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第471話「くれるなら」*奏斗

 それからしばらく。  何だか肩を掴まれる感じのままで、四ノ宮は、オレの肩から顔を上げない。 「……四ノ宮?」   小さく、呼んでみる。 「……ん?」  返事はするけど、まだ顔を上げない四ノ宮に、ふ、と口元が綻んだ。 「……あのさ」 「ん」  顔、上がんないけど。  もう言ってみることにした。 「オレと付き合って。……ずっと一緒に居たいって思ってくれるように……頑張るから」 「――――」  今度は返事もなく、ますます固まってた四ノ宮が、数秒後、顔を上げて、オレを見つめる。  めちゃくちゃじっと、見つめられて。 「いまのもう一回。オレの顔見て言って?」 「え? あ、うん。分かった」  何だかあまりに真剣な顔なので。  ふ、と、笑ってしまう。  ……オレの方がほんとは。  一生懸命、言ってるんだけど。 「オレと、付き合って? ……ずっと一緒に居たいって思ってくれるように、頑張るから」 もう一度、同じ言葉を言い切ると、真剣な顔で聞いていた四ノ宮は、嬉しそうに微笑んだ。 「頑張んなくていいよ。そのまま、居てよ。……つか、今オレ、奏斗に、付き合ってって、言われたの?」 「……何その質問……言ったよ?」  なんかめちゃくちゃ顔近い。オレが頷くと。 「すげー嬉しいんだけど。付き合うに決まってるし」  めちゃくちゃ嬉しそうに笑って、四ノ宮はそう言った。   すごくほっとした瞬間。頬に熱い手が触れた。 「今からもう、オレので、いい? 奏斗は色々心配してるけど……オレ、今更無理なことなんかないと思うし。離さないよ?」 「……うん」 「オレ、嫌ってくらい側に居るよ?」 「嫌って、言わないし。オレ、四ノ宮が側にいるの、嫌って思ったこと、ないよ」 「んな可愛いこと言ってると、離さないからね」 「うん。それが、いい」  そう言うと、四ノ宮は、ニヤ、と笑う。 「後悔しないでね?」 「後悔って?」 「オレ、初めてだから」 「なにが?」 「こんなに、人を欲しいと思うのも、好きだって、思うのも」 「――しないよ。後悔なんて」 「……そっか。ん。分かった」  妙な確認みたいなのを終えた四ノ宮は、じっとオレを見つめて、それから、ぎゅっとオレを抱き締めて。  それから、ひょい、と抱き上げた。 「え?」 「いますぐオレのにする」 「え……待って、靴……っ! 鍵もかけてないし」  焦って言うと、家の中に進もうとしてした四ノ宮に、なんだかものすごく嫌々、玄関に降ろされた。  鍵をかけながら、ちょっと振り返ると、四ノ宮は「ん」と腕を開いて、オレを待ってる。 「――――」  オレが靴を脱いで上がると、四ノ宮がオレを、ぎゅっと抱き締めた。 「オレに奏斗、ちょーだい」  まっすぐ見つめられてそう言われて。  ふ、と笑ってしまいながら。 「……四ノ宮も、くれるなら。いいよ」  そう言ったら、四ノ宮は、嬉しそうに微笑んだ。 「つか、オレはもう、最初から全部あげてるようなものだったと思うけど」  笑う四ノ宮のキスが重なる。 「……ん……」  息、出来ないみたいなキスが、長く続いて。  急激に熱くなった息をついた瞬間、またひょい、と抱き上げられた。 「わ……」 「シャワー、浴びよ」  笑み交じりの優しい声。  ぎゅ、と首にしがみついて。ん、と頷いた。

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