517 / 542

番外編【諦めるか否か】大翔side 28 

 ……なんか。  すごく幸せな夢を、見ていたような。  真っ白で。  そこに、すごく好きな人がいたような。  ふと意識だけ少し覚めて、夢……? なんて思ってた時。 「四ノ宮……すっごい好きだよ」  すごく小さな、声にならないみたいな声。  奏斗……?  まだ夢か現実かみたいな中にいたのに。  唇に触れた感覚に、自分でもびっくりするくらい一瞬で覚醒。  本物の奏斗で、すっごい好きって言われて、寝てるオレにキスした  という事実。考えるよりも先に動いてた。 「ン……っ?」  奏斗を下に組み敷いて、口づける。  可愛い。……だめだもう、死ぬほど可愛い。  何今の、全部。可愛くて、オレが死ぬ。  良かった起きてて。 「……ん、ふ……っ」  めちゃくちゃキスしつくして、ようやく少し気が済んで離した時には、奏斗は息が上がってて、なんか、顔も赤かった。 「起きてる時に言ってよ。寝てたらもったいない」  ほんと、寝てたら、すげーもったいなかった。  しみじみ思いながらそう言って笑うと、奏斗は、なんだかとっても恥ずかしそう。  キスしたせいだけじゃ無いのか、赤いの。こっそりしてたことがバレたから、余計なんだなと思うと。   「愛してるよ、奏斗」  頬にキスすると、ん、と頷いてくれる。  じっとオレを見つめて、奏斗が話し出した。 「オレね、四ノ宮」 「うん」 「ずっと、一人で生きてくって決めてたけど……あれは、全然平気じゃないのに強がってただけだったの、今は分かってる」 「ん」  なんだかとってもゆっくりな話し方が、可愛い。  寝起きにすぐキスして、こんな可愛くしゃべってる奏斗を見てられるとか。  超、いい朝、とか思ってると。  奏斗は、んー、と少し考えてから。 「でも、今はもう色々解決できてきたしさ。オレ、今度こそちゃんと自分で立てると思うし、誰かに頼らなくても平気になってきたと思うんだけど」 「――ん。頑張ったよね、色々。オレと離れてる間に自分で全部」 「自分でって言っても、四ノ宮が居てくれたから、そうしようって思えたんだけど」 「ちゃんと奏斗が、頑張ったよ」  撫でながらそう言うと、奏斗は、ふ、と笑いながらまたオレを見つめる。 「でもね、四ノ宮。オレ、一人でも頑張れると思うけど」 「うん」 「四ノ宮に、オレと一緒に居てほしいって思う」 「奏斗……」 「ずっと居たい。頼るとかじゃなくて……四ノ宮と、笑ってたいなって思う」  オレにとっては、ほんと嬉しい言葉を告げてくる奏斗に。  なんかもう、勝手に顔が綻びまくってる気がする。 「つか、居るに決まってるじゃん」  そう言って、奏斗を抱きしめて向かい合わせのまま寝転がって、その髪を撫でまくる。  正直、このまま抱きたい位なのだけど、昨日……というか、さっき?まで抱いてたし、ちょっとがっきすぎって思われるのも嫌だし、なんて思っていると。 「……四ノ宮」 「ん?」 「――――」 「……何? 奏斗」  可愛い。また恥ずかしそう。  至近距離で、見つめ合ってると。 「オレも、愛、してる」  なんだか言いづらそうで、区切った感じで、言ってくれた言葉。  奏斗から聞けるとか。今死んでもいいかも……なんて思って、嬉しくて笑うと。オレを見て、嬉しそうに笑った奏斗、抱き付かれてキスされた。  背中を抱き寄せて、キスに応える。  奏斗から、キス、してくれるとか。  本当にもうこのまま抱きたい気持ちもあるけど、奏斗からしてくれたキスを、キスのままで受けてたい気もするって。乙女ぽくてちょっと自分が気持ち悪い気もするような……。 「――――……」  キス、してる奏斗が、可愛い。  散々キスしてきたけど、なんならあれは無理矢理に等しかったしなと思うと、結構とんでもなかったかも……。でも奏斗はそれでもちゃんとオレの気持ちも考えてくれて、オレの好きを受け止めてくれて。……それで、好きって思ってくれて。だけど、オレのために離れるって決めて……。  なんか、奏斗とホテルで会ってから、感情があっちこっち行きすぎて、大変だったけど。辿り着いた今の気持ちは、すごく強いはず。  一度離れたからこそ。離れてもどうでもいいって思えなくて苦しかったことも。却って良かったんだとも思う。  オレは奏斗を。奏斗はオレを。  自分の手で幸せにしたいって、思ったってことだし。あって良かった期間なんだ。……つらかったけど。  絶対、大事にするからね。なんてことを、色々考えながら、キスしまくっていると。 「大翔……」  キスが離れた時に、奏斗に初めて呼ばれた名前。  驚いて、まじまじと奏斗を見つめる。 「奏斗が可愛すぎて、オレ、倒れるかもしれない」  もう無理。可愛くて。  笑いながらそう言って、また口づけた。なんども、ちゅーちゅーしていると。 「可愛いのは、そっち」  とか言われた。それは聞き捨てならないような。 「は? オレ可愛くないし」 「オレ、離れる前とか、最後の方はずっと可愛いって思ってたし」 「え、待って。可愛いって嬉しくないような」 「オレには可愛いっていうじゃん」 「だって奏斗は可愛いし」 「四ノ宮だって可愛い」  なんか、笑ってしまう。  ……あぁ、なんか。こうい会話も。奏斗だって、感じがする。  奏斗と話してる時の、こういうのも、なんか好きだ。 (2024/5/10)

ともだちにシェアしよう!