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第19話
相変わらず移動する時僕を抱き上げる。
「ねぇ・・・僕歩けるよ」
「んーん、俺が抱っこしたいから、抱っこされなきゃダメだよ」
「・・・僕そんな小さくないし」
僕は一応174cmはあるんだ。大きくはないけど、決して小さくはない。男だし、若干骨ばってるし、多分抱き心地は良くない。
「んー、まぁ、小さくはないな。でも俺がひなにくっついてたいし、伊達に鍛えてないし、重くもないから大丈夫。寧ろもうちょっと肉増やして欲しいぐらいだよ、気にすんな」
「・・・うん」
抱き上げられたままソファーに辿り着いたけど、立ったまま僕を降ろす気配がない。
「どうしたの」
「いや、うーん・・・どうひなとイチャイチャするか悩んでた」
なんだそれ・・・ぽんぽんと彼の肩を叩いて降ろして欲しいとアピール。そのまま彼をソファーに座らせて、僕は彼に向かい合った形で膝に乗り上げた。
「うん、えっちぃ座り方だね」
「イチャイチャって・・・こういうことかなって」
「うん、まぁ間違ってないね。はーーーーひないい匂いする」
「まだお風呂入ってないからいい匂いしないと思うけど」
「ううん、そんなことないよ」
ぐいっと大人しく抱き寄せられ、猫を撫でるかのように頭を優しく撫でられる。
「今日は一日中なにしてたの?」
「本読んだり・・・料理したり?」
「そっか、寂しくない?」
「寂しい?・・・うーん。スミがいるから寂しくないけど・・・朝起きて・・・横が冷たくなってるのが・・・ちょっと寂しいのかな?・・・うーん・・・わかんない」
「え?」
「朝早くお仕事行くなら、行ってらっしゃいとか言いたいから・・・起こして欲しいかな・・・」
「・・・はぁーーーーーーーーー。可愛いがすぎる・・・ん〜ごめんね、次からは声かけるよ。寂しい思いさせてごめん」
「・・・ううん」
彼は僕の首元に顔を埋めながらスンスン匂いを嗅いだかと思えばその両手はスルスルと背中をなぞりながらお尻にたどり着いた。
「んっ・・・」
僕のお尻の揉み心地を確認するかの如く、下から掬い上げるように掴まれる。
「ねぇ・・・僕のお尻そこまで揉み心地良くないと・・・思うんだけど」
「いや、素晴らしい感触・・・もうちょっと触らせて」
因みに僕は料理するに当たってバスローブからスウェットに着替えていて、尚且つあるパンツがレースのTバックしかなかったので、内心ソワソワが止まらない。
だってそんな触り方されたらスウェットの上からパンツの形すぐわかっちゃうし!・・・いや、まぁ、本人が用意したから知ってるだろうけど、なんか恥ずかしくて居た堪れない。
「ふふっ、ちゃんとパンツ履いてくれてるんだ、嬉しいなぁ」
やっぱりバレてる・・・
「・・・これしかなかったから・・・」
「嫌だった?」
「えっと・・・意外と履き心地はいい」
「プッ・・・ははははは!よかったよかった、それ意外と凝った作りだからな、履き心地良くてよかったよ」
「うん・・・こういうのが好きなの?」
「うーん・・・ひなに似合うと思ったんだよ。俺は綺麗なものが好きなんだよ。だからひなには俺好みの服着て欲しいなぁって」
「でも・・・レースのパンツは・・・女の人の方が・・・いいと思う・・・」
「あー、うーん。そこはちょっと違うかな。確かに女の人が履くことが殆どだと思うけど、綺麗なものに性別は関係ないと思うんだよね。何よりひなのこの肌に映えるんだよね」
「そっか・・・あの・・・そういえば・・・女の人も好きなの?」
「そうだなぁ、特に性別にこだわりはないかな。俺が好きか好きじゃないかで判断してる」
「なるほど」
「ひなは?好きなタイプはどんな人?」
ん?僕は首を傾げる。好きなタイプ?考えたことないな・・・
「・・・考えたことない・・・」
「ボンキュッボンのお姉さんとか?」
「・・・うーん。あんまり興味持ったことない・・・かも」
「そうか。じゃぁ、嫌いなタイプは?」
嫌い・・・はいっぱいいるかも。
「キンキン声で・・・うるさい人。臭い人。汚い人。距離感が近い人・・・かな?」
「え・・・俺もしかして嫌われてる感じ?」
「ん?なんで?」
「一応かなりスキンシップ取ってる気がするんだけど・・・近すぎる?」
