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第449話「決意」*奏斗
は、と、息をついた。
周りを確認して。スマホを取り出して、小太郎に電話をかけた。
『あ、ユキ? もう来れそう? もう皆来てるよ』
「小太郎、ごめん、今日無理になっちゃった。明日参加するから。……ごめんね?」
『あ、そうなの? ん、分かった。皆には言っとく。明日待ってるから』
小太郎は何も聞かず、そう言ってくれた。多分何か悟られてる気がするけど、言い訳しなくてすんでありがたかった。
すぐに電話を切って、オレは、俯いた。
そのまま、また頬杖をついて、ぼんやり窓の外を見つめる。
しばらくして、冷めたコーヒーを一口飲んだ。それから、肘をついて、額に手を当てて俯いた。
あーあ……。
オレ、四ノ宮のことが、好き、なのか。
どうして離れられないんだろうって思ってたけど……そういうことか。
和希のとこで気づくとか。
……ばかだなーオレ。
はー、とため息とともに、頬杖をついたまま、瞳を伏せる。
ため息をついたら、吸えばいいって言ってたっけ。
でも今は吸う気にも、ならない……。
喫茶店で、どれだけ延々考えても、ひとつの結論にしか辿り着かない。
オレはもう、覚悟を決めて、四ノ宮とのトーク画面を開いた。
「今から、四ノ宮んとこ行って良い?」
そう入れたら、すぐにぱっと既読がついて、返事が来た。
『良かった、既読つかないからどうしたのかと思った。帰ってくるの? 勉強会は?』
「ごめん。話があるからそっち行く。いい?」
『いいよ。待ってる。迎えに行く?』
「ううん。すぐ帰るから。待ってて」
何時間居たんだろ、喫茶店。
入ったのは十三時くらいだったけど。四時間くらい居たのか……。
最初からほぼ出ていた答えを、確定させるのに、いったいどんだけ悪あがきしたんだ。
オレは早歩きで、マンションまでの道を歩く。でもだんだん、その足も遅くなっていく。
今考えていることを、四ノ宮に言うのが嫌で。
ため息しか、出てこない。
最後の方は、もうほんと、めちゃくちゃ怪しいくらいに遅く歩いていたのに、遂にマンションについてしまった。
いっそ、つかなくて良かったのにと思う自分に呆れながら、自分の部屋に帰り、預かった四ノ宮の部屋の鍵を手に取った。
隣のインターホンを鳴らすと、鍵が開いて、ドアが開いた。
「奏斗、おかえり」
「うん」
「すぐって言ってたのに全然来ないから、迎えに行こうかと思ってた。どしたの? 平気?」
「あ、うん……ごめん」
「無事ならいいんだけど……入って?」
「四ノ宮、オレ、話がある」
「ん? いいよ。中で聞くよ」
言われて、玄関に足を踏み入れた所で、止まった。
「ここで話すよ」
「ん。いいけど」
四ノ宮もサンダルのまま、オレの方を振り返る。二歩前に出ると四ノ宮に触れてしまいそうなので、玄関のドアギリギリに立つ。
「何?」
「……ん、あの――――」
なにから言おう。
……考えてきたのに、少し頭が白くなる。
「あの、ね、最初に結んだ協定はもうやめよ?」
「ん?」
四ノ宮が一瞬首を傾げてから、いいけど、と頷く。
「ゲイなの隠してもらうかわりに、お前は、オレになんでも言う、とか話したけどさ、もうオレ達、平気な気がする。四ノ宮、ゲイだとか言いふらすような奴じゃないのは分かってるし、四ノ宮の方も、今は外で見ても胡散臭いって思わなくなった。すごくイイ感じで、言いたいこと言えてる気がする……王子っぽいとこは、ちゃんと表にも裏にもあると思うし、協定はいらないよね?」
「うん。……それはいいよ」
「オレね、今日、和希に会ったんだ」
四ノ宮は目を少し大きくして、オレを見つめる。しばらくしてから、「そう、なんだ」と呟いた。
「オレ、四ノ宮と居る間に、すごく、大丈夫になったみたいで……四ノ宮に話せたのが、良かったんだと思ってる。……今度ちゃんと会って話そうと思う」
「ん……それで?」
「それで……感謝してる。オレ、お前のこと、人としてすごく好きだと思う」
「――――」
止まらないように。
一生懸命、言葉を紡いでいく。
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