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第430話「流れるように」*奏斗

「パーティーの間は、オレ、潤くんに遊んでもらうから。オレのことは気にしなくていいからね」  そう言うと、四ノ宮は少し黙って、それから、ぷに、と頬を摘まんでくる。 「奏斗のそういうとこ、好き」 「ん? 何が?」 「誘ったパーティーでほっといたら怒る人も居るだろうなと思うから」  なんだかすごく穏やかに笑う四ノ宮に、瞬きをパチパチしてると、四ノ宮はまた、ふ、と笑ってキスしてくる。 「状況次第だけど、ほんとにあんまり行けないかもしれない。ごめんね」 「……そっちはいいからさ」 「ん?」 「流れるようにキスすんの、やめてくんないかな」  そう言って四ノ宮から少し顔を引くと、四ノ宮はクスクス笑って、オレの頬から手を離した。 「オレ、こんな風にキスしてんの、奏斗だけだよ」 「――すごく、手慣れてるけど」 「なら、奏斗で慣れたんじゃない? ていうか、すごくしたくてしてるから」 「……オレで慣れないでよ」 「誰で慣れろって言うの」 「知らないけど」  コーヒーを飲み終えて前のテーブルに置き、隣にいた二号を何となく膝に乗せる。気持ちいい手触りを、ぷにぷに楽しんでいると。 「潤、奏斗に会うの楽しみにしてるって」 「ん?」 「さっき姉貴から連絡来てた」 「そうなんだ。可愛いよね、潤くん」 「ん。まーね。可愛いけど」 「けど?」 「奏斗のこと、好きすぎ」 「嬉しいけど」  何だか良く分からない仏頂面に、笑ってしまいながらそう言うと、四ノ宮は息をついて、苦笑い。 「奏斗のこと好きな奴はいっぱい居るもんね」 「つか、それは、そっくりそのまま返すけど」  オレは今日も笠井と話して、めちゃくちゃ好きなのも聞いたしな。 「んー? ……まいいや。とりあえず片付けよっか」 「ん」  二人でマグカップとコーヒーのサーバーを洗って、歯磨き等諸々、寝る準備を終える。  寝よ、と腕を引かれて、また一緒に寝るのか、と思いながら。でも今更断るのもなんだかなあと、そんなことをまた思いながら寝室に連れていかれる。    「あのさ、四ノ宮」  でもやっぱり言ってみようと、オレは口を開いた。 「うん?」 「今更って思うかもだけど……オレ、ちゃんと答えずに、こういう風にしてるのは、変だと思うんだけど」 「そう?」 「だって、普通しないと思うし」 「その普通って、何?」  話してる間に寝室について、ベッドの端に並んで座らされる。 「普通って言ったら、普通……」 「んなこと言ったら、オレらの全部普通じゃない気がするけど……でも、それでもオレは奏斗が好きだし、一緒に居たいし」 「――――」 「今まで何度も抱いてて、それも確かに普通じゃないかもしれないけど、でも、別に普通である必要もないでしょ。人それぞれ、皆違うよきっと。『普通』なんて、無いよ」 「――――」  もう四ノ宮って、ほんと……カウンセリング向いてるとかも思うし、詐欺師も向いてると思うし。ホストとか……。  口で勝てる気がしないんだよな。どう言ったらいいんだろうと思っていると、ふと頬に触れられて、覗き込まれた。 「ちゃんと好きって言ってからは、初めて触るんだけど」  四ノ宮がすぐ近くから、オレを見つめる。 ◇ ◇ ◇ ◇ (2023/10/18) 昨日久しぶりに更新…デイリー4位でした🥰 お休みしてる間も読んで頂いてた皆さま( ノД`)ありがとうございました♡

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