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不安

それからと言うもの・・俺は毎日不安を感じていた と言うのも 「尊、今日も病院に行ってくるから」 「え!?また?」 准君は頻繁に三枝さんの病院に行くようになたからだ。 「うん、今後の事もあるだろ?色々話聞いてもらってさ・・まあ、相談してる感じかな」 何故、そいつに相談しなければいけないのか分からない。 今後のことなら三枝さんじゃない方がいいはずだ。 「ねえ、話なら俺も聞くよ?」 「尊は仕事で疲れてるだろ?だから大丈夫」 そう言って笑みを浮かべる。 (三枝さんに会って欲しくないんだよ・・とは言えないよな・・) 准君の言う今後の事と言うのは仕事の事だ。 記憶を無くしても、今まで学んできた事は覚えている准君は、来週から江角さんの事務所で働くことになった。 働くと言っても、まずは事務的な事から始めるらしいが。 その話を聞いたとき俺はまだ早いと反対した。 「このまま家に居ても暇だし、働いた方が記憶も思い出すかもしれないと思ってさ」 いつの間に江角さんと話を付けていたのか、俺の知らない所で話が進んでいたことに少なからず俺は寂しさを感じた。 記憶を戻すために・・ この頃の准君は記憶を戻すことに躍起になっている様に感じる。 口癖のように何度も言う。 早く取り戻したいと・・ 「准君・・焦らなくても良いんだよ?」 「え?」 「・・その、記憶さ・・戻らないなら、それで良いと思うんだ・・それでも俺たちの関係は変わらないでしょ?」 何なら、記憶が戻らない方が、今のままの方が 「尊・・・・」 俺の言葉に、表情を曇らせた。 そして「でもさ・・」と小さな声で言った。 「でも・・俺は知りたいんだ・・」 「え?」 「・・尊・・」 「うん?」 何かを言いたそうに口を開くが、下唇を噛み言葉を飲んだように見えた。 「あの、准く」 「いや、何でもない!良いんだ・・別に無理してないから・・あ、ほら、時間だよ!」 俺の言葉を遮るように言った。 「あ・・うん」 途中で言うのを止めてしまった准君に、また不安は募る (何を知りたいの?) もっと話をしたかったが、今出ないと電車に乗り遅れそうだった。 「じゃ・・行ってくるね」 帰ってきてから、もう一度聞いてみよう・・ そう思い、その日も不安を抱えて仕事に向かった。 ・ その日の昼、コンビニでおにぎりを買って車の中で食べていると久しぶりに母さんから電話が来た。 「もしもし~?どうしたの?」 『尊・・どうもしないけど、この頃連絡も寄こさないから心配して・・』 母の心配そうな顔が目に浮かぶ。 准君の事で頭がいっぱいで、連絡を忘れていた。 『准さん・・元気?』 その声は少し低くかった。 「うん、元気だよ」 『一度・・家に連れてこれないかしら』 そして、その言葉に不安がまた大きくなった。

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