。 「……ごめん。なんか。ヤキモチかと思ったらすげー可愛くて」 「ち、がうし」  違うって言うけど。  オレが、里穂と神社に行くのを、楽しそう、とか。  そんなのヤキモチ以外に何があんの。と思うと。違うっていう奏斗も、なんか愛しい。  でも、認めたくないんだろうと思う。  ヤキモチって認めたら、オレのこと、好きみたいってことになっちゃうもんな。  だけど、そういうのを絶対に認めたく無さそうな奏斗が、それを口にしたって思うと……なんだか胸の中が、じんわり熱くなる。

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