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番外編【諦めるか否か】大翔side 12

 ゆっくり歩いているけど、マンションが少しずつ近づいてくると何だか焦ってくる。 マンションについてしまったら、前みたいに、どっちかの家に、なんて今は無理だろうし。この機会を逃したら、またしばらくは話せないかも。  なんだかな。……あと何を話せばいいんだろ。  とりあえず誤解は解いておきたい。オレが奏斗と居たのが、勘違いとかじゃないっていうことは伝えるか……。そう思って、言いたいとまず思い浮かんだことを話し始める。 「奏斗があの時言ってたことなんだけどさ――――始まりからおかしくて、変に関係持って、一緒に居すぎたから勘違いしたって言ってたじゃん? あれね、色々違うんだよね。オレが奏斗を意識したのはもっと前でさ」  なんかオレ――――……ほんと全部、言わないと、て必死な感じ。  ……あんまり必死に言っても、奏斗には重いかなと、思いながら、一応続ける。 「随分前に、ゼミ室で奏斗が相川先輩達と話してるのを聞いちゃったんだけど……オレのこと、ほんとに王子かって疑うみたいなこと言ってたんだよね。何でそんなに話もしてもないのにバレたんだろうって、ほんと驚いてさ。……それから、奏斗のこと、ずっと気になってて……それから、奏斗のゲイがバレたホテルね。これ、ずっと言えなかったんだけど。……ひかないでね?」  思わず、前置きしてしまったオレに、奏斗はやっと、「……うん?」と返事をした。 「あの時、ほんとはクラブを出るところで奏斗を見かけたんだよ。それはほんとに偶然だったんだけど……奏斗をっていうか、すごく奏斗に似た奴って思って……それが男と並んで出て行くのを見て、オレ、わざわざついて行ったんだよね。偶然ホテルの部屋の前で会ったんじゃなくて、クラブから後をついてって、その二人が取った隣の部屋を取って、急いで後を追ったんだ。あん時は、オレのことを疑うような先輩が、男とホテル行くとか信じたくなくて。違うって確かめたくて、ついてったつもりだったんだけど……」  言ってたら、なんだか可笑しくなってきて、最後の方、少し笑ってしまった。ほんとオレ何してたんだろ最初から。と、少し呆れる。 「おかしいよね、普通そんなんでついて行かない。……今思えば、やっぱりオレ、奏斗のことが好きだったのかも。ホテルで会った後、協定結んだ時もさ、素のオレのことを四ノ宮らしい、とか言っちゃうしさ。……オレにとっては、多分最初から特別だったんだと思う。だから、別に、一緒に居たから勘違いして、特別になった訳じゃないんだよ」  ……多分今オレが言ってること。  奏斗的には全部初耳で。きっと、今、すごく困惑してるんだろうなと、思う。  オレが振られたのも伝えた上で、オレの家族たちが言っていたことも隠すことなく、そのまま、奏斗に伝えて。  ……オレは、これを言って、奏斗に何が伝えたいのか。    とりとめなく、奏斗に言いたかったことを、あまり返事がこない状態で話し続けていると、ふと奏斗がオレの服を握り締めた気配。……ただ、つかまっただけかもしれないんだけど。  ……そんな些細なことで、心臓が、痛い。

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