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誰かの未来或いは過去2

《ある少年の出会い》 天使だ。オレは今日天使に会った。 学園を抜け出しカタラ狩りをしていた時のことだ。 『ギャギャギャっ』 何匹目だろうか?オレの目の前にはライオンのような見た目だが、黒一色で構成されたカタラが立ち塞がっていた。その横に割れた青い瞳孔がオレを真っ直ぐ貫いている。 『ギャヒィィ!ギャヒッ!!』 「ブッサイクな鳴き声だな......それにしても獣型とはついてねぇなオレも。こんな雑魚じゃストレス発散にもなりゃしない。テメェで何匹目だったか.....忘れたな」 僅かな油断。見下した態度。舐めきった挙動。 この時のオレはどうかしていた。 『ギャウッッ!!』 「はっ、来いよにゃんころ。遊んで.....って、は!?」 飛びかかってきたカタラに異能を始動しぶつけようとした瞬間、獣型が人型に変化した。 獣型は思考が単純なため比較的狩るのは簡単だが、人型は違う。カタラの人型は一見知能の無いような間抜けな表情をしているがずる賢い。 現に獣型に化けた人型の手が俺の目の前に迫っていた。 速い。 目で追うのがやっとだった。 クソっ、しくった..... ヴァイスの異能を始動するのに間に合わない! それでもオレは一撃受ける覚悟で手を出すが、カタラの変形した鋭い爪が俺に届く方がやはり早い。 痛みを覚悟し、いや.....死ぬ覚悟をした。 だが―― 『ぎゃぶ!?』 目の前のカタラが急に吹き飛んだ。 そしてそのまま吹っ飛んだカタラは物凄い音を立て、木にぶつかり消滅した。 .......どうやらオレの危機は去ったみたいだ。 「大丈夫?」 吹っ飛んだカタラの方向から声が聞こえて方にへと目を向ける。 驚いた。目の前にいつの間にかオレと同い年くらいの少年がいたのだ。黒い艶やかな髪に吸い込まれそうな瞳。 そして浮世離れした雰囲気。 もしかして―― 「てんし?」 自分の口から出たのは惚けたような情けない声だった。 だがそれを気にする余裕はない。 目の前の天使があまりにも綺麗で、目が逸らせなかったからだ。 「あははっ、違うよ。...怪我はなさそうだね。僕はもう行くよ。気をつけて」 呆然と去っていく後ろ姿を見つめる。 「あっ!なまえ.....」 ハッとし、名前を聞こうとしたがもう姿が見えなくなっていた。 「オレの馬鹿野郎!!なんでもっと早く引き留めなかった!?」 でもその後悔もあの一撃の美しさに一瞬で意識が戻る。 流れるような一撃だった。いや、一閃と言うべきなのか。オレには速すぎてただ光がぶれたように見えただけだったが......針の穴を通すような一閃だ。 近距離系だからザントか? それかオレと同じようにヴァイスなのか? 遠距離のサナートではないだろうが....。 「......それにしても強かったな。一回手合わせしてみてぇ」 オレが勝ったらずっと傍に居てもらおう。そうすればいつでも好きな時に闘える。 呆然と見送るなんて勿体ないことしたなぁ。 そう反省しながら森の奥へと足を進める。 「おお!!ウジャウジャ居るなぁ。ちょっと気晴らしさせてくれよ」 このイライラを発散させねぇと身体に影響が出そうだ。 「 始動(アンファング)ゾルグ!!」 シュルシュルッと音を立て風が渦巻く。森がざわめき、動物達が悲鳴をあげ逃げていく。 しかし目の前のコイツらはオレから決して逃げない。そのマネキンみたいな顔についた青い光が敵意を宿している。 いい度胸だ。 気分が高揚する。こうなると満足するまで殺さなきゃ治まらねぇ。あぁ、その敵意が心地いい! ーシュバッ、シュバッ、シュバッ 「ギャッ!?」 「ギュルァァァ!!」 風は三体のうち二体の首を切り落としそのまま細切れにした。どさりと音を立て首のない身体は崩れ落ち、そして灰になる。 「バッウゥゥ!?」 クソっ一体仕留め損なった。オレもまだまだだな。 風を刃に見立てて飛ばす。すると飛びかかってこようとしたカタラの首にクリーンヒット! 無心になってカタラを切り刻み、風が吹く度にカタラが消滅する。 「~♪♪♪」 次第に気分が良くなり鼻歌を歌う。 気持ちいいなァ。 その後もカタラ狩りへの高揚感に酔いしれながらオレは狩り続けた。 (あの天使はどう闘うんだろうな?.....一撃目は首か?あの一閃はオレでも防げるか怪しい) 心の隅であの天使と闘うことを夢みて。

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