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第13夜 ヘル教師山田先生
1話
住宅街を奥に進むと、平凡な、どこにでもある小学校校舎が見える……
ここに給料日間近になると昼は必ずカップラーメンを食べる教師がいた。
彼の名前は山田。
彼は常に、左手に、包帯を巻き付けグルグル巻きにしていた。
それ以外はどこもおかしなところなどない、よくいる成人男性そのものの外見なのだが…………。
彼が受け持つ担任クラスの児童達は、いつも、必ず何がしかのトラブルに悩まされていた…………。
そのトラブルとは、学級崩壊でも、モンスターペアレンツでも無く………………
放課後、人通りの少ない住宅街を、集団下校して帰る数人の小学生達が、ゾロゾロと縦列をなして歩いていた。
子供達は口々にたわいもない話を喋りあっていたが、ふと一名の子供が
「ねー!八尺様って知ってるか?」
妙に神妙な顔をして八尺様とはどういうものかを語り出した。
妖怪リスト 八尺様!
【主に白いワンピースと帽子を着用し、八尺(約240cm)に達するほど背が高いことなどを特徴としている。目撃者は数日のうちに殺されるとされている場合が多い。その正体は背の高すぎる女装をした男性の霊に、数々の無念の死を遂げた女装霊が集まり集合化した存在。股間の間には背丈に見合う恐ろしく長大な一物がそびえたっており、主に小学生男児に目をつけ、一回取り憑くと大人になっても直々姿を現わし貫いていく。】
「八尺やべーな」「うそだー!いるはずねーじゃんよー!そんなのー!」「嘘つきは泥棒の始まりーっ!」
子供達がケラケラ笑い、口々に囃し立て、その場は盛り上がった。
小学生の集団は一抜け、ニ抜け、そしてとうとう最後の二人になり
「あの角曲がったら向こうが俺んちだから。じゃあな」
…………一人になった。
少年はランドセルを背負いながら、夕闇を背に受けて、急に、心細い気持ちになった。
どこまでも続く塀の風景。
誰ともすれ違わない道。
「ぽ」 「ぽ」 「ぽ」
「ぽ」 「ぽ」 「ぽ」
何か声がする。
背後から。
「ぽ」 「ぽ」 「ぽ」
「ぽ」 「ぽ」 「ぽ」
振り向くと、そこには大人の男よりも遥かに頭が高い、白い帽子にワンピースを来た髪の長い、人間が立っていた。
女っぽく見えるが、多分………。
「ぽ」 「ぽ」 「ぽ」
「ぽ」 「ぽ」 「ぽ」
血走った目と目が合い、小学生はけたたましく叫んだ!!
《中略》
「遅れてすまないッ!!助けに来たぞー!!!」
山田先生が現れて、化け物の前に立ち塞がった。
裸の小学生男児は泣きながら「先生っ!山田先生!!」山田の方に視線を向けた。
「オッ!オマエハッ!何者ダッ!!」
八尺様は問いかける。
「俺か……?俺は……フフ、彼女のいない、ただの独身教師さ…………!」
山田は左手に巻かれていた包帯をシュルシュルととき解いた。
「デモンリー・ハンズ!!」
《中略》
…………こうして、山田先生の活躍により、コトは未遂で終わり、児童は保護者の元に安心して帰された。
2話
………夏休みが終わったころ。
山田はある保護者から電話を受けた。
「夏休みに田舎のおばあちゃん家に帰ってから息子の様子がおかしい」
なんでも
「畑であるものを見たと騒いでから、急におかしくなったまま元に戻らない」
というのだ。
その子の家に家庭訪問した山田が見た物とは………
目の焦点が合わず、涎を垂らしながら、腕が縛りつけられた生徒の姿という、仰天の光景だった。
「カ、カ、カ、カあさん、テをハ、はなセい……テを、ハなセい!!!!!!!」
「ダメですっ!!手を放すとあの子またっ!!!」
母親は両手で顔を覆った。
生徒の手のひらの指先はずっと奇妙にくねくねして動いていた。
「こ!これは……ッ!!くねくねッッ!!!!」
妖怪リスト くねくね!
【色は白い。人間とはかけ離れた動きで体をくねらせる。夏の水田や川原など水辺で目撃されることが多い。
取り憑かれると精神崩壊を来たし、狂ったように笑いながら手をくねくねと異常に動かして、自慰が止められなくなり、干からびるまで精と血を出し尽くして死ぬッ!
その正体は、一生童貞のまま自慰しか出来ずに生涯を終えた、無念の霊の集合体ッ!!】
「生徒から……離れろ!」
山田は左手に巻かれていた包帯をシュルシュルととき解いた。
「デモンリー・ハンズ!!」
異形の手が生徒の体を光とともに貫通する。
くねくねは生徒の体から飛びのいた。
貫通された生徒は無傷のまま、傷痕など一つもついていない。
異形の手は、妖怪だけに傷をつける。
「オッ!オマエハッ!何者ダッ!!」
「俺か……?俺は……フフ、彼女のいない、ただの独身教師さ…………!」
《中略》
こうして数々の性犯罪妖怪を未遂に終わらせ、自分の学校を守っている山田。
「俺の学校は……何でか狙われやすいからな………(男子生徒ばっかり……)」
山田は自分の勤務する校舎を見上げて誓う。
子供達の……明るい未来を……、守りたい………………!
ヘル教師山田先生 終
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