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同級生 4

「童貞は一味違うな、美味かった」 サラリと淫らなことを言われた。 鞄から大判のウエットティッシュやビニール袋が出て来て、慣れた様子で身繕いや後始末を丸裸のままでテキパキしていく。 まだ訳がわからなくて、呆然としていたらウエットティッシュを渡された。 「ゴミはここね」 淡々と言われ、ビニール袋を示された。 服を身につけ、髪をなでつけ、彼は立ち上がる。 もう先程までの生々しさはなく、どこかズレた世界にいる触れられない何かのよう。 硬質で静謐な、遺跡物みたい。 でも確かに確かに触れた。 触れたのだ。 思わず指を伸ばして抱き締めた。 「今日はもう終わり」 その声もとおい。 その存在をこの身体で確かめたはずだったのに。 触れたなら、確かめたなら、もっと遠い。 でも、離したくなかった。 「なんて顔してんの」 彼は初めて笑った。 それは。 淫らに男達を喰らう時の獣でも、この世界から自分を切り離したようないつもの表情でもなくて。 初めて。 彼を見つけたのだと思った。 その笑顔にキスをした。 そっと頬に触れるだけのキス。 「お前・・・面白いな」 彼は真面目な顔で言った。 それも。 彼の声だった。 本物の。 分からない。 分からないけど。 あの欲望よりも。 この彼が欲しかった。 彼をしばらく抱きしめていた。 彼は黙って抱かれてくれて。 でも、そっと身体を離して去っていった。 追いかけることはゆるしてもらえない。 そこから、たまに。 彼とセックスするようになった。 あの空き教室で。 先輩達としてるのも、先生の1人としてるのも知ってた。 でも。 セックスが終わればつかの間「彼」に会えた。 それだけは。 それだけは。 他の誰もが知らない彼だった。

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