387 / 542
第393話「ずっとなんて」*奏斗
しばらく黙ったままでいたけど。
オレは、それ以外に言うことが思いつかない。
「……何でいっつも」
「ん?」
「…………そんな感じなんだよ?」
オレがそう言うと、四ノ宮は少し首を傾げた。
「そんなって?」
「……そんな」
もうそれ以上何も言えない。
「そんなって……分かんないんだけど」
四ノ宮は苦笑しながら、オレをまっすぐに見つめる。
「奏斗は、オレと居たくない?」
「……そういう訳じゃ、ないけど」
むしろ、なんか居心地がよすぎて、なんか……。
自分の中で、一線引きたい位、というか。
「別にさ、帰りが一緒じゃなくたっていい、とは思うよ」
「――――……」
「奏斗が先生と何か話したいなら、止める権利は無いし。どうしてもこっち来てって我儘言う訳にもいかないけど」
「……ん」
思ってたより、四ノ宮は冷静。
もっと、何で? とか、絶対乗って、って、言われるかと思った。約束したのにって、怒るかな、とも思ってたけど。
「色々考えて、それでもそうしたいなら……いいよ。ただ」
「……?」
「オレは奏斗と居たいって思ってるから」
「――――……」
……ああ。そっか。
いつもそうか。
いつも、すごく強引ぽい感じするのに、大事なとこは、無理強いはしないし。……すごく怒ったり、そういうことも無いのかも。
いつも、オレがどうしたいか、ばっかり。
……いつも。
「あの……」
「ん?」
「……オレが言った……」
「うん」
「……一人で生きてくってやつ」
「ん? ……ああ、講義ん時の?」
急に話題を変えたからか、一瞬オレを見つめてから、聞いてくる。
「ん。それ、さ」
「うん」
「……どう、思った?」
「どうって? どうって言われると……」
んー、と四ノ宮は考えてから、苦笑いを浮かべながら、ちょっと困ったように話す。
「絶対あいつのことが絡んでるんだろうって思ったから複雑ではあったけど……オレは、一緒に会社やるとかもありかなーとか、ちょっと思ってた」
「――――……」
オレが四ノ宮の言葉に黙ると、四ノ宮は、オレを見てさらに苦笑い。
「一人でやるっつってんのに、て思ってる?」
笑いながらそんな風に言って、ちょっと可笑しそう。
でも。違う。そんな風に思ったんじゃない。
四ノ宮って、今一緒に居るってだけじゃなくて、ほんとに、そんな先のことも、考えてるのかなって思ったから。……何も、答えられなくなっただけ。
一緒に会社やる、とか。自然にそんなこと、言うんだ、と思ったら、何も返せなくなった。
「奏斗に、一人で生きたいとかは言わせたくないと思うけど。……ってそういうのじゃなかった? 何が聞きたかった?」
「……ううん。もういい」
「そう?」
なんか。
……四ノ宮ってほんとに……。
「――――……あのさ」
「うん?」
「……オレと四ノ宮って……ちゃんと話してそんなに経ってないじゃん」
「うん。まあ、そだね」
「……ずっと一緒、とかさ、この先のことなんて、分かんないじゃん」
「――――……」
「……ずっとなんて難しいよ」
そう言ったオレを見て、四ノ宮は、ふ、と苦笑い。
「……難しくても、一緒に居たかったら、一緒に居れるように、する」
考えながら、そんな風に言って、四ノ宮はオレを見つめる。
「会ってからの期間なんか関係ないよ。ずっと知ってたからってこんな風に思ったことないし。この先も一緒に居たいと思ったの、奏斗だけだし」
「――――……」
「ずっと居たいって言ってるのは、本気だって言ったよね? 半端な気持ちでそんなこと言わない」
なんか、本当に四ノ宮の、こういうとこ。
まっすぐすぎて、本当に、何て答えたらいいのか、分からなくなる。
「あのさ。奏斗」
「…………?」
「いつかちゃんと言おうと思ってたんだけど」
「――――……」
「奏斗が、まだ、和希のこと、微妙なのも知ってるし、全部分かってるけど」
「……別にもう、微妙とかじゃ……」
「まあ、そこらへんが複雑なのは分かってるけど。それでも変わらないってことだけ伝えとく」
「…………」
改まって、何だろう、と思って。
小さく頷いて、そのまま、四ノ宮を見つめ返すと。
「オレ、奏斗が、好きだから」
「――――……」
「好きだから、大事にしたいし、一緒に居たい」
まっすぐな視線を見つめ返したまま。
四ノ宮のセリフを、自分の中で、繰り返す。
ともだちにシェアしよう!