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第3話
極めて稀な2次成長前の、オメガの発情、とのことだった。
2次成長後にオメガやアルファ、ベータへと人は変かするのだが、希に、2次成長前に変化することがある、とのことだった。
流石に妊娠はまだ無理だが、アルファを求めて発情はする。
たまたま初めての発情時に、たまたまアルファと出くわしてしまった。
事故だった。
アルファはオメガのフェロモンあがらえないのだから。
でも、番にまでされてしまった。
大人達は話し合い、オメガの子供と男を婚約させた。
仕方ない。
男にはまだ正式な番が居なかったから。
男も受け入れた。
正気に戻れば、自分がしたことの罪悪感に耐えられなかったのだ。
まだ幼い中学生にもならない子供。
その子を犯し、未来を奪ったからだ。
事故だった。
だったとしても。
子供には現実を受け入れさせる必要があった。
これからは幼くても定期的に来る発情、それを何とかしてくれるのはもうこの世界に1人だけなのだ。
子供は子供のまま、婚約者の家で暮らすことになった。
泣きながら親に連れられやってきた。
親に言い含められている。
親も泣く。
男もそれを見て沈み込む。
男は恋人に別れを告げたところだった。
本当に番にするつもりだった。
いずれ、子供結婚できる年になれば。
とにかく、責任がある。
将来の夫として、そして当面は保護者として。
男は子供を引き受けたのだ。
アルファにしては30近くで未婚なことは珍しいが、責任をとれたのは良かった。
だが、自分の子供でもおかしくはない子供が婚約者だ。
泣きじゃくる子供と、家に取り残され、流石に途方にくれた。
子どもには触れないようにした。
優しい大人として振舞った。
慰めようもなかった。
その夜は泣いてる子供の隣りで座ることしか出来なかった。
泣き疲れた子供ベットに運んだ。
ため息をついては、その顔を覗き込み、髪を撫でた。
子供だ。
幼い子供でしかない。
可哀想な子供。
でも自分の番だ。
間違いなく。
首の噛み跡。
それは事実でしかなかった。
子供はその晩眠りながらも泣いていたが、次の日、学校には行くと行ったし、男が車で送るのも受け入れた。
迎えにも行き、塾にも送った。
こうなる前と変わらない生活をさせてやりたくて。
子供らしく。
子供元気で、すこしワガママで、でも素直で可愛かったから、男は子供を本当に可愛がった。
男は触れたりすることは極力避けた。
あの時子供も望んでいたとしても、それは本能で意志ではないと分かっていたから。
子供も、発情の記憶を持て余してはいたが、それに触れない男にホッとして、心を許していった。
父親のような、兄のような。
週末には家族の元へ連れて行き、男は子供を大切にした。
夜には別れた恋人を思って苦しくはなったけれど。
そして、子供に飢えて貪ったあの時のことは考えないことにした。
あれは。
思い出してはいけないこと。
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