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番外編【諦めるか否か】大翔side 28
……なんか。
すごく幸せな夢を、見ていたような。
真っ白で。
そこに、すごく好きな人がいたような。
ふと意識だけ少し覚めて、夢……? なんて思ってた時。
「四ノ宮……すっごい好きだよ」
すごく小さな、声にならないみたいな声。
奏斗……?
まだ夢か現実かみたいな中にいたのに。
唇に触れた感覚に、自分でもびっくりするくらい一瞬で覚醒。
本物の奏斗で、すっごい好きって言われて、寝てるオレにキスした
という事実。考えるよりも先に動いてた。
「ン……っ?」
奏斗を下に組み敷いて、口づける。
可愛い。……だめだもう、死ぬほど可愛い。
何今の、全部。可愛くて、オレが死ぬ。
良かった起きてて。
「……ん、ふ……っ」
めちゃくちゃキスしつくして、ようやく少し気が済んで離した時には、奏斗は息が上がってて、なんか、顔も赤かった。
「起きてる時に言ってよ。寝てたらもったいない」
ほんと、寝てたら、すげーもったいなかった。
しみじみ思いながらそう言って笑うと、奏斗は、なんだかとっても恥ずかしそう。
キスしたせいだけじゃ無いのか、赤いの。こっそりしてたことがバレたから、余計なんだなと思うと。
「愛してるよ、奏斗」
頬にキスすると、ん、と頷いてくれる。
じっとオレを見つめて、奏斗が話し出した。
「オレね、四ノ宮」
「うん」
「ずっと、一人で生きてくって決めてたけど……あれは、全然平気じゃないのに強がってただけだったの、今は分かってる」
「ん」
なんだかとってもゆっくりな話し方が、可愛い。
寝起きにすぐキスして、こんな可愛くしゃべってる奏斗を見てられるとか。
超、いい朝、とか思ってると。
奏斗は、んー、と少し考えてから。
「でも、今はもう色々解決できてきたしさ。オレ、今度こそちゃんと自分で立てると思うし、誰かに頼らなくても平気になってきたと思うんだけど」
「――ん。頑張ったよね、色々。オレと離れてる間に自分で全部」
「自分でって言っても、四ノ宮が居てくれたから、そうしようって思えたんだけど」
「ちゃんと奏斗が、頑張ったよ」
撫でながらそう言うと、奏斗は、ふ、と笑いながらまたオレを見つめる。
「でもね、四ノ宮。オレ、一人でも頑張れると思うけど」
「うん」
「四ノ宮に、オレと一緒に居てほしいって思う」
「奏斗……」
「ずっと居たい。頼るとかじゃなくて……四ノ宮と、笑ってたいなって思う」
オレにとっては、ほんと嬉しい言葉を告げてくる奏斗に。
なんかもう、勝手に顔が綻びまくってる気がする。
「つか、居るに決まってるじゃん」
そう言って、奏斗を抱きしめて向かい合わせのまま寝転がって、その髪を撫でまくる。
正直、このまま抱きたい位なのだけど、昨日……というか、さっき?まで抱いてたし、ちょっとがっきすぎって思われるのも嫌だし、なんて思っていると。
「……四ノ宮」
「ん?」
「――――」
「……何? 奏斗」
可愛い。また恥ずかしそう。
至近距離で、見つめ合ってると。
「オレも、愛、してる」
なんだか言いづらそうで、区切った感じで、言ってくれた言葉。
奏斗から聞けるとか。今死んでもいいかも……なんて思って、嬉しくて笑うと。オレを見て、嬉しそうに笑った奏斗、抱き付かれてキスされた。
背中を抱き寄せて、キスに応える。
奏斗から、キス、してくれるとか。
本当にもうこのまま抱きたい気持ちもあるけど、奏斗からしてくれたキスを、キスのままで受けてたい気もするって。乙女ぽくてちょっと自分が気持ち悪い気もするような……。
「――――……」
キス、してる奏斗が、可愛い。
散々キスしてきたけど、なんならあれは無理矢理に等しかったしなと思うと、結構とんでもなかったかも……。でも奏斗はそれでもちゃんとオレの気持ちも考えてくれて、オレの好きを受け止めてくれて。……それで、好きって思ってくれて。だけど、オレのために離れるって決めて……。
なんか、奏斗とホテルで会ってから、感情があっちこっち行きすぎて、大変だったけど。辿り着いた今の気持ちは、すごく強いはず。
一度離れたからこそ。離れてもどうでもいいって思えなくて苦しかったことも。却って良かったんだとも思う。
オレは奏斗を。奏斗はオレを。
自分の手で幸せにしたいって、思ったってことだし。あって良かった期間なんだ。……つらかったけど。
絶対、大事にするからね。なんてことを、色々考えながら、キスしまくっていると。
「大翔……」
キスが離れた時に、奏斗に初めて呼ばれた名前。
驚いて、まじまじと奏斗を見つめる。
「奏斗が可愛すぎて、オレ、倒れるかもしれない」
もう無理。可愛くて。
笑いながらそう言って、また口づけた。なんども、ちゅーちゅーしていると。
「可愛いのは、そっち」
とか言われた。それは聞き捨てならないような。
「は? オレ可愛くないし」
「オレ、離れる前とか、最後の方はずっと可愛いって思ってたし」
「え、待って。可愛いって嬉しくないような」
「オレには可愛いっていうじゃん」
「だって奏斗は可愛いし」
「四ノ宮だって可愛い」
なんか、笑ってしまう。
……あぁ、なんか。こうい会話も。奏斗だって、感じがする。
奏斗と話してる時の、こういうのも、なんか好きだ。
(2024/5/10)
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