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第406話「意識」*奏斗 ※
自分の部屋に帰って、ズボンからスマホを取りだす。
四ノ宮からの連絡はまだなかった。そのままリビングのテーブルに置いて、先にお風呂に入ることにした。疲れたし、湯舟に浸かることにして、お湯をためてから、服を脱いだ。熱いシャワーを浴びながら、この二日間のことを思い出す。
なんか。……この二日間。色々あったなぁ。
四ノ宮に、好きって言われたり。
先生やリクさんと色々話したり。
なんか、自分の中になかった考えが聞けて、すごく良かった、気がする。
頭を洗いながら、あー、そういえば、皆の前で、隆先輩にキスされたんだっけ、と思い出した。酔っ払いだし。キス魔だって話だし。他にもされた人達が居て、なんか、もう、オレよりも皆がギャーギャー騒いでくれたから、オレは特にそこまで、何もしなかったというか。
……四ノ宮が、助けに来たし。
めちゃくちゃ笑顔だったけど、絶対あれ、怒ってたよなぁ。……隆先輩に? オレにもかな。気をつけろって言ってたし。多分、周りの皆は、四ノ宮が怒ってるなんて、思わないんだろうけど。見事な外面というか、笑顔というか。王子はいつも通りだったなぁ。
ていうか、キス、されても。
隆先輩のキスなんて、別にオレにとって何の意味もないし。
うわ、と思うだけで、なんか別に……何ていうか、何も感じないっていうか。完全に事故みたいなもんで、さわっちゃった、って感じなだけで。
キス、として認識してないから、別に四ノ宮が怒ることはないんだけどね……。
そういえば、隆先輩にキスされても、ゲイがばれそうとか、そっちの心配とか、全く浮かばなかったっけ……。
「――――……」
……あれ。
もし、あれが四ノ宮とのキスだったら、オレ。どうしてただろ。
あんな風にただ嫌がってるそぶりで居られたかな……。
いや、無理だな。
四ノ宮としたキスだったら、慌てて否定とかしてたような。……意識の違い?? ……そういえば、四ノ宮にも、意識しすぎ、みたいなこと言われたっけ。オレと四ノ宮が仲良くたって、別に誰もそんなに気にしないとか……。
……意識、し過ぎ?
…………意識。
四ノ宮とはそういうことしちゃってるから……だからなんか余計意識しちゃってるっていうのはあると思うけど……。
髪を洗い終えて、泡を流す。
確かにオレ、四ノ宮を意識しすぎかな。
……でも色々あるから、そういうのもバレたくないし。でもバレないか。家で何してるかなんて。だったら意識、しなくていいのかな。
でもなぁ。
隆先輩のキスと、四ノ宮のキスなんて、正直、全然違うし。あえて意識なんかしなくたって、全然違う……? ってなんでだ。
――――……。
ざー、と流れるシャワーを浴びたまま、少し考える。
隆先輩としたキスは、うわ、と思っただけ。
その後、トイレで、四ノ宮に、キスされた時は……動けないようにされたままキス、されて――――……。
ぞく、とした感覚。思い出した。
――――……うわ……やば。緩く反応した自分に、ものすごく焦る。
あれ。なんか……なんでこんなんで、反応すんの。
たまってるっけ……? ……て、そんなこと、無いな。合宿行く前々日も。ていうか、昨日もトイレで、オレ、四ノ宮に。
「……っ」
あ、なんか。思い出してしまったら、ますます――――……。
何で? と思うけど。
出しちゃったほうが、すっきり、するかな……。
恐る恐る、触れてみる。
和希とばかりそういうことしてて別れてから、自分でしようとしても、和希の触れたのがよみがえって、萎えるというか、心が冷たくなって、とても最後までできない日が続いて。
……それも、あって。外に行ったんだけど。
久しぶりに、自分で触れる。
――――……媚薬飲んでホテルに行った時も、オレ、自分でしなかったって四ノ宮に聞いた。あんな状態でもしないとか、自分に呆れたっけ。
……できる、かな。
ただ自分で触れるだけなのに、可笑しいくらいの物凄い覚悟を決めて、ドキドキ、しながら。
集中、してみた。
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