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記憶と夢(准)

『・・・何で・・』 彼は俺を見て今にも泣き出しそうに眉をしかめた なんで、そんな顔をするんだ 「す・・好きだから・・・」 俺が言うと、さらに泣き出しそうな顔になる 『好きなの?・・・本当に好きなの?』 何度も聞かれ、胸の奥が締め付けられる 心が、そうじゃない・・ 違う、お前が好きなんだと叫んでいる 『・・ねえ・・・何で・・・』 彼の手が・・ゆっくりと俺の頬に触れる 「・・・ゴメン・・・・」 そんな風に触れないでくれ 涙が止まらなくなる ・・・泣かないで・・・ 好きだから離れたくない でも・・側にいても触れられない もう、辛くて絶えられないんだ ・・・准君・・・・ 頬を撫でる手が・・暖かい ・・・・准君・・・・好きだよ・・・ ああ・・俺もだよ 俺も好きなんだ その手が欲しい 彼の顔がゆっくりと近づいてくる ふっくらとした唇が・・ ・・・好きだ・・・・ 俺が一番欲しい言葉と共に重なる 「・・・好き・・・・」 え? (好き!?) ハッと目が覚めるとキッチンから物音が聞こえた。 「・・あ・・」 尊の後ろ姿が見える。 ソファで眠ってしまったようだ。 ゆっくり起き上がり座り直した。 お帰りと声を掛けようとしたが (・・なんか・・唇の感触が・・) 唇の感触を思い出し、鼓動が速くなっていくのを感じた。 待ってよ・・今の夢、なんか変じゃなかった!? (好きとか・・言ってたよね?) しかも相手は・・ 「尊・・」 キッチンを見ると尊の後ろ姿 いや、まさか そんなはずがない。 (夢・・だよね?) 鼓動が速くなっていくのを感じながら、ゆっくり立ち上がり冷蔵庫を覗く尊の後ろに立った 「えっと~・・キャベツ・・と」 その背中がモゾモゾと動くのを見て無性に触れたくなる (いや・・何考えてんだ俺!) 思わず背中に触れそうになった手を慌てて引っ込めた。 「・・・尊・・」 「うわ!!」 脅かすつもりはなかったが、声を掛けた瞬間、ビクッと体を跳ねらせ後ろを振り返った。 大きく見開いた瞳が俺を見る 「准君・・」 俺の名前を呼ぶ声は夢の中で聞いた声と同じだ 触れた唇の感触を思い出して顔が熱くなった 夢・・なんだよな? でも、何でそんな夢を見るんだ? (・・これって・・俺・・) 夢の中で俺は、尊の事を好きだと言っていた。 これは、記憶なのだろうか それとも・・ 記憶を無くした今の俺の感情なのか 「どんな夢を見たの?」 ニッコリと微笑む尊に、キュッと胸の奥が締め付けられた。 手に、力が入り強く握り混みながら奥歯を噛み締めた。 夢の中の感情が蘇る。 「・・変な夢だから・・内緒」 「っぷ・・内緒なの?」 小さく吹き出しながら、笑みを浮かべる尊に、思わず胸を押さえた。 (どうしよう・・) ドキドキと脈打つ鼓動に戸惑った

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