544 / 544
番外編【夏祭り】26 *奏斗
「四ノ宮、部屋、奥まで見たい。行こ行こ」
「うん。いいよ」
先を歩きながら振り返ると、四ノ宮はクスクス笑いながら後ろをついてきてくれる。
広いリビングを抜けると、隣にも部屋があって、さらにその奥に広い広い寝室。寝室にもでっかいテレビを発見。
そのままバスルームを見に行くと。なんか、バスタブにへんなものがついてる。
「あ、ジェットバスだ」
わぁぁ。しかも、バスルームにもテレビがある……!
「え、なんかもうオレ、貫徹で映画見たい。ソファとお風呂と寝室で」
「貫徹はやめようよ」
四ノ宮がクスクス笑う。
「すごい部屋だね……ちょっと、瑠美さんに、連絡させて?」
「いいよ、明日で」
「一言だけ送っとく」
ん、と四ノ宮が頷くので、「部屋につきました。めちゃくちゃすごい部屋。ありがとうございます」と入れると、すぐに既読がついた。
『良かった。楽しんでね。今さっき、潤が車の中で目が覚めて、ユキくんとヒロくんが居ないーって泣いて、そのまままた寝たとこ』
「可愛すぎますね♡」
『また遊んでやってね。じゃあ楽しんで』
お礼のスタンプを入れると、ハートマーク付きで返事が入ってきて、やり取り終了。
「潤くん、車で起きて、オレ達が居ないから泣いちゃって、また寝たとこだって」
そっか、と四ノ宮が笑う。
「ほんと可愛いな、潤くん。今日ずっと可愛かった」
「うん。そうだね。……ていうか、奏斗の前では余計可愛いかも」
そんな風に言って苦笑してる。
「四ノ宮に似てるから、カッコよくなるだろうな」
まっすぐ見上げると、四ノ宮がなんだか、何とも言えない顔をした。
「何その顔?」
ぷ、と笑ってしまうと、四ノ宮は、んん、と考えながら、オレの腕を引いて、抱き寄せた。
「オレがカッコいいっていうのは嬉しいんだけど――いつかライバルになったら困るし」
……本気なのか、全然分からない。冗談だと思うんだけど、顔は本気なんだよな。
「本気……じゃないよね?」
「――――さあ……どうだろ? てか、それよりさ、奏斗」
クスッと笑う四ノ宮がオレの頬に触れて、目を細める。
「もう部屋、見たよね?」
「ん? うん」
「じゃあ――」
腰に手が回って、ぐい、と引き寄せられる。
「どこでキスされたい?」
ふ、とキラキラの瞳で、楽しそうに聞いてくる四ノ宮。
「奏斗、すぐ立ってられなくなっちゃうから……どこがいいか選ばせてあげる。あ、でもオレがだっこしてあげながらでも全然いいんだけど」
「――――……っっ」
「早く決めて。オレもう、我慢、限界」
すり、と唇に触れられて。
もう、馬鹿、と赤面しながらも。
どこがいいかなと考えてしまうオレも――馬鹿、かな。
ともだちにシェアしよう!