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第442話「完全武装?」*奏斗
部屋に入ると、大きめのテーブルに色んな料理が並んでいて、少し離れて置いてあるテーブルで、瑠美さんと潤くんが座っていた。
「あ、ユキくん~! これこれ、美味しいから、たべてー」
「うん。チョコケーキ?」
「うん!」
「持っていくから、座ってていいよ」
四ノ宮に言われて頷き、うふふ、と嬉しそうに笑う潤くんの隣に座ると、瑠美さんが笑った。
「今日は本当にありがとうね、ユキくん。潤、すごく楽しかったみたい」
「オレも楽しかったので」
ふ、と笑いあったところで、潤くんに、くいくい、と腕を引かれた。
「ね、ユキくん、今日はここにお泊まりする??」
潤くんの言葉にオレが反応するより早く、ケーキをオレの前に置いた四ノ宮が、オレの隣に座りながら「オレ達は明日も学校だから、無理だよ」と言った。
えー! と潤くんが、眉毛を八の字にして、しょんぼり顔。
可愛いな、と笑ってしまうと、「じゃあまた遊んでね?」と一生懸命な瞳で見られる。頷くと、やったぁ、と喜ぶ潤くん。
そこに葛城さんがやってきて「スーツは着替えて帰られますか?」と聞いてきた。これもまたすぐに四ノ宮が「このまま帰るから、さっき着てた方を持って帰る」と答える。
「このまま帰るの?」
「うん。着替えんのめんどくさいし。そのまま帰ろ?」
四ノ宮がそう言ったのでオレも頷くと、葛城さんは「では袋に入れてきますね」と言って部屋を出て行った。
デザートを潤くんと一緒に食べながら、四ノ宮が食事を軽く終えるのを待って、その後、四ノ宮一家に見送られて、葛城さんの車に乗り込んだ。
なんだか寂しがってくれてウルウルしてる潤くんと、窓越しに握手をして、別れる。車が発進して少しの間は後ろの潤くんを振り返って手を振っていたけれど、それも見えなくなった。屋敷の敷地内を出てから、四ノ宮が苦笑。
「半泣きだし。どんだけ奏斗のこと大好きなのかな、潤」
そんな風に言う四ノ宮に、ウルウル顔を思い浮かべて、クスクス笑ってしまう。
「似てるよね、潤くん。四ノ宮のちっちゃい版みたい」
オレも笑いながら答えると、四ノ宮は少し黙った後で、ふ、と可笑しそうに笑った。
「この話の流れでそれって、奏斗のこと大好きってとこが似てるってこと?」
「……? え。違うよ、何言ってんの。顔が、似てるって言ってるんだよ」
葛城さんが居るのに何言ってんの、四ノ宮。
内心焦りながら訂正すると、分かってるけど、と四ノ宮が悪戯っぽく笑う。
「似てますよね、私も、そっくりだなーと思います」
葛城さんが、会話に入ってくる。
「雪谷さんにはりついてるところも、そっくりだと思いますよ」
クスクス笑って葛城さんが言うと、「張り付いてるって、言い方……」と四ノ宮が笑う。
……冗談だよね? ……うん。ていうか。四ノ宮って。
お父さんとか葛城さんに、オレとのことを何て言ってるのかな。ああ、でも言ってなくても、二人はほんとに鋭そうで怖い。
特に、葛城さんには特に、色々知られてると思うので……余計、困る。
「奏斗、パーティーどうだった?」
話題が変わったので、ほっとして、今日のパーティーを思い起こす。
「んー。とにかくすごかった。四ノ宮の家、豪華すぎてびっくり」
「あの家はひいじいちゃんが建てたんだよ。デカすぎだよね」
「四ノ宮のひいおじいちゃん?」
「うん。オレは会ったことないんだけどね。すっごい豪快な人だったらしいよ。で、じいちゃんが跡を継いで……」
「おじいちゃんは?」
「もう亡くなったけど。じいちゃんは結構厳しかったかなあ。昔は色々教え込まれたし」
「そう、なんだ」
「ん。……まあ、じいちゃんが厳しかったその反動で、親父があんな感じなのかもだけどね」
そう言ってクスクス笑いながら、四ノ宮はオレを見つめた。
なるほど。
……あの自由な感じに、少し納得がいったような気がする。
「パーティーは? つまんなくなかった?」
「潤くん居たし、色々珍しくて、楽しかったよ。四ノ宮もいつもと違うし、面白かった」
なら良かった、と四ノ宮はほっとしたように笑う。
「一緒に来てくれて、ほんとありがとね。オレ、いっつもパーティーなんて、大っ嫌いなんだけど」
「今日は本当に楽しそうでしたね、大翔さん」
葛城さんが可笑しそうにクスクス笑ってる。
「四ノ宮って、いつもどんな顔してパーティー出てるの?」
「んー。……完全武装モード?」
「何それ」
笑ってしまいながらも、ちょっと想像できるような気がしてしまう。
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