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第2話
「んー・・・」
あぁ・・・そろそろ肌寒くなってきた。
今何時だろう?
「うわ・・・」
やばいやばいやばい、あと10分で門限の6時。
すぐに全力疾走で家に向かう。
「っはぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
息も絶え絶えに門限ギリギリで家に着いた。
運動なんて滅多にしない僕には全力疾走はかなりきつかった。
ガチャッ!
息を整えていると物凄い勢いで玄関の扉が開いた。
「陽太!どこに行ってたの?1分も遅れるなんて、何考えてるのよ!
どんだけ心配したと思ってるの!ママ電話かけたよね?なんで出ないの?ママからの電話は絶対出るっていうお約束でしょ?ママのこと嫌いになったの?ねぇ、どうなのよ、返事しなさいよ?お約束も守れない子になっちゃったの?」
あぁ、うるさい・・・たかが1分なのに・・・
「走ってたから気づかなかった・・・ごめんなさい・・・」
「そう、でも走らなきゃいけないほどのことがあったのかしら?それともいつもの公園に居たのかしら?学校から帰ったらすぐに家に帰るように言っているわよね、どうして言うことが聞けないの?」
「勉強してて・・・気づいたら・・・この時間に」
「はぁ・・・今度一度でも時間に遅れたらもう家から出さないからね。
あとママの電話は絶対出なきゃダメだからね、絶対だよ、わかった陽太?」
「はい、気をつけます」
「さっきは怒ったりしてごめんね陽太。ママがどれだけ陽太のこと好きか知ってるでしょ?いつも心配で心配で堪らないのよ。ママの気持ちわかるでしょ?」
「・・・うん・・・」
「ならいいのよ、さぁ、おうちに入って、ママ陽太のためにいっ〜ぱい美味しいご飯作ったから!あぁ、でも先にお風呂入ろうか、今日はママが頭洗ってあげる」
「うん・・・ありがとう・・・ママ」
これが僕の日常だ。
毎日毎日嫌というほど母親が干渉してくる。
門限を絶対破ってはいけないのはもちろん、電話は無視してはいけない。常にラインが母から入ってくる。
外にいる時は今何処にいるか常に連絡しないと気が済まない。家にいる時は常に母の視界に居なきゃいけない。
なんだか監視されている気分になる。お風呂だって、1人で勝手に入ることは許されない。
こんな歪な関係性に反吐が出そうだ。
思えば、母の束縛が激しくなったのはいつからだろう?
多分あれは小学2年の時だ。
僕の母は美人だ。父親は至って普通の可もなく不可もないような、平凡な人だ。僕はどうやら父親には全く似なかったみたいで、母に似て容姿に恵まれ、面倒ごとは多かった。
一度小学2年の時家族とキャンプに行った。
母が僕を見失って、直ぐに警察に連絡したらしい。
結局15時間後に見つかった。
見つかったのは森の中の小さな小屋の中、服はボロボロに裂かれて、身体はアザまみれ、穴という穴に色々な液体がついていたらしい。
僕自身としては全く記憶に残ってないので何とも思わないけど、母からしたらものすごくショックだったのだろう。
それに加えて父が僕に対して全くの無関心だったのが余計拍車がかかったみたいだ。
仮に自分も親だったらそんなことがあった息子は心配だ。けど僕ももう17歳だ、いい加減にして欲しい。
年々酷くなる母の束縛に耐えるには心を無にするしかなかった。いうことを聞いてさえいれば母は優しい。
ただ母の手が2つ下の弟に伸びるのだけは阻止していた。こんな窮屈な思いをさせたくなかった。
でも弟への関心が薄い母をみて、果たしてそれが正解だったのか今となってはわからない。
弟とは今では全く会話もできない状態だ。
それもそうだろう。自分には一切干渉しない母と母の関心を一身に受けている兄貴が居たら、兄貴は物凄く嫌われるだろうなと自分でも思う。
あぁ、早く家を出て自由になりたい・・・
でも家を出ても多分母は何処までも追いかけてくる気がする・・・
何処に行ったら逃げ切れるのか・・・いや、無理だろうな・・・
やっぱり、死のうかな・・・
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