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番外編【諦めるか否か】大翔side 4

 別に家族と話したからって、状況が変わったわけではない。  オレは奏斗に振られたし、奏斗はもしかしたら今、和希と居るかもしれない。それは変わらない。  でも……少しだけ、吹っ切れたのは確かだった。  オレは奏斗が好きだった。  今も、奏斗が好きだ。  親父や姉貴が言うように、一度振られたくらいで諦めない、とか。  それが、奏斗を相手にするときに、良いのか悪いかは、分からない。  だからもう一度、迫ろうとか、そう言うのを決めたわけではないけれど。  でも。  ……やっぱりオレは、好きだな、と確信したというか。  別に振られたからって、好きがなくなる訳じゃないと、思った。  無理に忘れなきゃとか、逆に思い出さないようにしたいとか。  そんなの考えなくて良いんじゃないかと、思った。  奏斗に会いたいな。  ……会っちゃだめだと思って、ひたすら避けたままこっちに来てしまった。  ――――奏斗のことだから、きっと。  振ったからって、もうどうでもいいとか、そんな風にオレのことを想うわけがないってことを忘れてた。……人が好いんだから、あの人は。  きっと、気にしてる。振ったオレのこと。  ……元気にしてるかとか、思ってるに違いない。  会いたいな。  会ったら、話せるだろうか。多分、無視したりは、しないと思うけど。  避けたりも……出来なそうだけど。 「ねーヒロくん!」 「ん?」 「向こう連れてって―」 「おっけ」  今日は潤と、何回めかの海に来た。  結構、焼けたかもな。  潤を大き目の浮き輪に入れて、その端に捕まったまま浮いていると、潤に遠くを指さされた。  浮き輪に捕まったまま、バタ足で、潤の言った方に進む。 「ねー、ヒロくん」 「ん?」 「どうやったら、おっきくなれる?」 「ん?」 「ヒロくん、おっきいでしょ」 「ああ、背?」 「うん」  じー、と真剣。 「背が高くなりたいのか?」 「うん」 「んー。好き嫌いなくちゃんと食べて、運動、かな。あとよく寝ること」 「えー……ブロッコリー食べないとダメ?」 「うーーん……ブロッコリーだけ食べなくても、背には関係ないけど」 「じゃあ食べなくてもいい?」 「でもそういうこと言ってると、食べないもの、増えてくんじゃねーの?」 「んーーんーーんーーんー」  ものすごい仏頂面に、ぷは、と笑ってしまう。 「そんな嫌い?」 「うん……なんかもそもそするのー」 「ああ……」  クスクス笑ってると、真剣らしい潤がちょっと怒ってオレを見る。 「どーして笑うのー」 「ごめんって。……そういえば、ユキくんは、ブロッコリー食べれるけど」 「え」 「好きだったよ?」 「…………」  うーんうーんうーん、と悩んだ後。 「今度食べてみる……」  と、決死の覚悟っぽく言う潤。  ふ、と笑ってしまう。 「……そんな、好き? 奏斗のこと」 「うん! ヒロくんは?」 「……オレも。奏斗、大好きだよ」 「そうだよねっ」  満面の笑顔。 「世界で一番、好きだよ」  オレがそう言うと、「えっそうなの?」とちょっとびっくりした顔をしている。 「うん。そう」  そっかー、と潤が考えてる。なにを考えてるんだろうと思っていると。 「潤は、ママが一番好きだけど―……パパも好きだし……うーん……」 「……はは。そっか」  なるほど、まだ「ママが一番」か。  可愛いな。 「でも潤もユキくん、大好き―」 「そっか。だよな」  よしよし、と潤を撫でると、嬉しそうに笑う。  潤といると和む。……来なきゃ良かったと思っていたけど、むしろ、旅行に来て良かったかも。  ――――皆と話した後は、出かけるのについていくようにしているけれど。  綺麗な場所や、美味しいもの。  奏斗に見せたいとか、食べさせたいとか。ずっと奏斗が浮かんでくる。  土産にできる物はついつい買ってしまう。……渡せるか分かんないし。こんなに買っても受け取らないだろうし、それも分かってるけど。  ……奏斗の笑顔を、思い出す。  会いたいな。  夜一人になると、思い出す。

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