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第434話「パーティー開始」*奏斗

 止めた潤くんを、四ノ宮はしゃがみこんで、真正面から覗き込む。 「お前なあ……オレは?」 「だって、ヒロくんはもう見たことあるもんー! 知ってるー」 「いつもヒロくんヒロくん言ってたくせに」  苦笑しながら四ノ宮は潤くんを抱き上げると、「ほら、行くぞ?」と笑った。そうすると、潤くんもまた嬉しそうに笑う。  同じ位置に並ぶと、すごく似てるなぁ、と思う。可愛い。 「奏斗、行こ」  オレを振り返って、目を細める。  何もかもが普通と違く見える、異世界みたいな空間で、四ノ宮だけが辛うじていつも通り。……ただ、いつもの「可愛い」は全くないけど。  四ノ宮と瑠美さんが、オレと並んでた葛城さんを振り返る。 「親父、奏斗のことも、最初に紹介するって言ってた?」 「そうですね、ご家族と一緒に紹介されるそうですよ」  それを聞いて、四ノ宮はオレを振り返って見つめた。 「最初の挨拶の時だけ、オレらと一緒に前に来て? その後は、好きなもの食べたり飲んだりして、楽しんでくれてていいから」 「うん。分かった」 「オレはある程度は知った顔、回んないといけないし、姉貴もそうだから、その間は潤と遊んでてあげてくれると嬉しい」 「うん、了解」  頷くと、瑠美さんも、「よろしくね」と笑う。 「潤は人見知りするから、いつもは葛城に見てもらうんだけど……葛城も、会場とか進行の責任者だから、色々忙しいの」 「慣れなくて心細いので、潤くんに遊んでもらってます」  そう言うと、潤くんが嬉しそうに笑って、オレの方に手を伸ばした。受け止めて抱っこすると、葛城さんもオレに、助かります、と笑う。 「一通り回ったら奏斗んとこ行くから待ってて」 「無理しなくていいよ。珍しいし、楽しんでると思うから」 「ていうか、息抜きに行かせて」 「はは。何それ」 「マジで行くから」 「ん。分かった」  オレが頷いたところで、葛城さんも笑いながら。   「もうほぼ全員揃ってるので、入りましょう」 「……はー。めんど……」  あと四ノ宮がふー、と息をついて。小声でつぶやくと、葛城さんが苦笑して、「二時間、頑張ってください」と言った。「長い……」と四ノ宮が呟いてから。 「……頑張れって言ってくんない?」  くる、と振り返られて、オレは、潤くんと顔を見合わせた。二人で、ふふ、と笑って。 「頑張って」  潤くんと言葉がかぶる。すると、四ノ宮は、ん、と笑顔。 「二時間耐える。……次はもう三十年後とかにしてほしいけど」 「その頃はご自分が企画かもしれませんけどね」  葛城さんの言葉に、四ノ宮は肩を竦める。 「まだ分かんねーし」  ふ、と息をついて、四ノ宮がスーツの乱れを直した。  隣に瑠美さんが並ぶ。スーパー美男美女の姉弟だな、なんて思う。  四ノ宮と瑠美さんが会場に入ると、中の人達が二人に視線を向けた。  社長の子っていうのも知られてるのかもしれないけど、知らなくても目立つに違いない。  その様子を、潤くんと一緒に後ろから見守りつつ、会場の中に入った。葛城さんに案内されて、パーティー会場の奥に進む。  四ノ宮と瑠美さんが奥の一段高い壇上に上がると、四ノ宮のお父さん、それから多分四ノ宮のお母さん、と揃って前に並んだ。すぐに四ノ宮に手招きで呼ばれて、オレも四ノ宮の横に、潤くんと手を繋いで並んで立つ。誰もオレを知らないし、オレを見てないとは思おうとはするのだけれど、でもやっぱり緊張して、背筋が伸びた。  四ノ宮のお父さんから、創立十周年の挨拶がなされて、家族の紹介。四ノ宮も瑠美さんも、慣れているのか、まったく物怖じしてない。  四ノ宮の物怖じしない感じって、こういうとこから来てるのか。と感心していたら、四ノ宮のお父さんの視線がこちらに向いた。 「息子のご友人にも我が社のスーツを着て貰いました。とてもよく似合っていらっしゃると思います」  オレの方を向いた四ノ宮と視線があうと微笑まれて、少しだけ笑い返す。会場の視線が一気にこちらに向いたので、ますます緊張。 「若者向けの部門にも今後一層力を入れていこうと思っています。隣の、孫のスーツは特別仕様ですけどね」  場がクスクス笑いで和む。そのまましばらく挨拶が続いて、乾杯の合図で、パーティーが始まった。  皆が各自、乾杯でお酒を飲んで、それぞれ話し出すと、ようやくオレも力が抜ける。四ノ宮がオレを見つめて笑った。 「お疲れ、奏斗」 「すごい緊張した……」  思わず言うと、「そうだよね」と、クスクス笑う四ノ宮。

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