「ううん・・・他の人は嫌だけど・・・」
「俺は大丈夫?」
「うん」
僕は思いっきり抱き込まれて耳元にキスの嵐が降り注いだ。
「チュッ・・・はーーーーーもう、そうやって煽る。我慢出来なくなるからやめて」
煽ったつもりはないんだけど・・・?ってか力強いなぁ、僕鍛えてもこんなに力出なさそう。
僕は彼の首元に腕を回して身を委ねた。やっぱりいい匂いするなぁ。仕事柄なのかな、香水と体臭に混じって、若干タバコの匂いがする。でもなんか大人の匂い・・・今まで感じて来た男性の匂いとは違って全然不快じゃない・・・なんとなく落ち着く匂い。なんでだろうな・・・
「っん!!!」
ハムハムと僕の耳の淵唇で摘みつつ、時々歯で甘噛みしてくる、ゾワゾワとした感覚に支配されて、彼の服にしがみついた。
「耳も可愛いね・・・軟骨は柔らかくて、噛み心地がいいね・・・」
「ふふっ・・・なにそれ・・・」
「癖になりそ」
「やだぁ」
「噛むのダメ?」
「なんか背筋がぞくぞくする感じ」
「気持ちいい?」
「気持ちいい?なんだろう、ゾクゾクって気持ちいの?」
「まぁ、いい意味でのゾクゾクは快感に繋がるね」
「なるほど。そういうのって色々奥が深いんだね」
「興味ある?」
「うん、まぁ、その・・・ある。今日夜の指南書みたいなの読んだんだけど」
「ん?指南書」
「うん。内容は大体覚えたんだけど」
「覚えたけど?」
「・・・前立腺って本当に気持ちいいの?」
「うーん。そうだね、それは開発次第かな?でも絶対気持ち良くなれるようにするから、俺に任してくれる?」
僕の顔を覗き込むようにして真っ直ぐ目を見て言ってくる。指南書に書いてあるあんなことやこんなことをこれから彼とすると思うと一気に意識してしまって顔ブワッと赤くなるのを感じた。
「うわぁー顔も耳も真っ赤。そんな美味しそうな顔しないで、興奮しちゃう」
「いいよ。色々僕に教えて」
「ふふっ、わかったよ。でももう少しこうさせて」
彼は僕を抱きしめつつ頭を撫でながらまったりとした雰囲気を楽しんでいた。
「ねぇ、ヤクザって今時何やってるの?」
「うーん、何やってるかぁ・・・難しい質問だな。色々としか言いようがないね。俺に関しては不動産関連がメインではあるけど、他にも色々お店経営してたりするよ」
「お店?」
「まぁ、いわゆる風俗店だったり、その他色々ね」
「風俗店・・・えっちなことをするところだっけ」
「まぁ、そうだね。本番NGだったり、いろんな趣味嗜好の専門店とかあるね」
「そうなんだ。通ってるの?」
「え?」
彼は目を開き驚いた。
「んー?性欲処理に?」
「・・・いや、うん、それなりには」
「なるほど、やっぱ経験豊富だとえっちって上手くなるよね」
「それは場数が増えて相手の反応をしっかり見て学ぶことができたら必然的に上手くなるんじゃないかな」
「うーん・・・そっか。風俗店で練習とかできるのかな?」
「練習?」
「いや、ほら。エッチは上手くなった方がいいと思うから練っ〜〜っ!」
言い終わる前にガッと後頭部に添えた手に力が入り、僕の唇は塞がった。あまりに突然で反応できず、ぬるっと彼の舌が入ってきて僕の口内を蹂躙していく。強引に歯をこじ開けられ、上顎を刺激されるとゾクゾクとしたなんとも言えない感覚に支配される。
「んっ〜〜!!!」
全く止まる気配のない濃厚なキスで、息継ぎがまだうまくできない僕はだんだんと苦しくなってきた。伝えようにも口が塞がってる。
僕の目尻に涙がジワっと滲んできたのを見て、やっと唇が離れた。
「もう二度とそんなこと言うな。練習も何もかも全部俺とだけだ。ひなが他の人と本番はないにしろ疑似行為でもはらわたが煮え繰り返る気分になるからやめて。壊しそうになる」
ガチで座った目でゆっくり、はっきりと低い声で言われたら怖くてカクカクとぎこちなく頷くしかなかった。
これ完全に地雷踏んだ。
もう、絶対言わないようにしよう。
「ごめん・・・その方がめんどくさくないのかなって思ったりしたから。もう言わない」
「ん。そうして。俺好みに仕込みたいから、俺以外は受け入れないで」
「・・・ん、わかった」
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