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第25話
「お食事中のところ申し訳ございません。色々とお聞きしたいことがございまして」
「そそ、陽太君の周り色々調べてたんだけど、わかんないことが多いんだよね〜なんかヒントがあれば
教えて欲しいんだけどさ〜まずお母さんのことどこまで知ってる?」
「母のことですか?」
「そそ。櫻子さん」
うーん。母のことは本当によく知らない。
「あんまり、ヒントにならないと思うんですけど・・・昔から母の親族には会ったことないです。どうやら何人かいるらしいんですが、縁を切っているのか全く会ったことないです。父とは・・・どうやって知り合ったのかも知らないです。うーん・・・あとはなんでしょう・・・異様に自分に執着している母親でしたね。基本的に家の中では完璧な監視体制が出来ていたと思います。弟には全く寧ろ放任では?って思うことあったのですが、自分は病的に束縛されてましたね」
「そうでしたか、嫌な思い出を思い出させてしまい申し訳ございません。こちらでは色々とお母様の情報が出てきたので、多分初めて知ることだらけだと思うのですが、聞くお覚悟はございますか?」
「覚悟・・・?」
「あまり気持ちのいい話じゃないかもしれないからって話〜どうする?」
「ひな、嫌なら無理しなくていいよ?」
「大丈夫です。聞きたいです」
「じゃぁね、まず君のお母さん櫻子さんは風俗嬢だったんだよ」
「風俗嬢?」
「そ!父親が経営してた工場が経営破綻して、莫大な借金を抱えたまま父親と母親が首を吊って死んだんだよね。勿論借金を櫻子さんに残したままね。彼女は当時大学生だったけど、大学も中退して、お金に困っていた時に、風俗に行き着いた。でも物凄い美人だったから会員制の高級風俗店で雇われることになったんだ。暫くしてすぐにNo.1の座に君臨したんだよね〜」
「ナンバーワンに?」
「うん、だって綺麗でしょ?陽太君のお母さん」
いつもヒステリックになっている母しか頭に思い浮かばないけど・・・よくよく考えてみれば確かに世間一般的には物凄い美人の部類に入るのかな。
「借金とか知らなかった・・・」
思わずギュッと自分の手に力が入ったのを彼がいち早く気づき後ろから優しく恋人繋ぎをしてくれた。
「それが、お店に入って2年である日突然完済して、急にお店辞めてるんです」
「そそ〜しかも辞めた時期的に多分妊娠が分かったんじゃないか?ぐらいの時期でさ〜」
「妊娠・・・それって・・・もしかして僕?」
「可能性は高いです」
「なるほど・・・?」
「なので、正直血縁上では父親は別にいるのではないかと予想しています」
「・・・まぁ、そうなるよね」
「あぁ、まぁ、あくまで可能性の話だ。あんまり悩まなくても大丈夫だよひな」
「ご不快な思いをさせて申し訳ございません。ただ陽太様から以前お母様は電子系の物には疎い気がすると言われたことから推測するに、会った当初に付けていたGPSなどの性能ははっきり言って異常なんです」
「・・・・・・」
「だから誰がひなにそのGPSをつけているのか、突き止めたいんだ。だから家族以外で親と関わりのあった人とか、心当たりがあればなんでもいい。教えてくれると有り難い」
うーん。記憶の中か。
「・・・正直、パッと思いつくことはないんだけど・・・昔から少し変な違和感はあったんだ・・・うちの家庭料理は基本和食がメインだったんだけど・・・毎年誕生日になると・・・絶対に水餃子が出てくるんだ。和食ばっかの家庭に、なんでよりによって誕生日に水餃子なのか、一回母に聞いたことがあるんだけど・・・答えては貰えなかったんだよね・・・ あとは誕生日には必要なものを買ってくれてたけど、絶対に袋に入った石を貰うの」
「石?」
「うん。大きくはなくてビー玉ぐらいの大きさなんだけど、なんか完全に球体のパワーストーンみたいなやつ」
「パワーストーンですか・・・?何ででしょう・・・?」
「・・・それも聞いてみたけど、お守りとしか教えられなくて、そのうち、うちではそういうもんなんだって納得しちゃったんだけどね」
「なるほど・・・」
「うーん、でもよくよく考えたらもしかして、その第三者というか、父親?的な人が毎年送ってくれてたのかな?」
「可能性は高いな」
「・・・あとは・・・僕が起きてる間は母は束縛が酷かった。けど、何回か僕が夜中に起きて水を飲みに行こうと台所に行くと、母の暴言を聞いてしまって・・・内容的には普段あんなに僕のこと束縛するくせに、僕のことは邪魔者だって、大人になったら出ていくから、それまでの辛抱、早く消えてほしい。みたいなことをよく言ってたんだよね。でも父親が違って、裏で色んな思惑とやり取りがあったなら納得する気がする」
「邪魔者扱いですか・・・」
「それは辛かったっすね」
僕は話終わると同時に彼は優しく抱き締めてくれた。泣いたりとかはしないけど、でもこの腕の中にいるとホッとする。ちょっと緊張してたのかな。
「とりあえず水餃子って聞くと中国人っぽい気がするな、安直だが、旭、翔、中国人客をリストアップしといてくれ」
「はい、かしこまりました。もう少し細かく探ってみます」
「なんか決定的なの出てくるといいっすね〜!」
「・・・すみません・・・ありがとうございます」
「大丈夫だ、ひな。あんま気にするな」
「ん」
「では一旦失礼します」
「失礼しました〜」
旭さんと翔さんが、調べ物の続きをするために部屋から出ていった。
「・・・ふぅ・・・」
思わずさっき聞いた内容を思い出してため息をついてしまった。
「まぁ、情報消化するのに時間いるよな、時間はあるから焦んないで」
「ん、大丈夫。心配してくれてありがと」
「大事なひなのことだ。そんな落ち込まれると心配にもなるよ」
「ふふっ、なにそれ」
少しそのままじゃれあって、ご飯もすぐに食べ終わった。
これから何するんだろう?
「お腹一杯?」
「ん、もう入んない」
彼がなぜが僕のお腹を撫で始めた。
「なんかお腹ぽっこりしてる気がするね」
「え・・・僕太った?」
「いやいや、そうじゃなくてこの薄いお腹触るとここに食べ物入ってるんだろうなーって触るとわかるよね」
「僕そんな痩せてないよ?」
「何言ってんだよ、ガリガリだよ。もっと健康的に肉をつけてほしい。今度一緒に筋トレしような」
「うん。ムッキムキになる」
「ムキムキかぁ、どんなひなでも好きな自信はあるけど、ムキムキは・・・・・・うん、ひななら大丈夫か」
なんか今彼一瞬沈黙があったよね?まぁ、確かに僕の顔でムキムキっていうのは絵面的にどうなんだとも思う。でも適度に筋肉はつけたいな。
「ん、じゃぁ、よいっしょっと。こっち案内するわ」
ソファーからそのまま抱っこされて、奥にあった扉を開けると、そこには立派なお部屋があった。
「ベット?」
「まぁ、普段あそこの家ほとんど帰ってなくてな。忙しいとそのまま事務所で寝泊まりしてたから、ここが実質俺の部屋?」
「そうなんだ」
僕はそのままベットに降ろされて、彼は上着を掛けに行った。
ポスンとベットに横になると、何となく匂いを嗅ぎたくなる。
スーーーーッ
あ、彼の匂いだ。
「なーに匂い嗅いでんの。臭かった?」
やばっ、バレた恥ずかしい。
「ううん、臭くない。いい匂い」
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