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番外編【夏祭り】37 *奏斗

「四ノ宮」 「ん?」  寄りかかった四ノ宮を振り返って顔を仰ぐと、ふ、と微笑む四ノ宮が前髪のあたりにキスをする。  なんか、ほんと、  優しくて、心の中がくすぐったくて、たまらない。 「……四ノ宮は、オレのこと、信じてる?」  そう聞くと、ふ、と微笑んで、どういう意味? と聞いてくる。 「オレが、四ノ宮とずっと居たいと思ってるって、信じてる?」 「――ん。信じてるよ。奏斗は? オレのこと、信じてる?」  絶対信じてるって思いながら聞いてるんだろうな、という顔で、四ノ宮が微笑んでる。オレは、うん、と頷いた。 「今日ずっと一緒に居て、なんか余計になんだけど……今は全然不安もないかも」  そう答えたら、四ノ宮は「良かった」と笑う。 「まあ、付き合ったばかりでそんなに不安にさせてたら、それも困るけどね」 「ん。……でもオレ、そういう意味で人を信じられると思ってなかったからさ。今、すごく不思議かもしんない」  和希と過ごした長い時間。  幼馴染の時から和希を色んな意味で信じていたのに、ああなって……人を信じられなくなって。  もし次に誰かを信じるとしたら、和希と過ごした時間以上を共に過ごして、いろいろ重ねていかないと無理なんじゃないかと、心のどっかで思ってた気がする。  でも、今から知り合って、同じだけ、というかそれよりももっと長く何年も過ごしてそれでやっと信じて付き合う……なんて、現実的に考えて、無理だし。  てことは、オレはもう信じるのも恋するのも無理だろうなぁ……みたいな思考の流れだったと思うんだよね。うーん……めんどい。 「……四ノ宮はすごいよね」  じー、と目の前の瞳を見つめながら、しみじみ言うと、めちゃくちゃ苦笑いされる。「なにが?」と聞かれて、考えてから。 「……オレを信じさせてくれるとか。すごい」 「――――」  笑ってしまいながら言ったオレのセリフに、四ノ宮もクスクス笑った。 「確かにね。信じてくれなくて、少し大変だったかも」  優しい声で言いながら、四ノ宮がオレの頬に触れる。 「ん……ごめんね」 「――いーよ」  そう言いながら、顔が少し傾いて、ちゅ、とおでこにキスされる。触れる時に、オレはゆっくり瞳を伏せた。  繰り返される、触れるだけの優しいキスに、胸が、きゅ、と切なくなる。  好き、だって思うと。  嬉しくても、きゅって縮むんだなあ……。  オレは、寄りかかっていた体を起こして、四ノ宮と向かいあった。四ノ宮の太ももを跨いで上にのって、四ノ宮の肩に手を置く。  ちょっと息が詰まりそうになるくらい、近い。  体温も、呼吸も――肌に触れて、幸せな感じがする。  すると四ノ宮も嬉しそうに微笑んで、オレの腰に手を置きながら言った。 「なんかこれ、すごく近くて嬉しいね」  ……あ、なんかやばい。  四ノ宮の手が腰に触れてるの……なんかこう、すごく落ち着かない。  手がすごく、熱い。  そういう意味でした体勢じゃないのに。  なんか、落ち着かない。 「四ノ宮」 「ん?」 「……四ノ宮」  オレは、名を呼びながら、その首に腕を回して、ぎゅう、と抱きついた。  四ノ宮が、オレの耳元でそっと言う。 「そんなふうに何回も名前呼ばれると、なんか期待しちゃうじゃん」 「……バカ」  さっき、さんざんしたし。……そう思うのに。  ドキッと震えた胸を誤魔化すみたいに、ぎゅ、と抱きつく。  四ノ宮が低く、笑うのが、体越しで伝わる。  ……四ノ宮のこの笑い方、すげー好き。 (2025/6/13)

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