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牽制

「俺にとっても尊は大事な・・大切な人だよ」 俺の言葉を聞き准君は、微笑を浮かべながら言った。 准君の言葉は嬉しいはずなのに胸の奥が息ができなくなるほど締め付けられる。 でも、記憶が戻ってしまったら、その言葉も聞けなくなるだろう。 だったら、このまま記憶が戻らなくていい。 俺に向ける、この笑顔を失いたくないんだ 「そうですか~そうですよね・・雨宮さんにとっては、記憶を取り戻す唯一の鍵かもしれませんもんね」 三枝さんが大きく頷きながら言った。 「!!」 俺は、その言葉にハっと顔をあげた。 (何を言うんだ!) 「うん・・尊といると昔の想いって言うのかな・・説明難しいけど頭の靄が晴れそうになる時があるんだ」 「え!?」 それは、どういう思いだろうか・・ 「でも・・また直ぐ、靄がかかっちゃうんだけどね」 そう言って微かに眉をしかめて笑った。 准君の言葉に一気に鼓動が跳ね上がった。 (結局どっち?戻りそうなの!?) そんな風に思っていたなんて、俺には一言も言わなかったのに 「雨宮さん、無理せず・・ね?」 そう言って三枝さんは、准君に笑みを向けた。 三枝さんには、言えるんだ・・俺には言えない気持ちを三枝さんには話すのか 胸の奥が萎んでいく気がした。 「っと、俺、トイレ行ってきますね」 准君が頭を下げると席を立ち、店の奥にあるトイレに向かった。 准君が離れると三枝さんが俺を見た。 「藤堂さん。単刀直入に言います」 「・・何ですか?」 その目はさっきまでの笑みは無く鋭い視線だった。 「あなたは、雨宮さんの側に居ないほうが良い」 「は?」 何で、そんなことを言うんだよ 三枝さんを凝視した。 「雨宮さんは、ああ言ってますけど、あなたの存在は彼を混乱させているんですよ」 「そうは見えませんけど?准君は俺と居て心休まると言ってくれました」 ハアっと溜息をつくとテーブルの上で両手の組み、少し身を乗り出して言った。 「それは、あなたしか頼る人がいないと思っているからですよ」 「そんなことは」 反論しようとしたが、それを遮るように続けた。 「あなたのお姉さんは・・彼の恋人だったんですよね?」 「っ・・」 ドクンと心臓が大きく脈打った。 「でも、彼は違うと言っていましたけど・・・」 探るように目を細めて俺を見た。 「それ、三枝さんに関係ありますか?」 相変わらず鼓動が速くなり声も震えそうだったが、口角を上げ営業スマイルを浮かべながら首を傾げて言った。 「記憶を無くした彼に、いったい、どれくらい嘘をついているんですか?」 「・・・・・」 三枝さんの言葉に、得意の営業スマイルが引きつりそうだった。 でも、なにか言わなければと口を開く 「あ、あなたは、准君のカウンセリングの先生かも知れませんが、プライベートに踏み込み過ぎじゃないですか?カウンセリングって心のケア・・ですよね?」 「っ」 俺が言うと、今度は三枝さんが唇を噛んだ

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