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番外編【夏祭り】23 *奏斗

「――行こ、奏斗」  暗い夜道、四ノ宮がオレの手を握る。 「奏斗、今日明日、オレと居られる?」  ん??  ちょっとよく分からなくて、首を傾げながら、考える。 「え? どういう意味? 居られるよ? 何もないけど……」  一緒に居るつもりだったけど……。  なんだろ、改めて、確認? 「居れないの? 四ノ宮は」 「居るに決まってるじゃん」 「オレもおんなじだけど?」 「――そっか」  くす、と笑った四ノ宮が、ふと振り返って、ちょっと周りをきょろきょろした後。オレの頬に触れながら、少し背をかがめて、ちゅ、と短いキスをした。 「――これ、聞いた意味があってさ」 「……?」 「ついてきてね」 「……ん」  て、言われなくても、ついてくけど。  隣に並んでゆっくりと歩く。 「――なー四ノ宮、なんか……今日さ」 「うん?」 「浴衣のお店に行ってからさぁ」  何となく、今日のことが、ぱーっと頭に浮かんでくる。 「――なんか今の今までさ」 「うん」  隣を歩く四ノ宮を見上げると、ふ、と四ノ宮が優しく笑う。   「今日ずーっと、すごく楽しかったなぁ、て、思う」 「――うん」  クス、と笑う四ノ宮が、オレの手を繋いでくる。  ――人も居ないし、まぁ、いっか、と思いながら。 「浴衣選んだりしたのも、二人で着たのも――二人きりも良かったかもだけど、瑠美さんと潤くんとお祭り行けてさ。ただの友達、とかじゃなくて、四ノ宮の家族、だし……潤くん、可愛かったし、最後、邦彦さんにも会えたし。なんか……」 「うん。なんか?」 「大事な想い出とかさ――大事な人が増えてくって」 「――」 「楽しいね」  しみじみ言うと、四ノ宮はオレを見つめて、ふ、と愛おしそうに、瞳を細めた。たまに、そんな顔をするけど。そのたび、すごくドキドキ、するんだよな、オレ。――ほんと少し前までは、四ノ宮を見て、ドキドキするなんて、思いもしなかったのに。 「――人生って分かんない」  思わず漏れた言葉に、四ノ宮は、首を傾げた。 「何、それ……」  クスクス笑いながらオレを見る。 「んー。なんかほんとにそう思って」 「――まあオレも。奏斗とこんな風になるとか、思いもしなかったけど。……そういう意味?」 「ん。まあ、なんとなくそういう感じ」  二人でクスクス笑い合って、目の前の空を見上げながら、四ノ宮が口を開く。 「花火――綺麗だったよね。なんかオレさ」 「うん?」 「――今までみた中で、一番綺麗だった」  そんな風に言われて、オレもちょっと考えてみて。 「うん。そうだね――オレも、そう思う」  そう言ったら、なんか、四ノ宮、オレを見つめて、キラキラした瞳で見つめてくる。ふは、と笑ってしまう。 「四ノ宮と居るからだよって。言ってほしいの?」 「――別に。んなことないけど」 「可愛いなー、四ノ宮」  クスクス笑ってしまうと。四ノ宮はちょっとムッとした顔で、オレを見るけど。すぐに、ふ、と微笑んで、オレの頬に触れる。 「――――オレは、奏斗が居るから、綺麗に見えるんだからね」  めちゃくちゃ真剣な瞳で見つめられて。  笑いが引っ込んでしまった。ぐ、と言葉に詰まってしまう。  ……無駄に顔。よすぎ。  むむ、と見上げると、四ノ宮は、ふ、と笑って、オレの手を引いて、歩き出す。 「早く行こ。いいとこ、連れてってあげるから。とりあえずロッカーから荷物取らないと」 「あ、うん」  急にすたすた歩きだした四ノ宮と並びながら、いいとこ? と首を傾げた。

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