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番外編【諦めるか否か】大翔side 24
「これ、ほんとに嫌味じゃないけど」
オレは奏斗を見つめながら、その頬を指先で撫でた。
「わりと経験はあるのに、なんでそんなに反応がウブなんだろね、奏斗って」
「オレで遊ばないでよ」
「だって可愛いんだもん」
奏斗の髪を、タオルで優しく拭いてから、そのまま顔を覗き込む。
「まあ、あれだよね。セックスだけしてた時は、こんな反応してなかったでしょ」
「――――ぅん」
奏斗は、小さく頷いてる。
「オレも、遊んでただけの時は、こんなに可愛いとかそういうの思えなかったから、多分一緒だね」
タオルをかごに放ってから、奏斗の頬にキスをした。
「気持ちが無いセックスは、もうしない。オレも、奏斗もね?」
「うん」
「過去のことはもう忘れちゃおうね。オレが遊んでたのもどっか遠くに捨てて?」
言いながら、ちょっと苦笑い。
どんな会話だ、って思うけど。お互いに色んなこと全部、知り合っちゃってるから、もう言っておきたい。
微笑んで頷いた奏斗を連れて、キッチンで水を持ってから寝室に移動してるんだけど。手を繋いで、後ろをついてくる奏斗が、オレの服の上だけ着てて。……下はなんも履いてないんだよなぁ、と思うと、触りたくなる。
ヤバい気持ちをごまかすために「そのカッコ、死ぬほど可愛い」と言うと、奏斗はかあっと赤くなって、「オレは死ぬほど恥ずかしいけど」と言ってくるから、ほんと可愛くて、笑ってしまう。
奏斗と一緒に寝室に入る。入った瞬間、繋いでいた手に少しだけ力が入った。振り返ると――――なんか、少し、緊張してるっぽい顔。
……かわい。
って、オレ、なんでも可愛いしか無いな。
これ全部口に出してたら、さすがに、超気持ち悪がられそうな気がする。
一緒にベッドに腰かけると、なんかますます緊張した顔。
強張ってる。……つか、マジかわい。
……にしても、そうだよな。
久しぶりだもんな。ここに一緒に入るの。
水を飲みながら、ものすごく固まってる奏斗に視線を向けた。
ほんとはもうすぐにでも、抱き寄せて、と思ったけど。
少し話そうかなと思って、口を開いた。
「奏斗、少し気になること、話していい?」
「え? あ、うん」
「タイミング的に、和希とより戻したいのかなって思ったから、オレ、諦めようと思ったんだけど。……違ったなら何であの時だったの?」
そう言うと、奏斗は、じっとオレを見つめてから少しだけ視線を落とした。
「……ごめん。あの、違くって……偶然和希に会って、オレ、最初は固まってたんだけど……四ノ宮が頭に浮かんできて、さ。大丈夫ってよく言ってくれる声が聞こえた気がして」
「うん」
「そしたら、なんか平気になって……普通に和希と、話せたの。そしたら、それを見てた真斗に、好きな人でもできたの? て聞かれて……その時、オレ、四ノ宮が好きなのかもって、気付いた、というか……」
和希に会った時に、オレのことを思い出してくれたんだ。
……それで、大丈夫になって、普通に話せたって。すげー嬉しいんだけど。だって、それって、オレのことで和希を吹っ切れたってことじゃん。
そう思った所で、ちょっと疑問。
「そこで気づいたなら、何でそのままオレに好きって言わずに、離れる結論に直行すんの?」
「……だから……離れた方が」
「ああ。……オレのためってやつに繋がるのか……」
オレを好きだから、オレに幸せになって欲しいから、オレと離れる。
……そこに繋がんのか。
なるほど、と呟いてから、オレはもう、苦笑しか浮かばない。
「奏斗のそこら辺の思考って、ほんとネガティブだよね……そこはこれから直そうね。まあ、オレと居れば直ると思うし」
オレがずっと側に居れば、多分奏斗のネガティブ思考は消える筈。
……ていうか。
奏斗って、きっと元はネガティブじゃないだろうから。昔の傷が癒えたら大丈夫そう。
オレがずっと、大好きって言ってるし。
「うん。……直す。そういえば、真斗にもいっぱい言われた。カナはめんどくさいって」
「そうなの?」
はは。なんか、真斗っぽいなと考えて、そんなに会ってもないのに、そう思うのが不思議だなと思っていると。
「真斗は、四ノ宮推し、らしいよ」
そんな風に奏斗が言ってオレを見上げてくるので、ふ、と笑ってしまう。
「そうなんだ。嬉しいな……」
言った直後、自分の家族たちが思い浮かぶ。
「ていうか、うちの家族も皆、奏斗推しだから。……潤だけは別の意味で奏斗推しだけど」
ほんと、なんだかな、と笑うと、奏斗は、ん、と微笑して頷いた。
「奏斗と居られるなら、オレも、なんだって頑張るつもりだけど……一番近い人たちは賛成してくれそうな気がする」
奏斗の頬に触れて、まっすぐ見つめながらそう言うと、奏斗は少し唇を引き締めて、ん、とまた頷く。
……家族のこととかは、きっと、奏斗にとってはまだハードルが高いんだろうけど。二人で生きるって決めるなら、避けれない道だし。……つか、うちの家族は、むしろ振られたオレを無理無理追い立てた人達だからなぁ。正直、普通とは違う気がする……。まあそこらへんは、奏斗にまた今度よく話すとして……。
むしろオレが、奏斗ん家で頑張らないといけないんだろうなーと思いつつ。
「覚えといて。オレにとっては、奏斗と居ることが最優先事項だから。その他のことは、どうにでも、なんとでも、するから」
「――――うん。オレも……頑張る」
つか。
……頑張るって言ってくれるんだな。
そんだけでも、すごい進歩。感動。
もうマジで、可愛い。
――――……ってまた可愛いってなってるし。
(2024/4/30)
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