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第459話「幸せ」*奏斗

「それに、絶対カナも、四ノ宮さんのこと、好きだし」 「……何で」 「だからカズくんのこともふっきれたし、父さんと話す気にもなれたんだろうし。四ノ宮さんが居てくれて、良かったね」 「――――それは……うん。そう思う」  真斗には嘘がつけず、枕をぎゅーと抱き締めながら、そう言って、頷いた。 「そういうどうしようもないことが気になってしょうがない、カナみたいな人って……何も考えず、突き進んではいけないの?」 「――――もう、付き合えないって断って……突き進むの、やめちゃったからね」 「つか、いいの? それで」 「いいのも何も……それしかないと思ったし」 「いっぱい選択肢あるのに。カナ、自分の気持ち、大事にしなよ」 「真斗って、オレのお兄ちゃんだっけ……」 「カナって、恋愛に関しては、臆病すぎなんだよ。あ、それ以外のところは、なんとなく、カナがお兄ちゃんだよ?」 「なんとなくって……」  もーいいよ、と苦笑しながら、仰向けに転がった。 「四ノ宮を幸せに、できたら、良かったんだけど」 「……もーカナ!」 「え」  がば、と起き上がった真斗に、両頬に手を当てられて、ぶにっと潰される。 「ぁにすん……」 「カナが幸せになれることをしてよ。四ノ宮さんをとかじゃなくてさ。……ていうか、カナが幸せで、そしたら相手も幸せっていうようなのが絶対イイから!!」 「――――ん」  じっと真斗と見つめ合って、言われたことを考える。  ――――オレが幸せで、そしたら、相手も幸せ、か。  うん、と頷くと、真斗の手が外れた。二人で布団の上に起き上がると、「カナはほんと、恋愛ももっとポジティブに、だよ」と、ちょっと怒られる。 「イイこと言うね、真斗」  なんか本当にそう思ってしみじみ見つめてたら、真斗は呆れたように苦笑い。 「もーほんと……かわいそ、四ノ宮さん」 「え?」 「ゲイじゃないに、カナのこと好きになってくれて、好きって言ってくれたんでしょ? なのに、カナの方は好きなのに離れるとか。オレなら意味わかんないし。……あ、まさか好きって言ってないの? もしかして」 「言ってない」  オレが言うと、真斗はがっくり項垂れて、それから、また仰向けに転がった。 「あのさあ……カナ」 「ん」 「もう今から行って、好きって言って、まだ好きで居てくれたら、付き合っておいでよ」 「できる訳ないし」 「なんでだよ」 「……できないよ」  膝を抱えて、そのまま、膝に顎を押し付けていると、真斗は苦笑い。 「四ノ宮さんの電話番号教えて」 「無理」 「何でだよ」 「かけるでしょ」 「当たり前!」 「だめ」 「もー……じゃあ自分で言いなよ」 「……言わない」 「何で?」 「……だって、四ノ宮、幸せにできる気がしないから」 「だから……」  そこまで言って、真斗は、はあ、とため息をついた。 「カナに、幸せになってほしいからね、オレ」 「ん。ありがと」  ふふ、と笑って、「オレも、真斗に幸せになってほしい」と言うと、真斗は「それはこっちも一緒」と苦笑。 「考えすぎて、幸せから逃げるようなこと、しないようにね」 「――――ん……」  ほんとどっちが兄かわかんないなと、オレは苦笑しながら、頷いた。

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