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第407話「何してんの」*奏斗 ※

 自分でするの、本当に、久しぶり。  何も考えないように。和希のことは思い出さないように。 「……っ」  なんか。いけそうかも。  シャワーを流したまま、もうさっさと終わらせてしまおうとしていると。  は、と息が漏れた時。昨日の四ノ宮に触られてる感覚が、ふっとよぎった。  うわ、待って……。  今、四ノ宮を思い出すって……。 『良いよ、出しちゃって』  囁かれる言葉。首筋にキスされる感覚。   「――――…………ん……っ」  ぞく、と震えて。それに焦ってる間に、イっちゃって。  熱を吐き出して、それをシャワーで流し、ながら。 「……は……?」  自分でイけて良かった……とは、とてもじゃないけど言えず。    待ってよ。……四ノ宮でイっちゃったじゃん……。  嘘だろ……。  瞬間的に熱くなった快感が消えていくにつれ。  それを認識して、かぁっと顔に血が集まった。 「……っ」  もうなんか、体をゴシゴシ擦って洗ってから、湯船に沈み込んだ。  顎まで。というか、口元まで、ぶくぶくぶく、と沈み込む。 「~~~~……っ」  最近、四ノ宮にばかり触られてて、それを、イく時に思いだしちゃっただけかもしれないけど……。  ……絶対四ノ宮には言わない。ていうか、言う訳ないけど。  ていうか、もう、思いださない、今の!  忘れよう、オレ。   何してんの、ほんとに、馬鹿じゃないの、オレ。  そのまま頭まで、ぶくぶくとお湯に潜って、少ししてから、浮上。  そのまま、バスタブの縁にもたれて、下に手を伸ばして、俯いた。 「バカ……オレ……」  なにしてンだよ、ほんとに。  ……和希のせいでできなくなって。四ノ宮のこと思い出して、するなんて。  ああもうほんと、何してんの……。  顔が熱いのは、お風呂のせい。……だけじゃない気がする。  もう駄目。  なんか、ダメージが大きすぎる……。  最後に少し冷たくしてシャワーを浴びてからバスルームを出て、髪を乾かして、歯を磨く。  二十二時か……。四ノ宮、遅いなー。  あーでも……十九時過ぎくらいにこっちついて、四人でご飯を食べて、三人送って帰ってたら……もう少しかかるかも、か。 「お疲れさま。眠いから、寝てると思う。運転気を付けて」  四ノ宮宛てにそれだけ入れて、スマホはテーブルの上に。  久しぶりに、自分のベッドに、横になった。  やっぱり寝てないだけあって、すぐに、ウトウトして。  そのまま、寝れそう、と思った。 ◇ ◇ ◇ ◇  もぞもぞ動いて、手を伸ばす。  あれ、居ない……。眠くて眠くて、ぼんやりした中、そう思って。  ふっと、瞳が開いた。 「――――……」  あれ……どこ。起き上がって、すぐ気づいた。……自分のベッドか。  …………今オレ。なんか探す夢、見てたな……。居ないって。  無意識で探してたものを、ちゃんと認識したくなくて、ぶる、と頭を振った。  時計を見ると、二十二時半。……三十分しか寝てないじゃん。  ……あーなんか、目ぇさめちゃったな……。  ため息をつきながら、ベッドから降りて、キッチンへ向かった。  テーブルのスマホを確認。四ノ宮からは連絡がない。  ……遅いな。何してんだろ。  まだ一年皆で一緒に居るのかな。それとも。  笠井は、四ノ宮のことが好きだから。一緒に居たがったりしてる、のかな。  四ノ宮は、男は恋愛対象じゃないって言ってたし。  ……笠井が一生懸命な感じで、四ノ宮を好きなのは、可愛いしな。そういうことになったりする可能性も、ありえるんだよな。  水を一口飲んで、リビングの電気を消したのだけれど。  ――――……。  なんか眠れそうにない。  三十分しか寝てないのに。  オレは、電気を消したままリビングからベランダへの窓を開けた。サンダルに足を突っ込んで投げ出し、窓の桟のところに腰かけた。  帰ったら、連絡あるよな。無いってことは、帰ってないてことだよな?  ……あ、寝るって入れたから、入れてないだけかもしんないのかな……? まあそしたら寝てるかも?  そんな事を考えていたら、なんとなく体育座りみたいになって、そのまま膝を抱えた。少ししてふと、丸まって座んないでっていう四ノ宮の言葉を思い出して、むく、と起き上がった。  そのまま、空を見上げる。  少しだけの星と、月が見える。  ……四ノ宮に会う前は。眠れない時、よくここで、星を見てたっけ。  最近、しなくなってたなぁ、と思いながら、瞬いている星を、眺めた。

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