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第453話「一歩」*奏斗
大地はいつも通り元気そうで、夏休みどう過ごしていたとか、そういう話をしばらく話していたけれど、ふと少し口調を変えた。
『カナ先輩……あの来週の月曜なんですけどね、部活の皆で集まろうってなったんですよ。卒業した先輩とか、オレの代も来るって』
「あ、うん。……そうなんだ」
『それで……カズ先輩も来るって』
「……うん」
『カナ先輩。来てみたらどうですか? カナ先輩が来たら、皆すっごく喜ぶと思います。もちろん……今回じゃなくてもいいんですけど』
そんな誘いに、とりあえず保留にさせてもらって、しばらくの間、色々考えた。
もしも、その集まりに行くとするなら、和希と話してからじゃないと無理だと思う。――――和希と話ができるのか、どうか。
すごく考えて出た結論は。
四ノ宮を好きだと思ってる今なら、会える気がするってことだった。
それでも、嫌にドキドキしながら、覚えている和希の電話番号に電話を掛けた。何コールか鳴って、もしかして知らない番号だと出ないかなと、思った瞬間。
『もしもし』
和希の声、がした。結構経つのに、聞き慣れてる、と思ってしまう声。
「和希?」
『……カナ?』
「うん。――今、平気?」
『平気だよ。ありがとう、電話……』
「うん」
少しの間、沈黙が流れる。
「……あのね、オレ、和希と会って話したいんだけど、いい、かな?」
『ん。会おう。カナ、いつがいい?』
すぐに返ってきた穏やかな声にほっとして、スマホを握っていた手から少し力が抜けた。
「部活の集まりの前でもいい? オレ、ずっと出てなかったんだけど、もし行けそうなら、そのまま集まりも出たい」
『もちろんいいよ。もし、オレが居ない方がいいなら、オレは行かないから。カナは出て。皆喜ぶと思うから』
「――――」
『オレのせいだよな。ずっと、カナがそれに出てなかったのも』
「……それも、会った時、話すよ」
『分かった』
待ち合わせの時間は、部活の集まりがある駅の喫茶店で、一時間前。
そう決めて、電話を切った。
変にドキドキしていた心臓が、やっと、落ち着いた。
――――大丈夫そう。オレ。
変なドキドキはあったけど。前みたいに、感情がコントロールできなくなったりはしない。手が震えたり、泣きそうになったりもない。
立ち尽くして電話していたことに気づいて、ソファに座った。
大地に、和希に会ってから大丈夫だったら行くかもって言っとこ、と思いながらスマホに触れると、ふっと、四ノ宮を思い浮かべた。
和希とちゃんと話せそう。
これは絶対、四ノ宮のおかげだと思う。
そう言ったらきっと、喜んでくれたかな、なんて思う。
今更、そんなこと、言える訳もないけど。
四ノ宮って……今、何考えて生きてるんだろ。
毎日、何してるんだろ。
オレには、気にする権利もないかもしれないけど。
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