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第474話「吹っ切れた」*奏斗

「……なんか、嘘みたい。奏斗がここに居てくれてるの」 「オレもそう思う」 「だってオレ、ここも引っ越そうと思ってたし」 「うん……」 「さっきさ、和希のこと好きじゃないって聞いて、それならって一瞬思ったんだけど……それでもオレと付き合うってならないのは、オレのことをそういう意味では好きじゃないからだと思ったからさ……。やっぱり、諦めないとって思ったし」 「オレも……最後の最後まで、離れた方がいいって思ってたから……」 「――――オレ、泣くとか超カッコ悪い」  苦笑いの四ノ宮を見つめて、ん、と考えてから。 「ていうか、オレは何度も泣くとこ見られてるけど」  自分で言いながら苦笑してしまう。 「でも、オレ、さっき、四ノ宮を泣かせたくないって思ったのが決め手だったから……」 「んー……じゃあ泣いたの、ありかな……」  クスクス笑う四ノ宮に、「泣かせてごめんね」と見上げると。 「やっぱ、恥ずいから忘れて」  四ノ宮は苦笑してそう言うと、ちゅ、と唇にキスしてくる。 「あの時も……」 「ん?」 「付き合えないって帰る時もさ、四ノ宮が最後、オレを見ずに俯いてて……あれ、すごく辛くて……」 「……ん」 「あんな顔、させたくないのにって、ずっと思ってたから……」  そう言うと、四ノ宮はじっとオレを見つめた。 「離れてる間、オレのこと、考えてた?」 「オレ、毎日出かけようとして予定入れてて……でも、いっつも、考えてた。むしろ離れてからの方が、好きだって、思って……」  そこまで言ったところで、ぎゅ、と抱き寄せられる。 「それはオレもかも。……振られたんだからすっぱり諦めようって、思っててさ。今までならすぐ割り切って、忘れてたはずなのに、全然忘れられなくて、ほんと困ってた。つか、分かるでしょ、あのお土産。あれ、まとめて買ったんじゃないからね。奏斗を思い出すたび、だから。自分でもちょっと、買っても渡せないかもなのに気持ち悪いかなって思ってたけど」  なんて言って、四ノ宮が笑う。 「でも、オレも……四ノ宮にお土産買った」 「え。そうなの?」 「渡すつもりなかったけど……なんか、ずっと、四ノ宮にお土産買おうかなって考えてるから……もう考えてるの嫌になって、買ってすっきりしてたんだけど」 「何その理由」  四ノ宮はクスクス笑って、オレの頬に触れてくる。 「……でも買っても、今度は、きっと渡せないのにって思って、また気になるし」 「どっちにしてもずっとオレのこと、考えてたってこと?」 「――――……」  ……考えない時もあったけど、それは考えないようにして、人としゃべってた時だけで……。 「一人の時は、ずっと考えてた、かも……」 「そんなだったのに、ついさっきまで、離れようとしてたんだね」  四ノ宮は、オレの両頬を、ぶにぶにと潰してくる。 「……ごめん」  一瞬、「だって」と言おうとしたけど。  四ノ宮はクスクス笑って楽しそうに頬に触れてるから、ただ、一言。それだけ言うと。 「ん。もういい」  そのまま引き寄せられて、ぎゅ、と抱き締められる。腕の中から、至近距離の四ノ宮を見上げる。 「オレも、奏斗としばらく離れたから、余計本気で好きだったって分かったし」 「――――……」 「あの時にもしオッケイ貰えてても、奏斗はきっとずっと迷ってたと思うんだよね。オレと付き合ってていいのかな、とか、ずっと言ってそう」  そう言われて、確かにそうかもしれない、思う。 「自分で色々動いてさ。……それでもオレが好きって、思ってくれたならもう、吹っ切れたでしょ?」 「……ん」 「もう、色々全部吹っ切ってさ。オレとずっと居てよ」  四ノ宮をじっと見つめて「うん」と頷いた。 「オレは奏斗が好き。幸せにしたい。……笑っててほしい」 「オレも、そう」  まっすぐな言葉に、頷くと。 「オレのこと、好き?」 「うん。――――好き、四ノ宮」  確認するみたいに聞かれて、まっすぐ見つめたまま答えると。  ふ、と優しく緩む瞳。  優しく重なってきた唇が、触れるとすぐに深くなった。四ノ宮の手がうなじに回ったと思ったら、ぐいと引き寄せられて、舌が絡んでくる。 「――――……っ……ン」  口の中、余すことなく舐められるみたいな、激しいキス。  熱くなるにつれて、どんどんたまらなくなって。  四ノ宮の裸の背に手をまわして、ぎゅ、としがみついた。    

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