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番外編【夏祭り】39 *奏斗 ☆完結
オレの上に、緩く重なる四ノ宮。
重みが、嬉しいな、なんて思いながら、上に居る四ノ宮の頬に触れた。
「奏斗?」
四ノ宮がオレの顔に触るこのはなんかいつものことだけど、多分こういう姿勢の時にオレがこんな風に四ノ宮の頬に触れることはあまりない。ちょっと不思議そうに、でもなんだか嬉しそうに、オレを見つめてくる。
なんだかなあ、もう。
……ほんと。最初の頃の印象と全然違う。優しく緩む瞳とか、自然とほころぶ口元とか。こんな表情をする奴だとは、思わなかった。
ゆっくりゆっくり顔を寄せて、その唇にキスをした。
キスが嫌い、気持ちいいことだけ好き、一緒に寝るとか無理、なんて。
そんなこと言ってたの、そんなに前でもないのに。
あの頃の自分の気持ちは、もう全然、分からない。
キスしたい。
触れたい。抱き締めたい。抱き締められたい。
朝までずっと一緒に居たい。
……とか。
変わりすぎなのは、オレもか。
「んー……」
キスしたオレをじっと見つめていた四ノ宮が、オレの上で、なんか唸り出した。
ん? と見上げると、額をこつん、とぶつけて、すりすりすり寄ってくる。
「なになに。何してんの??」
さっきも同じことされたような。デジャヴか。
四ノ宮の肩に触れて、笑ってしまいながらそう聞くと。
「奏斗が可愛い」
「……そう?」
「そう。……抱きたい。てか、もう、分かる? これ」
「――――」
腰のあたりの硬いのを、ちょっと押し付けられて、わ、とちょっと驚くとともに、かなり照れる。
……ていうか、元気だな、四ノ宮。
抱かれる方だからって、オレの体のことばっかり気にするけど、四ノ宮だって今日一日ものすごく暑い中、潤くんのこと、結構長く抱っこしてたし。疲れてると思うんだけどな。
四ノ宮は、はー、と息をついて、オレをまっすぐに見つめてくる。
「でも我慢するって決めたから、今日は我慢」
なんだか頑なに言って、深呼吸を繰り返してる四ノ宮に、ぷぷ、と笑ってしまう。
決めたのは四ノ宮だし、オレは触れられるのは好きだし。どっちでもいいんだけど。なんか頑張ろうとしてるのが可愛いので、そのままにすることにした。
まあでも、眠くて、うとうとしてきそうなのは本当なので、ベッドの柔らかさと、四ノ宮の触れてる感じとで、もう意識がとろけてくるみたい。
「明日、いっぱい遊ぼ」
そう言うと、四ノ宮、途端に嬉しそうに笑う。
「うん。そうだね」
こうして笑顔を見てると、まだ、大学入ったばかりの、可愛い男子、て感じ。いつも大人っぽい顔、し過ぎなんだよなー……。
まあ多分……ああいうパーティーとか、家の集まりとかよく出てたらしいし。普通の家の子たちよりは、ちゃんとしてる感じで生きてきたんだろうし。葛城さんが、育ててるみたいだし。四ノ宮のお父さんやお母さんは子育てはしてないとか言ってたけど……見守ってる感は半端ないしな。瑠美さんはなんでも分かってそうだし。
なんかあの人たちに育てられた四ノ宮って、最強なのではないだろうか……。なんて思いながら。
「ん?」
見つめたオレを、嬉しそうに見つめ返して笑う顔は、ひたすら愛しい。
「しのみや……」
もう一度、両手で四ノ宮の頬に触れて、ちょっと引き寄せる。
至近距離で、じっと、綺麗な瞳を見つめると、ふ、と柔らかく細められる。
いつも、そう。
見つめ合うと、目を細めて、柔らかく微笑む。
言葉で言わなくても、いつも、大好きって言われてるみたいな感覚があって――四ノ宮と付き合いだして、まだそんなに経ってないのに、居る間ずっとそんな感じだから。
安心感というか、幸せを感じる感覚が、ずーっと心の中に、積み重なっていって、溢れてもまだ注がれてる、みたいな。
そんな感じ。
「……オレのこと、ずっと……好きでいてほしいな」
つい、思ってることが口に出ちゃった。
好きでいてね、とかでもなく。
好きでいてほしいとか、そんなただの願望。変なこと言っちゃったかな。
一瞬きょとん、とした四ノ宮が、オレを見下ろして、また微笑む。
髪の毛が、ふわりと少し落ちて、下から見る微笑んだ顔は、いつもより幼く見えて、めちゃくちゃ可愛い。
……ほんと。可愛いなー。
頬から後頭部に手を滑らせて、そのまま引き寄せる。
ゆっくりゆっくり、唇を重ねた。
「オレのことも……ずっと、好きでいてほしいよ」
キスして伏せていた瞼をゆっくり開いて、そう言った四ノ宮を、瞳に映す。
数秒見つめ合って、ふ、と微笑み合った。
「……多分、オレの方は、大丈夫そう。そう簡単に、好きにはなんないし。好きになったらしつこいし。オレ」
そう言ったら、四ノ宮、しばらく考えてから、面白そうに笑ってオレを見つめた。
「それ言ったら、オレなんて、そもそも人が好きじゃなかったし。本気で好きになったの、初めてだから……オレの方が、しつこいんじゃない?」
「人が好きじゃなかったって、どうなの……」
オレがついついそこに食いついて笑ってしまうと。
「奏斗を好きになったころから……オレ、結構他の人も、好きになってきてるかも」
「――そうなの?」
「うん。なんだろうね、これ。でも……たぶん、人って、いいもんかも、ていうのが、オレの中にうまれたのかも」
冗談なのか本気なのか、クスクス笑いながら言ってるけど。
「これも奏斗のおかげだからね」
ちゅーと頬にキスしてくる四ノ宮に、ふ、と笑ってしまう。
「じゃあ……今日は、この幸せ気分のまま、ゆっくり寝て……」
むぎゅ、と抱き寄せて、目を閉じる。
「明日もデートしよ」
そう言ったオレは、ゆっくり離されて。
「キスしながら寝る約束」
言うと同時に、唇が触れてきて、深く重なる。
「ん、ン……」
零れる自分の声が甘えて聞こえて、すこし、我慢するけど。
すぐにそれも出来なくなって。
あっという間に熱くなるキスに、夢中になった。
◇ ◇ ◇ ◇
(2025/7/19)
夏祭り 完✨
書き始めを見たら去年の夏前でびっくりでした。
秋🍁冬⛄春🌸の間も、
長いこと夏🍧の話におつきあいくださって、
ありがとうございました♡
次は何を書こうかなぁ……家族に会いに行く編かなあ。
それとも付き合ってからの学校かなあ~(´∀`*)ウフフ
あんまり詳細だとマネするみたいで書きにくいので、「~編」くらいで短く書いておいて頂けると。参考にするかも……(*´ω`*) ←かも、程度でよかったらひとこと…✨
ではではまたいつか💕
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