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夢の終わり(充)
「どうしよう・・思い出してきたみたいなんだ・・」
藤堂さんから電話が来て泣きそうな声で言った。
思い出したと言っても、些細な事らしいけど・・
でも、これで准の記憶はいつか戻ることは分かった。
一生思い出さないのなら、俺たちの関係や藤堂さんとの関係も最初からやり直せばいいと思っていたけど
記憶が戻ってきているのなら話は別だ。
『充・・俺、どうすれば良いかな・・姉ちゃんの事も思い出すのかな・・』
泣き出しそうな・・いや、もう半泣き状態の藤堂さんに俺は「そうだろうね・・」と無情な事を言ってしまったけど
でも、そもそも嘘を教えてしまったのは彼だ。
自分の好きだった相手にお姉さんが恋人だ・・なんて言えない気持ちは分かる。
それに准はお姉さんの事好きじゃなかった。
言い方は悪いけど・・打算で結婚決めるなんて愚かだと思ったし本人にも何度も言った。
でも・・
それでも・・准は彼の側に居たかったんだ
どんな形でもいい、藤堂さんの側に居られればいいと思うほど彼を愛していた。
藤堂さんがいずれ誰かのモノになっても・・家族ではいられるから・・と
「俺・・尊のアパートに泊まってたのか・・」
そう言って微かに眉を顰める彼の感情は読めなかった。
意外だったのか、それとも納得したのか・・
「そうだよ~あなた達、ホント仲良かったからね」
「そう・・」
コーヒーの入ったマグカップを二つ持ってくると俺の前に座った。
テレビの前に座られて、ゲームができない
「ちょっと・・准君?」
場所移動してくれない?と言おうとするまえに
「あのさ・・そこにはさ・・彼女も居たのかな?」
ボソッと小さな声で言った。
「うん?」
「・・・尊のお姉さん・・」
「っ!」
ドキッとして思わず准君を凝視した。
(そうか・・やっぱり気になるよな・・)
「気になるの?」
コーヒーを啜りながら聞くと、フーッと息を吐きながら俯いた。
「気になるって言うか・・よく夢に出てくるんだ」
「夢・・」
それは自分の記憶の夢かもしれない。
「尊の夢も見るんだけどね・・たまに、女性が出てくる・・彼女、きっと尊のお姉さんだと思うんだよね」
「そ・・か~・・」
もうそろそろ・・藤堂さんの夢の生活も終わるかもしれない
准が彼女の事を思い出したらどうなるんだろうか
そもそも藤堂さんの気持ちには気づかないのかな?
というか、一緒に寝てるんだろ?
普通男同士で一つのベッドに寝るか?そこに疑問は持たないのか?
まあ、頭は良いがどこか抜けているところはあったけど・・
しかも手を繋いでるって聞いたぞ?
まさか、手を繋いで寝るのって普通だよね~なんて言わないよね?
「・・・・・・」
「え?なに?」
俺の視線に気づき、戸惑ったように首を傾げた
「いや・・准君なら言いそうだなって思ってさ」
「は?何が?」
「や・・こっちの話しだから・・」
話しを変えようとゲーム機のコントローラーを握った時
「ほんと・・昔からそうだよね・・」
フフっと小さく笑いながら言った
ニ「・・・え?」
その言葉に、准の顔を凝視した
今、昔から・・って言った?
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