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《side シュウの友人③》

「っ、本当に容赦ないなぁ君は......」 「ぐぅぁぁああああっ!?!?」 私は右腕を抑えて膝を着く。その抑えた右腕からは留めなく鮮血が滴っていた。痛みで視界がチカチカと点滅する。 ぐぅ、気絶しそう..... (やっぱり慣れないなぁ!....腕を斬り飛ばされるのはっ) 「ウィスプっ.....私の、右腕を.....持って、き....てくれ」 【OK.....ゆうと....だいじょうぶ?】 「ははは....心配してくれありがとう」 【くっつけるね】 「お願い」 ウィスプが回復型の異能でよかった。まぁ、だから愁の友人なんてものをやってられるのだけど....。 ウィスプが床に染み込んだ血痕と私の切断された右腕、それと右肩を覆うように水を広げるのを見ながらそう思う。 これで流れた血液も取れた右腕も全て元通りになる。 .....我が異能ながらとても頼りになるなぁ。 治った右腕をぐるりと回し、違和感がないことを確認しながら愁にへと目を向けた。 「どう?目が覚めた?私がかけたのは|岩《がん》さんから貰った発情抑制剤だよ。本当にあの人には頭が上がらないなぁ」 「.....岩東か。はぁ.....目が覚めたぜ。それにしても目に噴射すんのは違ぇだろ」 「あぁ、それは君用に作られたもので目に向けて使うんだ。ラットも抑えられて君の凶暴さも抑えれる優れ物だね。あとで岩さんに報告しなきゃ」 「岩東め....俺に恨みでもあんのかよ」 「ま、そんなことは置いといて。弥斗君を休ませないと」 「....寄越せ。俺がやる」 首をコキコキと鳴らしながら立ち上がる愁を見るが、もう大丈夫そうだ。ちゃんと瞳に理性の色がある。 「はい、丁重に扱ってね」 「わーってるよ」 「ちょっと待って!シーツ換えなきゃ.....ウィスプ手伝って」 【OK】 「テメェのはいつ見ても便利だなァ」 「君のはいつ見てもヒヤヒヤするよ」 軽口を叩きながらシーツを換えながらも、今後のことを考える。 今の弥斗君はストレスと疲労、風邪のトリプルパンチでダウンしているようにみえた。まぁ、愁のあのがっつき具合を見た後じゃ納得するしかないけど。 そう考えていたら愁から爆弾を落とされた。 「あぁそうだ。おい、弥斗の死亡届け出しとけよ」 「.......はぁ!?何言ってるの!?」 「なにって、そのまんまの意味だ。もうこいつはここから出さねぇ。騒ぎになる前に手を回して弥斗の家族に知らせろ。そうだな.....聖域から出てカタラに殺されたことにするか」 やっぱり正気に戻ってないんじゃないかと思ったが、愁の瞳は正気だった。正気で弥斗君を殺すと言ったんだ。この社会から。 「それは.....あまりにも可哀想だ」 「あ''?」 私は面白いことは大好きだが、だからといってそのためにどんなことでもやる人でなしというわけではない。こんな今にも死にそうな子供を家族に返さない、ましてや監禁するということに面白さは感じないし、可哀想と思う気持ちもある。 そりゃ、ショタに恋する友人を応援したりからかったりしたけどさ、私はあくまで普通の感性なんだよ。愁と違って。 「面白いことには手は貸すけど、こんな幼気な子供を監禁するために動くなんて私はしたくない」 「.....まぁテメェに頼まなくてもいいのは確かだな。じゃあ他の奴に頼むわ」 「愁、違うんだ。私はこの子を勝手に殺して監禁すること自体に反対なんだ」 「なんでだよ?」 「一言で言えば、倫理観的に道徳観的に問題がある」 「俺にとっちゃ問題ねぇ」 「愁....弥斗君の為だよ」 「そんなもんどうでもいい。為になるかならないかで俺を説得できると思うなよ?もう弥斗は俺のもんだ。それを手放すバカが何処にいる」 「だけどっ」 「くどい。あんまりピーチクパーチクうるせぇと殺すぞ」 鋭い目で睨まれ口を噤む。 済まない弥斗君.....私では君を逃がすことは出来ないようだ。 私は愁から目を逸らすことで従う意を見せ、静かに寝室を出る。 【ゆうと...おちこんでる?あのおとこ....ころす?】 ウィスプがフワフワと私のそばに近づき、そう聞いてきた。淡々とした感情の窺えない声。表情もないただの水の塊だが私を心配しているのを感じる。そんなウィスプに私は苦笑いを返す。 「それはやめた方がいい。愁は簡単に私達を殺すことが出来るから。間違っても私の指示なく攻撃をしてはいけないよ?私は君を失いたくないからね.....」 【.....OK】 「ははは.....さぁ、もう戻りな」 手を差し出しながら私がそう言うと水の塊は私の手の上に降り立ち、そしてパシャリと音を立て崩れた。 そのまま台所に水を流し手の平に残ったピアスの飾りを見つめる。 「ウィスプ....ありがとうね。私は私に出来ることをするよ」 ポツリと呟き飾りを耳のピアスにへと付け直した。 その間思うのは弥斗君が愁に囚われることを防げなかったことに対するやるせなさだったが、何よりも―― (.....あの時の弥斗君は凄い綺麗だったなぁ) あの淫靡な光景が頭から離れなかった。 《side end》

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