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番外編【夏祭り】34 *奏斗

「四ノ宮は……可愛いって、もう、言いすぎだからね?」 「ンなこと言われても……だって可愛いし」  ふ、とオレを見て、緩む瞳。  ――どう見ても、愛おしそうにしか見えない顔で見つめられると。本当に言葉に詰まる。 「……でも、オレの方が年上だし」  すごくドキドキしながら、照れ隠しもあってそう言うと、四ノ宮は、そうだけどね、と微笑む。何も言い返してこずに楽しそうな四ノ宮に、オレもそれ以上言えなくなる。 「このスープ、すごくおいしい。奏斗、飲んだ?」 「うん。おいしいよね。なんか、ふかーい味がする」 「ね。んー。これ、どうやって作るんだろ……」  なんだか真剣な顔して、味を見てる姿を見つめながら、くす、と笑ってしまう。プロの料理人みたいなこと言ってるし。飲んだだけで分かるもの??  ……まあでも、四ノ宮のごはん、いつも美味しすぎるし。もしかして、こんなのも作れちゃうのかも、とも、思ってしまう。  なんか、丁寧なんだよなー、四ノ宮って。色々。全部が、丁寧。  食事、作るのも、ほんとに丁寧な感じするし。  掃除とか片付けとかも、マメだし。寝坊したりとかも無くて、いつも余裕をもって動いてる気がするし。連絡の仕方とかも丁寧だなーって思う。優しいなーとも思うし。  葛城さんの影響、すごくありそう。何回か会っただけだけど、葛城さんってすごい丁寧な感じするし、しっかりしすぎてるというか、絶対勝てない気がするもん。……四ノ宮って、あの人に育てられたような感じなんだよなぁ……。  両親は子育てはあんまりしなかったそうだし。でもなんか、放置って感じじゃなくて、オレにはよくわかんない次元で、四ノ宮をすごく大事にしてるんだと思う。  やっぱり、オレの家とは、大分いろいろ、違うけど。  ……違うけど、でも。  そんな中で育ってきた四ノ宮と。オレは、今、こうして一緒に居て。  誰よりも、居心地が良いとか。ほんと、不思議。   「奏斗、何考えてる?」 「ん。……何で?」 「なんか、面白そうな顔、してるから」  四ノ宮がパンを口に入れながら、くす、と笑う。 「ふふ。四ノ宮、スープは? 作れそう?」 「んー。どうだろね。今度作ってみるから、味見して」 「うん。ていうか、完全に同じじゃなくても、絶対おいしいと思うから、味見とかじゃなくて、普通に飲んじゃうけど」  思ったままそう言うと、四ノ宮は、そっか、と嬉しそうに笑った。 「――オレね、今、葛城さんとか四ノ宮の家族を、ちょっと思い出してた」 「ん? 何で?」 「んーと……最初は四ノ宮がスープ、研究し出したから、四ノ宮のご飯もおいしいからなぁって思って……なんか料理だけじゃなくて、四ノ宮っていろんなこと丁寧だよなぁて思ったの」 「……ふうん?」 「でね、そこから、葛城さんの教えを受けてそう……って思ってさ。ていうか葛城さんって存在も、四ノ宮のお父さん達も、やっぱり、色々世界が違うんだけど……なんか、違う中で育ってきたのにさ。居心地が良くて不思議だなーって、思った」 「――最後の結論で、それ、思ってたの?」  軽く頷きながら聞いていてくれた四ノ宮は、言い終えたオレに、不思議そうな顔をした。 「ん? どういう意味?」 「それ、思ったのに、さっきみたいな、面白そうな顔、してたんだ?」 「……面白そうだった?」 「うん。ちょっと笑ってた」  言いながら、そっと、四ノ宮がオレの頬に触れる。 「――――世界が違うって、思っても……笑うんだね、奏斗」  すり、と頬を撫でられて。四ノ宮の言いたいことが、やっと分かった。  前のオレなら。  ……違うから一緒に居られないとか。言ってたってことか。 「……だって、今は――違うから離れようって、思わないから……」  そう言うと、四ノ宮はまた愛おしそうに微笑むと、頬に触れたまま、顔を寄せてきて、そっと、キス、してくれる。 「すっげー、進歩」  クスクス笑いながら、ちゅうちゅうキスされて、ああ、もう、と少し離させる。 「食べてからにして?」  そう言ったら、四ノ宮、オレを離してから、クスクス笑いながら言うことに。 「食べてからちゃんとしてね、ってことだね」 「……っ」  ……ああもう。恥ずかしいなもう。  否定は。しないけど。 (2025/4/19) そろそろ終わろうと思ってたんですが…… もうちょっと、続けちゃったりして…(´∀`*)ウフ💦

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