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第400話「椿先生と」1*奏斗
◇ ◇ ◇ ◇
午後のグループワークがやっと終わった。
各グループ一通り発表まで終えて、椿先生の講評を聞く。
色々反省や改善点なども出し合って、このゼミ合宿の感想を皆が言い終えて終了。予定より少し遅れて、十六時半に解散となった。
荷物は午後の途中の休憩の時に、この教室に持ってきていたので、先輩達や皆がそれぞれ声を掛け合いながら、散っていく。
「ユキくん、ちょっと宿の人と話してくるから、受付辺りで座っててくれる?」
「あ、はい」
先生の言葉に頷いて荷物を持ったところで、小太郎と翠が近づいてきた。
「ユキ、じゃあね」
「うん」
「何話すの? 先生と」
「んー……色々かな。来年のゼミのことも聞きたいことあるし」
「そっか。 ――ユキさ、何か悩みあるなら私たちにも言ってよね?」
翠に言われて、ありがと、と頷いた。
「そんじゃな。また明日、学校でな?」
「ねー、明日学校なんだよね……ちょっと信じたくない」
小太郎の言葉に翠が苦笑い。「ほんとだよね」と笑い返した。
皆が宿を出ていって、とても静かになる。もう他の団体はとっくに帰ったみたい。
先生は何かをまだ話しているので、ソファに座ったまま、ふ、と息をついたその時。走ってくる足音が聞こえてして、玄関の方を見ると、四ノ宮だった。
四ノ宮とは、さっき教室で視線だけあわせて、別れたんだけど……。
「先輩」
呼ばれて、玄関まで近づくと、四ノ宮はちょっとため息。
「今あいつらと話してた感じだと、夕飯食べて、その後家まで送ることになりそうでさ。少し遅くなりそう。寝不足だったよね。先、寝てていいからオレんち、入ってて?」
「そんなこと言いにわざわざ戻って来たの?」
「なんか、断れなそうだからさ。奏斗、夕飯は済ませといてね。ごめんね?」
自然と、ごめんね、と言う四ノ宮に、何だか、少し、ほわっとしてしまった。
だって別にごめんねじゃないし。夕飯なんかオレ、一人で済ませられるし。ていうか、ごめんねっていうとこじゃないのに。
「ホワイトの方の四ノ宮だもんなー? 断れないよね」
「からかわないでよ。……はー。くそ。……鍵使って、うちに入ってていいからね?」
「いいよ。うちでゆっくり寝とくから、オレのこと気にしないで」
「はーもう……。なるべく早く帰る。電話かけるから、寝るなら、スマホの音、消しといて」
「急がなくていいから、運転気をつけろよな」
「ん。奏斗もね。つか、オレんちで寝てていいからね」
最後、歩き出したながら、まだ言ってる……。
オレは、苦笑しながら、四ノ宮に手を振った。
またソファに戻って少し待って、話を終えて戻ってきた椿先生と宿を出た。先生の車に乗り込んで、ナビを入れると、到着予定は2時間後。
「来る時より混んでそうだね」
言いながら、先生が車を発進させる。
「そうですね。すみません、お願いします」
来る時は四ノ宮と音楽聞きながら、歌いながら来たっけ。あれ昨日の朝なんだよな。なんか随分、濃密だったような。
今は先生がかけた、静かな感じの洋楽が小さめの音でかかっている。
「なんか、曲、先生っぽいですね」
「そう? ああ、ユキくん、何か話したいことあったら、全然話してくれていいよ。むしろ話しながら行きたい。昨日遅かったから、眠くなっちゃいそうだし」
クスクス笑って言う先生に、頷く。
しばらくは、ゼミ合宿の話をしていた。起業のことを話したり、先生も昔色々してた、みたいな話もしたり。
色んな経験をしてる先生と話すのって、純粋に、ただ楽しい。
おかげで、四ノ宮のことをあんまり考えずに、時間が過ぎて行く。
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