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第454話「いろんな笑顔」*奏斗

 四ノ宮と離れてからの毎日。  オレは、誰かと会って、時間を潰して、なるべく四ノ宮とのことは考えないようにしていた。  それでも、一人になるといつも、思い出して。  離れるまでの数週間、ずっと四ノ宮と居たからかな。  いつまで、こんな風に想うんだろう。  こんなに離れても、四ノ宮を好きな気持ちは、なかなか薄れててはくれないみたい。  離れていると、恋しい、というか、会いたいな、と思う気持ちが募るからなんだろうか。なんだかますます好きになってしまっているような気がする。  ……四ノ宮はもう、忘れてるかな。オレのことなんか。  ていうか、あいつのことだから、夏休みなんかもう、モテモテで誘われて、色んな人と会ってる気もする。  オレのことなんて、もしかして、「馬鹿なことばっかするし、手間かかるし、めんどくせーし、何が好きだったのかもすでに謎。離れられてよかった」とか、思ってるかな? 思ってそうな気も、する。  ……うわー、なんか、ムカつくなー……。  四ノ宮の、眉を寄せた嫌そうなしかめっ顔、想像したら、ふ、と苦笑いが浮かんだ。 「――――しのみや……」  あの日以来、呼んでいなかった名前を、ゆっくり、口にしてみる。  ……今、幸せで、居てくれてるかな。  オレのこと、もう本当に忘れてくれていい。  ――――誰と何しててもいいから。笑っててくれると、いいな。 「――――……」  離れてから、余計に四ノ宮の笑顔ばっかり、浮かぶ。  皮肉っぽい笑い方とか、可笑しくてしょうがないって笑い方とか、しょうがないなーて笑い方とか。  優しかったり。すごく、嬉しそうな笑顔……とか。  一緒に居た時はこんなに好きだとは、思ってなかったのに。  まだここまでなんて、分かってなかったのに。  離れてから、ますます思い知るなんて、思わなかった。 「――――」  そこで、ふっと気づく。  また膝抱えてた。やめやめ! 四ノ宮に注意され――――。  立ち上がりながらそこまで思って、ああもう、注意されることもないんだな、と思うと。  なんだか、胸のあたりが痛い気がする、けど。  でもこれは、しょうがない。  四ノ宮の幸せは、守りたい。オレの相手なんか、これ以上させられない。  そう決めると、四ノ宮のことを考えるのはやめて、大地の番号に電話をかけた。 「あ。もしもし、大地? あのさ、今、和希に電話して……」  オレは大地に、和希とのことを伝えて、もしかしたら集まりにも行くかも、と伝えた。  大地は、やたら嬉しそうで。  要らない心配、ずっとさせてたんだなと、苦笑が零れた。

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