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第477話「甘い恋」*奏斗

◆ここまでありがとうございました。最後のページです。 Xでは完結の宣言をしていたのですが、投稿サイトでは何も書いていなかったので心構え(?)を🥰 少し長いですが、切らない方が良いかと思うので。このまま置きます。 大翔と奏斗。たくさん応援してくださって、本当にありがとうございました。 次のページに後書きを書きます。今後の二人について、とか、お願いとか。 読後のお邪魔にならなければお読み下さい。しばらく残すのでお好きな時に。 では。どうぞ✨ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇  何か白い世界に立ってる。名を呼ばれた気がして振り返った。  ……誰? 「奏斗」  聞こえてくる、優しい声の方に向かって、歩く。  和希が初恋で、ずっと一緒に居て、ずっと幸せで。  もうあれ以上、好きになれることなんて無いと、思ってた。  あの年月と気持ちを、超えられるほど好きになれる奴なんて居ないと思ってた。  だから、もう恋なんかしないって、決めてた。  でも、今、オレはこの声でオレを呼んでくれる人のことが、すごくすごく、大好きでたまらない。 「奏斗、おいで」  笑顔で、オレを待ってるのは。  「四ノ宮」  駆け寄ったら、抱き上げられる。 「うわ……」 「奏斗」  そっと、キスされる。  オレを抱き上げた四ノ宮は、白のタキシードを着ていて、まるで、王子様みたいに、見える。  映画のワンシーン、みたい。  何これ――。  思った瞬間、目が覚めた。目に映るのは、暗い部屋の天井。月明かりがカーテンの隙間から漏れてる。  夢だったと悟って、しばらく、固まる。  ――何て夢を見てんの。オレ。  ふ、と笑ってしまいながら、抱き締められていることに気づいて、見上げる。……珍しい。寝てる。  じっと顔を見つめて、今の夢を思い起こす。  バカみたい、オレ。王子様みたい、だって。  苦笑しながら、四ノ宮の顔を、じっと、見つめる。  ……ほんと、綺麗な顔。王子様ってあだ名がつくのもほんと分かる、なんて思いながら、しばらくそのまま。 「――――」  ホテルで見られてから。  ……すごく、色んなことがあって。  四ノ宮が、ずっと、オレの側に居るようになって。  いつの間にか。大事になってて。一緒に生きていくことを、決めたけど。    夢の中で、タキシードを着せるとか、もう笑っちゃうよね。  四ノ宮と、結婚したいのか、オレ。――なんだかな。もう。  そんなこと思いながら、眠っている四ノ宮の顔を見つめていると、ふ、と顔が綻んでしまう。 「四ノ宮……すっごい好きだよ」  声にならない位の声で呟いて、そっとそっとキスした瞬間。  がば、と覆いかぶさられて、驚く間もなく深く唇が重なってきて、めちゃくちゃキスされる。 「……ん、ン……ッ?」  びっくりしたまま受け止めて、少しして離された。は、と息を吐くと、目の前の、形の良い唇が、ニヤ、と笑んだ。 「起きてる時に言ってよ。寝てたらもったいない」 「……っ起き、てたの?」 「奏斗の声で起きた」 「……っ」  なんだか、とてつもなく、恥ずかしい。  けど。なんだかすごく、優しい瞳で見つめられて頭を撫でられて、何も言えないでいると。 「愛してるよ、奏斗」  そう言われて頬にキスされる。  その言葉を噛みしめながら、ゆっくり頷く。 「オレね、四ノ宮」 「うん」 「ずっと、一人で生きてくって決めてたけど……あれは、全然平気じゃないのに強がってただけだったの、今は分かってる」 「ん」 「でも、今はもう色々解決できてきたしさ。オレ、今度こそちゃんと自分で立てると思うし、誰かに頼らなくても平気になってきたと思うんだけど」 「――ん。頑張ったよね、色々。オレと離れてる間に自分で全部」 「自分でって言っても、四ノ宮が居てくれたから、そうしようって思えたんだけど」 「ちゃんと奏斗が、頑張ったよ」  よしよし、と撫でられて、ふふ、と笑ってしまう。   「でもね、四ノ宮。オレ、一人でも頑張れると思うけど」 「うん」 「四ノ宮に、オレと一緒に居てほしいって思う」 「奏斗……」 「ずっと居たい。頼るとかじゃなくて……四ノ宮と、笑ってたいなって思う」  そう言うと、四ノ宮は嬉しそうに微笑んだ。 「つか、居るに決まってるじゃん」  すっぽり抱き締められて、なんだかたくさん撫でられる。 「……四ノ宮」 「ん?」 「――――」 「……何? 奏斗」  くす、と笑って見つめてくる、優しい、瞳。   「オレも、愛、してる」  めちゃくちゃ恥ずかしいけど、頑張って、そう言ったら。  四ノ宮は、少し瞳を見開いた後で、すごく嬉しそうに微笑む。  こっちまで、なんだか涙が出そうなくらい、嬉しくなって。  四ノ宮の首に腕を回して抱き付いて、唇を重ねさせた。  背中に触れてくれる手が、今までもずっとそうだったように、暖かくて優しくて、心地いい。  キスしてる四ノ宮の伏せた睫毛すら愛しくて、想いが溢れだしそうで、どうしたらいいのかよく分からない。  二人で幸せになれるように。  この手が優しいままで居てくれるように……大事にしたいって、思う。 「大翔……」  キスの息継ぎに少しだけ離れた唇の間で、初めて名を呼んでみたら、四ノ宮はすごく驚いた顔をしてオレを見つめてから。 「奏斗が可愛すぎて、オレ、倒れるかもしれない」  そんなことを言ってクスクス笑いながら、また唇を触れ合わせてくる。  ちゅ、ちゅ、と何度も軽くキスされて、くすぐったくて、笑ってしまう。 「可愛いのは、そっち」  と言ったら。 「は? オレ可愛くないし」 「オレ、離れる前とか、最後の方はずっと可愛いって思ってたし」 「え、待って。可愛いって嬉しくないような」 「オレには可愛いっていうじゃん」 「だって奏斗は可愛いし」 「四ノ宮だって可愛い」  そう言うと、四ノ宮は、ふ、と笑った。 「あれ。四ノ宮に戻ってる。大翔って呼ぶんじゃないの?」 「……恥ずかしいからたまに呼ぶことにする」 「はは、何それ」  クスクス笑う四ノ宮に、ぎゅ、と抱き締められる。 「やっぱり可愛い」  言いながら、唇が深く重なってくる。  四ノ宮だって、絶対可愛いもん。  でも、カッコいいし、頼りにもなるし、色気あるし。なんかずるいな。って、一人でのろけてるみたい……。   「……奏斗……」  キスの間で、四ノ宮がオレの名を呼ぶ。なんだかもう、胸がきゅんとする。    ――――初恋よりも、甘い恋なんて。  そんなの、絶対できないと、思ってたのに。  四ノ宮のことが、大好きすぎて。  くすぐったいくらい、甘い感情が、胸の中に溢れてる。 「四ノ宮」 「ん」 「……好き」 「うん……そこ、愛してる、じゃないの?」  クスクス笑う四ノ宮に。 「それも恥ずかしいから、たまに言う」  そう言うと、ん、と頷いて、「たまに言ってくれるんだ」と嬉しそうに微笑む四ノ宮。 「愛してるよ、奏斗」  囁かれる優しい言葉と、背中に触れる暖かい手。  触れてくる優しいキスに、オレは、ゆっくり瞳を伏せた。   -FIN- 「初恋よりも甘い恋なんて」

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