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第5夜 角膜移植

つい先日、角膜移植手術を受けた。 誰かの角膜を譲り受け、見えるようになった両目は快適だった。 手術から一週間経ち、夜中に見知らぬ男の夢を見た。 そいつの顔が目覚めてからもはっきりと覚えていて思い出せるような甚だ現実感の高い夢だった。 そんな夢を毎週一回は見ていた。 手術から一か月経ち、見えるようになった両眼にも随分慣れた頃、俺はとうとう夢に現れた顔の持ち主と出会ってしまった。 その男は偶然家に来た家電修理の業者の男で、夢に出てきた男と顔と体型と声までがまるきりそっくりだった。 母親と男が、壊れた機械について何やら話し込んでいるのを、俺は思わずそいつに声をかけ割って入り、名刺をせがみ、それから何となくLINEなどを通じたやりとりをとるようになる。 年相応にしっかりした、明るい、頼もしそうな男だった。 出会った男の夢をまた見た。 大学らしい風景の場所で、男と一緒に歩いている夢だ。 現実の俺も、あの男とちょくちょく会いはじめていた。 夢をまた見た。 一緒にご飯を仲良さそうに食べたり、グループで旅行などをしている夢だ。 現実の俺も、あいつと一緒に居酒屋などに行って呑むような関係になっていた。 夢をまた見た。 男が顔を寄せてきてキスをしあっている夢だ。夢の自分と男は恋人同士だった。 現実の俺も、あいつから急に好意を告げられてしまった。 まるで夢と連動するように、二人の関係は進んでいく。 その日の夢は、男が自分にのしかかり、肉体関係を持っている最中の夢だった。 現実の俺も、男に誘われるがままに、男の部屋で関係を持ってしまった。 そしてある日とうとう見た夢は 視界の中、自分の顔上で男がメスのような細身のナイフをこちらの顔に向け、今にも切り裂こうとしている最中の夢だった。 男の左手は顔を固定しようとするようにこちらを掴み、口は笑いを浮かべていて、目はニヤついていた。 朝起きてそういえば今日は男と会う予定の日だと思い出したのだが、俺は会いに行くのが怖い。 角膜移植    終

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