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番外編【諦めるか否か】大翔side 16
「……誤解、だから?」
少しの沈黙の後、奏斗が困ったようにそう言った。オレが顔をあげて、奏斗を見ると、奏斗は何回か瞬きをする。
誤解だから、嫌?
奏斗を好きなオレに、誤解されたくないと言う意味、分かんないかな。
オレが誤解してるのが嫌とか言われると、なんか妙に、期待しちゃうっていうの。……分かんないか。
……奏斗が言ってるのは。
事実じゃないから嫌っていうことなんだろうけど……別にオレじゃなくても、誰に誤解されても嫌っていう、それだけなんだろうけど。
なんだか少し、嫌な感情が沸く。
「別にいいじゃん。オレが誤解してようが。奏斗にはもう関係ないでしょ」
「そう、だけど」
「奏斗が和希を好きでも、だれを好きでも、オレにも関係ないよね?」
オレの言葉に、奏斗は、少し瞳を大きくして、黙る。
じっとオレを見つめてから――――ふ、と俯いた。
「そう、だよね。今の言わなくて良かったかも。ごめん」
謝った奏斗が、すごく小さく、息を吸う。
――――……最悪、オレ。
なんで最後にこんなこと言ってんだろ。
笑顔でって決めたばかりなのに。
ちょっと奏斗から一回離れたい。
落ち着きたい。
「……はい」
それでももう入れ終わってしまったから、仕方なく奏斗に紙袋を渡した。手を離したら最後だと思うと離したくなかったけど、握り締めている訳にもいかなくて、仕方なく離した。奏斗は俯いたまま、「ありがと。……じゃ、オレ、帰るね」と言う。
――――冗談だろ。こんな顔させて、そのまま帰らせるとか。
オレはとっさに、その腕を掴んだ。
掴んでどうすんだよ、と思ったその瞬間、言わなければいけなかったことをタイミングよく思いついた。
「ごめん、もう一つ、持って帰ってほしいものがあった」
「もう、いいよ」
「そっちの方が絶対なんだ。待ってて」
「――――」
すぐに部屋に戻って、二号を持った。
渡すの、忘れるとこだった。
――――欲しいって言ってたし。
オレも、これが家にあると、すぐ奏斗を思い出してしまうし。
……抱いててくれれば、あの座り方を、しなくてすむかもしれない。
気に入ってたもんな。
もしかして「二号」なんて名前では嫌かもな、なんて思いながら、奏斗の元に戻る。オレが持ってる二号を目に映した奏斗は、また少し瞳を大きくした。
「欲しいって言ってたでしょ」
奏斗の腕の中に二号を抱かせる。
すぐに、抱き締めるみたいに、抱えた奏斗。
――――可愛いな、これ。
こうやって抱いてる奏斗、もう見れないのか。
奏斗が寂しそうにしてる時に、無理やり抱かせたっけ。寝室は持ち込み禁止にしたら、意味わかんないって文句言ってたなあ、とか。
……二号とか名付けてくれたっけ。
――――あー。
やっぱり、オレ。
奏斗が、好きなんだよな。
……一緒に居たい。けど。
「可愛がってあげて」
せめて。
オレのかわりに。とかいったら、嫌がるかもしんないけど。
寂しい時とか―――― 抱き締めて、少しは紛れるなら。
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